第27話 ここはどこなの? どうして私がこんな所にいるの?
朝、目が覚めるとそこは見知らぬ場所だった。
一面壁が灰色で、窓が一切なかった。
あるのはベッドだけ。
もしかしてここは牢屋なのだろうか。
でも、どうして私がこんな所に?
誰が何の目的でこんな部屋に連れ込んだのだろう。
なんて事を考えていると、ドアをノックする音がした。
「はい」
そう言うと、現れたのはオーリンだった。
両手に水差しを持っていた。
彼女を見た瞬間、私は安堵した。
「オーリンさん! どこですか? ここ?」
「ここは……えっと、離れです」
「離れ? なんで私はここに住んでいるんですか?」
「えっと、あの、うまく説明できないんですけど……兄があなたが倒れているのを見つけて、この離れまで運んでくれたんです」
それを聞いて、私はホッとした。
良かった。王子は生きているみたいだ。
「彼に会わせてください。お礼を言わないと」
私がそう言うが、オーリンはなぜか複雑な顔をしていた。
「えっと、あの、それは……無理だと思います」
「どうしてですか?」
「その、あの、えっと……うまく説明できないんですけど……兄は病気にかかってしまって、万が一うつしてはいけないと思って距離を置いているんです」
病気……それは大変だ。
「いつぐらいで治ります?」
「うーん……今は何とも」
オーリンはサイドテーブルの上に置かれたコップに水を注いだ後、足早に立ち去ろうとした。
その時、私の心の中にある願望を抱いた。
「待って」
私は彼女を呼び止めると、オーリンはなぜかビクッと獣にでも襲われるかのような反応をした。
ゆっくり振り返って、「何ですか?」と不安そうな顔をして言った。
「本を持ってきてくれないですか? できればなるべく古い時代に書かれたものを」
私はなぜこんな事を言ったのかは分からない。
けど、頭の中の浮かんだ言葉が自然とオーリン方に放っていった。
彼女は「分かりました」と微笑んだ後、さっきと変わらない速度で部屋を出た。
再び静まり返る部屋。
私は長い溜め息をついた。
なんか思っていた生活と違った。
私の夢の中では、ビックリするぐらい広々としていて、ベッドも二人分は寝れるのではないかと思うくらい大きくて。
あとは……ベッドの隣にサイドテーブルがある。
その上には綺麗な花が飾られた花瓶が置かれている。
天井にはシャンデリアがぶら下がったりして私が前に住んでいたオンボロ小屋とは比べ物にならないくらい素敵で……。
あとは、欲を言えば自分専用のキッチンがあったりなんかして。
そしたら、アップルパイを作ってシナーノやオーリンに食べさせる。
焼き立ては冷めたアップルパイとは違う美味しさがあると思う。
けど、今は物寂しい部屋で独りぼっち。
うーん、何でだろう。
「やぁ」
私が色々考えていると、近くで声がした。
ベッドの上に灰色の猫が座っていた。
「あっ! あの時、とんでもない事を言って私をパニックにさせた猫ちゃん!」
「僕はとんでもない事を言った訳じゃない。君を助けるために未来を言ったんだ」
私を助ける?
でも、あんなに物騒な事を言っていたじゃない。
心の中でそう思ったが猫は読み取ったかのように話し出した。
「僕は良い方と悪い方の血が流れている。もちろん、良心が働いているから君を最悪な手未来から守るために忠告しておく。そして、任せる。
お前達人間の中にはどんなに説得しても選択を変えない頑固者がいるからね……だから、君自身に選んでもらったんだ。
まぁ、今回も最悪は避けた。けど、元には戻らない。
君の王子様の心はかなり疲弊している。それは……君のせいだとは言い切れない。
まぁ、でも、良い選択を選んで良かったよ。もう二度とこんな事はならない事を願うよ……」
灰色の猫はそう言ってドアの方に向かった。
私は彼を外に出させようとしてドアノブを開けると、ちょうどオーリンが目の前に立っていた。
「きゃっ!」
いきなり私が目の前にいて驚いたのか、尻もちをついてしまった。
私には頼んで持ってきたであろう本があちこちに散乱していた。
「ご、ごめんなさい!」
私は急いで本を拾い上げた後、オーリンに手を差し伸べた。
けど、大丈夫ですと遠慮して自分で立ち上がると「あの……もし何かあったら近くに兵士がいるので、そちらの方に呼び掛ければ対応してくれると思います」と頭を下げて行ってしまった。
なぜだろう、前よりもオーリンと私との間に深い溝ができているような……。
いや、気のせいだと自分に言い聞かせて部屋に戻ると、私は手当り次第に本を呼んだ。
だが、どれもこれも大したものがなかった。
みんな国や魔法の歴史ばかりで、私が知りたい情報は見つからなかった。
きっとこんな複雑な状況になったのは呪いのせいに決まっているからだ。
そういえば、王子が私に呪いをかけてくれる人を探し出すとか言っていたような……記憶違いかな。
そんな事を思いながらペラペラとめくってはパタンと閉じて投げ棄てるを繰り返していると、ある本のタイトルに目が止まった。
そこには『呪術について』という書かれていた。
(これよ。私が欲しかった情報は)
早速読もうと思ってページを開いたが、真っ黒だった。
次のページも、さらに次も、そのまた次も……何枚めくっても真っ黒だった。
試しに匂いを嗅いでみる。
インクとカビの香りがした。
という事は誰かが塗りつぶしたのだろうか?
でも、この本はコールト王国にある。
という事は……え? 呪いをかけたのはこの国の誰かってこと?
すぐに頭に思い浮かんだのはオーリンだった。
いやいや、そんな訳がない。
第一もし呪術者的な彼女だったとして、なぜわざわざ私にこの本を見せるような事をするんだ。
自分が犯人ですと名乗っているようなものじゃない。
それにコールト王国に住む人間に限った話ではない。
仮にパーティが開催されて他国の人達が城に
私、なんでコールト王国の図書室の場所を知っているんだろう。
前に来た事あるのかな?
いや、そんなはずはない。
今日が初めてだ。
そんな事を思っていると、「ユキ様」と見知らぬ男の人が声をかけてきた。
「はい、何でしょう?」
「見張り者です。ご
私に会いたい客? 一体誰だろう。
つづく。
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