フィクションとノンフィクションを混ぜながらリア充について主張する著者の短編集
轟 和子
奪われる
君と私はずっと友達。唯一無二の、お友達。小学校からずっと一緒で、気づけば二人、制服で、折ったスカート緩めたリボン、少し蒸し暑い教室の、窓際前と、後ろの席でいつもみたいに話してる。今年も一緒に行きたいね。行きたいじゃなくて行くんでしょ。一昨年にまた新しくした、可愛い浴衣を着こなして、金魚にに射的、スーパーボール、不器用なんだ、いつも私は。宿題全部終わらせて、バイトもやって、お金を貯めて、いよいよ明日が夏祭り。待ちきれなくて顔を出す、クローゼットから浴衣の帯。
『メッセージを取り消しました』
なんだろうと思って、私は「?」を浮かべたカエルのスタンプを送信する。すぐに既読がついて、でもしばらく画面は動かないままだった。心配になった私はすぐに電話をかける。この時間なら家にいるはずだ。親御さん、門限厳しいから。無機質な発信音。とっても不穏。何かあったらどうしよう。危ない目にあってたら。でもちゃんと電話は繋がった。
「どうしたの、なんかあったの?」
「え、いや、うーん。だめだなぁ。君に隠し事は出来ないね。」
「何、何があったの。」
「昔さ、もしどっちかに彼氏が出来たらって話、したじゃん。」
「男に誘われたんだ。」
「そういうこと。」
「良かったね」
「うん。」
「うん」
「...」
(電話を切る音)
今日は楽しい夏祭り。
不器用だなぁ、なんて、誰かに語り掛けている友人の声が聞こえた。
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