俺の異世界生活ってなんなん?

うちゅまる

第1話 クソみたいな物語は当然に

瞼を開けると、薄暗い場所に俺は座っていた。

──え?あれぇ?おっかしいな。

俺は確か散歩をしていて木に登ったはいいが、降りて来れない猫がいたから助けた筈・・・・・・。


『その通りじゃ』


ふぁ!?な、なんだいきなり年寄りの声がしたぞ!!?


『いきなりじゃが、お主は異世界に行ってもらう』

「いきなり過ぎる?!」

『死に方がアホ過ぎて見てられんかったからのぅ』


と、ちょいバカにした笑いをしながら年寄りは言う。

は?なんなんだこのジジイ。

いきなり初対面で人の死をバカにしやがって。

ん?んん??あっ・・・・・・?


「ちょっとまてぇぇぇ!?!?」


俺は勢い良く椅子から立ち上がり、声を荒らげる。俺は今、確かに聞いたぞ!聞き逃さなかったぞ!!


「なんで俺を勝手に殺してんだよ!死んでねぇよ?!まだぴっちぴちの高校生ですぅ。僕は死にましぇん!!!」


と半ば煽りつつ、年寄りの声に抗おうとする俺。


『はぁ・・・・・・何を言っとるんじゃ。木から落ちて当たり所が悪くて"脱糞"しながら死んだくせに』


脱糞の所を強調しながら言うジジイ。

なんやねん・・・・・・脱糞しながら死ぬってなんやねん・・・・・・。


『しかもそれを近くを通ったJKにゲラゲラと笑われながら写メ撮られて、可哀想じゃのぅ!ぷーくすくす』

「あ"あ"あ"あ"!!!やめろやめろや!!死人をバカにすんな!心きったねぇなジジイ!つか顔出せや!その顔に糞投げつけてやんよ!ゴリラみたくな!!」


俺は意味もなく、脱糞で煽られたことに対してキレ散らかしながら叫ぶ。

しかし、声はなく沈黙という時間が流れる。

ジジイまさか──


「おい!無視すんな!!」

『おっ、すまんのぅ。魔法少女ぷ〇きゅあを録画しとったのを忘れとって、今見ようかなと』

「俺の存在はアニメより価値ないんかい?!」

『ないのぅ』

「即答やめろ!」


つかなんだよ本当によ。

死に方はどうであれ、異世界ってのが意味分かんないんですよ。

確かによく聞く話だけど、それは創作の中の話じゃないのか?

あぁ脱糞したから可哀想だと思われて、異世界でやり直すチャンスをって感じか。

──うるせぇよ!どんだけ脱糞を引きずるんだよ!


『あ〜もうOP流れそうじゃから、すまん。さっさと行かせるからのぅ』

「え、ちょ、ちょっと待ってください!つかアニメ見てる場合か?!」

『うるさいのぅ。んじゃ元気でのぅ』

「あっ、おい話を聞けハゲ!うわぁ、眩しっ!」


急に視界が眩しさで広がり、我慢出来ず目を閉じる。

何だよ・・・・・・こういうのって何かこう、特殊な武器とか魔法とか貰える展開がセオリーじゃないんかい。


誰もいなくなった空間に、乾いた年寄りの声が響く。


『あ、やっべ。儂ぃ、奴に特典渡すの忘れとったわぁ。ま、いいじゃろ。さてさて儂はアニメをっと・・・・・・って、儂ハゲとらんわ!!!』

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