Ⅳ.Super Luxury Rresort

 静まり返った寝室。

 そこに突如として目覚ましのベル音声が鳴った。寝室を一瞬にして走り抜け、その音は止んだ。

 デジタル液晶には午前2時とあり、まだ日は昇っていない。カーテンの隙間も暗いままだ。

 理那斗りなとは飛んで起き、オーブンに食パンを一つ突っ込んで温めると同時に、首をネクタイで締めた。顔拭きシートで顔をシャキッとさせ、動画配信サービスのニュース番組を点け、世界情勢の把握をする。西の方で緊張が高まっているらしい。食パンがこんがり焼き上がったと思えば、もう歯磨きが始まっている。この間わずか10分にも満たない。

 全ての身支度が整い、集合の学園へ向かう。無論2時台なので公共交通が動いているはずもない。小一時間徒歩で移動。これが結構キツいのである。


 暗い朝道を寒がりながら歩き、学園に着いた。既に数人は来ているらしかった。

「理那斗くん、おはよう!」

「おはよう!早いね」

声の主は葉蓑はみのさんだった。制服の上には更に大きめの外套がいとうを羽織っており、繊細だった手も手袋で暖かくなっている。いつもの黒髪ショートヘアも健在。

「流石に寒いよね。」

葉蓑さんはガクガクブルブルと震えている。

「これから暖かいところに行くのにね。てかだいじょぶ?」

葉蓑さん、親指を立て、

「問題ないっ!へーっくしゅん」

「おい」


 全員が集まり出発式が催された後、クラス毎に貸切バスに乗り込んだ。

 よく高速道路を走っているタイプの大型バスだった。午前4時ほど。まだ日が昇っていない中、バスは出発した。

 道中ではバスレクが催され、カラオケ大会やしりとりで盛り上がった。こりゃあ休みを取っておいて良かった。1時間ほどバスに揺られ、目的地に着いた。


「あれ?まだ……」

降りた時にこう思った。

「太陽昇って無くね?」

近くにいた葉蓑さんも同じことを思っていたようで、

「着く頃には朝日を拝めると思ってたけど……」

何も見えない。辺りはまだ暗く、朝焼けがかすかにあるくらいである。ここで、埜夢のむさんが一言、

「みんな、ホテル行くよ!」

案内されるがままに中へ入り、入所式が執り行われた。

 そのホテルは凄かった。語彙力が無くなるくらい凄かった。エントランスだけでも億は超えていそうなつくり。高い天井、大理石の床、暖色系の装飾と光源に目を奪われる。

「いつしかの記憶がぁ……」

俺は前に国家間の対談の盗み聞きの任務で、似たような豪勢なつくりの施設に行ったことがある。あの時は銃撃戦に巻き込まれて大変だったなぁ。

 部屋も広く、ホテルあるあるの奥にある謎スペース(広縁ひろえん)もついている。和室なので、就寝班6人で布団を敷くことになるが大歓迎だ。部屋には旅荷物を置くだけの用しかなかったので、惜しくも部屋を後にした。


 今度集合したのは大ラウンジ。ここも億はかかっていそう。かなり大きいカーテンが目の前に広がっている。学年全員が集まってもスペース的には全然余裕。ドリンクサービスがあったので、ありがたく蜜柑みかんジュースを飲み干した。

 時刻が午前5時53分になる頃、カーテンが自動で開いていった。

「わぁ……」

不覚にも腑抜ふぬけた声が出たが無理もない。

 とてつもなくきれいな朝日のご来光を拝めることができたからだ。燃ゆるとはよく言えたものだなぁ。東の空は鮮やかに色づいている。そして辺りの景色に彩度を与えている。オーシャンビューだったことがより一層素晴らしかった。

 周りのヤツらもざわざわしている。まぁ、こんな景色見せられたなら驚くわな。

「理那斗くん、凄いねこれ!」

葉蓑さんの目は輝いていた。突然の会話だったので面を食らい、うん、としか返せなかった。



 その後 日も昇りきった頃、ホテルのプライベートビーチで目一杯遊んだ。この季節なのに海水が程よく温かくて快適に過ごせた。白い砂浜、青い海、最高。

 お昼以降は班行動なので私服に。白浜崎しらはまさきはホテルと飲食店が多いイメージだったが、実際そうだった。老舗のリーズナブルな洋食店で昼食を済ませ、街を観光した。

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