ただの幼馴染
あすペン
第1話
暑い夏の日。入道雲が空を大きく陣取り夏らしさを加速させる。さらにはセミの鳴き声がうっとしいほど聞こえて嫌な季節が到来してしまった。
こんな夏のネギャキャンを繰り出してみるが、気持ちは全く晴れることはない。むしろ考えれば考えるほどに、いやになる。そんな日は家の自室に引きこもり、ぐうたらスマホゲームをするのが俺の日課だが、最近は一人ではなくなった。
「これ続きある?」
「そこになきゃない」
「ちっ、品ぞろえ悪いな」
そう横柄な態度を取り、別の漫画を取りベットに寝転がる。
「ああそうかい、なら帰るんだな」
そういうと、名前は唇を尖らせ。
「意地悪言うなよ」
短い黒髪をふっとふり、プリッとした唇を尖らせ寝返りを打ち漫画を読みだした。
幼馴染である、彼女が俺の部屋に入り浸るようになるまでは。
おれはこいつ普通に仲が良かったと思う。ただ親同士がなんかのアイドルにはまった時にたまたま齢が近い事もあり仲良くなってその関係で幼稚園の頃よく遊んでいたが、中学に入るころには会話と言う会話は全くしていないかった
高校で別の学校に進学してついには顔を合わせることもなくなったのだが、どうしてこうして一緒の空間にいるのかと言うとわけがあった。
彼女は理由は分からないが高校で不登校になったらしい。
そううわさで聞いた。
それなりの高校に進学した彼女だが、勉強についていけなかったのか、人間関係で何かあったのか。違う学校に通っていた俺には邪推しかできなので考えるのは少し前に辞めた。
そして、そんな彼女の母が幼馴染である俺ならなにか突破口が開けるのではと、白羽の矢が立ち今こうして一緒にいるわけだ。
正直の話、今こいつがどう思っているかなんて、俺には分からないし中学の頃まったくはしていなかったから何が好きかもわからにが、彼女は自分の足で俺の家まで来ているがそれもなぜだがかわからない。
「なあ、私もゲームしたい。対戦しようぜ」
彼女はそう言って、勝手にテレビをゲーム機を接続して起動する。
「いいけど、負けても文句言うなよ」
「ふふ、それはこっちのセリフだね。そっちこそ負けても文句しだからな」
コントローラーを二つ取出し、一つをこちらに投げ、テレビの前にあぐらをかく。俺は彼女の隣に座りキャラ選択画面までゲームのボタンを押した。
「今回も罰ゲーム付けようぜ」
「いいよ、じゃあいつもの負けたらジュース一本おごりいい?」
彼女はうなずき、キャラを選ぶ。お互い使うキャラはいつも同じで動き方も理解している。なので少しでも油断した方が負ける。
「ほっ、とう」
彼女は体を動かしながら、声をだしキャラを操作する。
反対に俺は黙々とキャラ操作し彼女のキャラのダメージを加える。
「あ、っちょ。この、ふん、とう」
などの独り言がさらいうるさくなるが俺は気にすることなくダメージを加えていき、ついに彼女のキャラを場外に飛ばすことが出来た。
「俺の勝ちだな」
そう、ニッと笑い彼女を見ると悔しそうに涙を浮かべて。
「くそー。むかつく、もう少しで勝ててたのに。くそー」
悔しそうにうなだれる。
「じゃあ、今回もごちになるわ」
そう毎回彼女から誘ってくのに、彼女は俺に勝ったことが無いのだ。
なので毎回彼女がお金を出している、まあ場所代くらいに彼女も思っているのか文句を言うことなく出してくれる。まあ、かなり悔しそうだが。
「はい、私コーラ」
そして、彼女は自分で買いに行くことはない。ただ、金を出すだけ。これも不登校時なにかあったのかもしれない。でも俺の家までは普通に来ているから謎である。始めは何でと思っていたが、まあこれも彼女のリハビリに付き合っていると思って了承している。
「じゃあ、いってくるから」
「う、たのんだ」
自販機は家を出てすぐにあるから、まだましだ。
家を出るとうだるような暑さだった、すぐに買って駆け足で帰ってきた。
「お、サンキュー」
「くそ暑かった」
名前は眠かったのか俺のベットの上で目をこすってい体を起こした。
「よし、さっきの続きだ」
「わかった」
そうして、俺たちは日が暮れるまでゲームをして過ごした。
外が完全に暗くなると、彼女は伸びをして時計を見た。
「そろそろ帰ろうかな」
「そうじゃあ途中まで送るわ」
「ん、ありがとう」
彼女はバッグを持ち、部屋を出た。
夜とはいえ外はまだまだ暑くて、じんまりと汗をかいてしまう。
「いつも、ありがとうな」
すると、彼女は柄にもない事言う。いつもはそんなこと口にはしないのに。
「急になに?」
「いやなんとなく」
彼女は空を見上げた。
「ほんとなんとなく」
「そう、別にいいよ」
彼女はそれを聞くとはっとしたようにこちらを見た。
「幼馴染だろ。いくら迷惑かけられも、いいよ、べつに」
言っていると急に照れくさくなって。少し歩くスピードを上げた。
今が夜でよかったと心から思って、でも街頭がときどき顔を照らすのでばれてしまっているのかもしれないが、ただ早歩きで歩く。
「ふふ、最近まで話もしてなったのに、幼馴染だからか」
彼女はからかうように笑る。
「悪いかよ」
「いや、そうじゃない。そうだ、私たちは幼馴染だ。だからいいんだ」
彼女は急に足を止めた。
「実は黙っておこうと思ったのだが、私母の実家に行くことになってんだよ」
「ふーん」
「反応薄いね。おばあちゃんが、田舎の空気を吸って少し休憩したらだって」
彼女はここも田舎だけどね続けた。
俺はせいぜいこの夏休み期間だけだと思っていそういったが、彼女は俺の反応を聞くと悲しそうな声を出した。
「一週間くらいか?」
「ううん」
「じゃあ、二週間くらい」
「ううん」
彼女は俺いう期間をすべて否定する。
「とりあえず二年」
俺は彼女の言葉に耳を疑った。
反芻することもなく、ただ唾をのみじんわりと汗を額に感じた。
「へぇ、そうか二年か」
そうして、やっと出た言葉は震えていたかもしれない。
「やっぱ薄いじゃん。は~あ言った意味なかった」
彼女は歩き出した。
「まあ、私たちはただの幼馴染だしね」
そういう彼女はどこか寂しそうだった。
そう、俺たちはただの幼馴染。幼稚園小学校までは普通に仲の良かった、どこにでもいるただ幼馴染。中学から疎遠になったただの。
そう思うと、俺は彼女の手を握っていた。
「なにきゅうに?」
「別に、ただの幼馴染だからいいだろ」
さっき言われたことをそのままお返ししたら、彼女はいたずらに笑って。
「ただの幼馴染はこの齢になって手なんかつながないだろ」
「いやなら離せよ」
「別にいやじゃないけど」
そう言って彼女も手を握り返してきた。
それからしばらく経った。
彼女はあの一週間後には母方の実家のある福岡に行った。
それで俺に生活は元の、彼女と疎遠に頃に戻ると思っていたがそうではなかった。
「ふ、あ、それずるだぞ」
「ずるじゃねし」
俺らは通話しながらゲームをしていた。
違いはただ隣にいるかいないかで、そう違いはなかった。むしろ今の方がずっと彼女と話す時間が増えように思える。
だいたい、お昼前頃からどちらかが眠くなるまでゲームをしたり、お互い顔は見えないが自分のしたいように過ごしている。その間も通話はつなげぱなしで。
そして、あっという間に二年は経っていた。
「おい、遅れるぞ」
「分かってる」
そう言って俺と彼女は同じ家から大学に向かうのだった。
ただの幼馴染 あすペン @Asuppen
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