四日目

第22話 四日目。朝。呼び出し。

 四日目。早朝。




 ぺこん――


「……ん~?」


 なにかの音に気付いたりくは目を覚した。ぼんやりと目を開けてみると、机の上でスマホの通知ランプが点滅している。


「……誰ぇ?」


 寝ぼけまなこの陸は、のろのろとベッドから這いずり出た。


 待ち受け画面を見てみると 6:32 とあって、やっぱり早い。


「んだよもう……」


 陸は怒った。せっかく寝てたのに。

 変な夢を見てた気もするけど、それはまあいいや。


 けど、よくよく確認してみると、どうやらメッセージを送ってきたのは咲久さくのようで。


「あ!」


 陸は覚醒した。

 そして、意味なんてないのに寝癖をでつけ、えりを正すと、スマホをいじり出す。


┏━━━               ━━━┓


  陸


                  なに?


  ごめん

  寝てた?


                  寝てた


                  なに?


  あのね


  お話があるの


                   話?


  うん


  とっても大切な話


                  ふーん


                で、なに?


  できれば


  直接会って話したいんだけど


  今日、会える?


                 わかった


                  何時?


  9時


                早くない?


             10時じゃダメ?


  今日は10時からバイトで

  できれば

  その前がいいの


  ごめんね

  こんな時間に呼び出したりして

  大丈夫?


                   おk


          むすひでいいんだよね?


  うん


  まだ開店前だけど

  店長にお願いして鍵は開けておくから

  入っちゃって大丈夫です


  急にこんなお願いしてごめんなさい


  でもどうしても会って話しておきたいこと

  があって


  だから


  絶対に来てください


  お願いします


                    了


                 絶対行く


┗━━━               ━━━┛


 陸はやり取りを終えると、パタン。と、スマホを元あった場所に置いた。


 そして、「ふぅ~……」と、息をゆっくりと吐くと、目を閉じてじっくりと思索する。




 ――サクに呼び出された。

 なんだろう? 大切な話って。

 大切?

 ……オレたちの間で大切なこと? ……あっ!? まさか!?

 いや。

 いやいやいや。

 落ち着け。落ち着くんだ陸。

 そんなわけないから。

 これは罠。

 そう。

 罠に決まってる。

 罠じゃなかったら悪戯いたずらだから。

 ……ふう危なかった。危うく引っかかるところだった。

 でももう大丈夫。安心だ。

 だって罠だって気付いたんだから。

 

 ……いや。

 でもおかしくね?

 なんでサクがオレをめようとしてるんだ?

 あ!? もしかして……き、嫌わ……れ……て、はいない!

 うん! 嫌われてはないから! うん! それは間違いない。間違いないから。

 でも……じゃあ、なんで?


 ……あれ?

 これってもしかして、罠じゃないんじゃね?

 罠じゃないとしたら……悪戯でもないよな?

 でもだったら、大切な話って……


 ……やっぱり、あれ。だよな……




 陸は思索を終えると、また「ふぅ~……」と、息を吐いた。そして、


「っしゃぉらぁっ! わが青春に一片の悔いもねえ!」


 すっかり舞い上がった陸は、近所迷惑も考えずに一人喜びを爆発させた。

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