転生領主の勘違い創国記 ~気がついたら戦犯ハーレム出来てたけど、これどうすんの?~
馬路まんじゟ@マンガ色々配信中検索!
第1話
【兵舎の一室にて】
「戦争も終わって平和な日々が送れると思ったのに、どうしてこうなったぁ……?」
転生から二十年目の今日、俺は『男爵貴族』になった。
すごい大出世だと思う。
俺は元々平民だ。平民がどんなに戦地で功績を上げようが、なれるのは騎士爵とか土地を持たない法衣貴族ってやつだけだろう。
なのに俺は土地持ち男爵ですわ。すごいですわ。
徴兵されてから頑張った甲斐があったよジョニー……!(※ジョニー:同じ村の出身。馬鹿でスケベで騒がしいヤツ。火炎魔砲の直射を浴びて消滅した。最後の言葉は「もぎゃ!?」)
「事故死した一介のサラリーマンだった前世からしたら、どえらい躍進だよなぁ。でも……」
素直に喜べない理由があった。それは、
「なんで俺の与えられた土地、敵国の真ん前なんだ……!?」
そう。我らが神聖帝国ヴァイスと絶賛冷戦中の、ウルス王国の目と鼻の先だった。
じゃあ俺辺境伯じゃん~~~と思うがそれは違う。
俺の土地のすぐ真後ろに、ちゃんとシュレヒト辺境伯家ってのが存在するのだ。
つまり、『敵こく 俺 シュレヒトさんち』って感じである。
うーーーーーん、これは肉壁!!!(絶望)
「シュレヒト家さん、一応寄り親になってくれてるけど、これ鉱山のカナリアだよなぁ……?」
要するに、強襲受けたら真っ先に被害食らうのが俺で、それによりシュレヒト家はノーダメージで軍備に努めれるってわけだ。
日常が
「まぁしばらく冷戦続いてるしいいかぁ……。ウルス王国もよっぽど攻めてくることないっしょ、ふははは!」
と自分に言い聞かせるように笑ってみる。
楽観視しなきゃやってらんないっつの。はぁ~。
『――し、失礼しますッ! アルヴァトロス隊長閣下!』
その時だ。扉の前から俺を呼ぶ声が響いた。
瞬間、俺のコミュ障モードが発動し、声と表情が硬くなる。
あ、ちなみに俺の名前はヴィンセント・アルヴァトロスです。
「何用だ、入れ」
『ハッ!』
恭しく入ってくる部下くん。
そんな硬くならないでもいいよ~~。
「お目通り光栄に思いますッ、偉大なる空に輝く黒翼山の星にして隊長閣下……!」
「挨拶はいい、要件を言え」
いやぁ俺みたいな青二才にそんな畏まらなくていいよマジで。
上官死にまくって流れで隊長になってから、みんなこんな感じなんだよねぇ。
そりゃ俺ってば魔術の才能すごいっぽいから戦果上げてきたけど、内心はビクビクの怖がりよ?
「ハハァッ。実は閣下の領主就任にあたり、王家より戦力補充として魔術兵の少女が回されることになりまして……」
「ほう」
そりゃありがたいってばよ!
魔術って誰も彼もが使えるわけじゃないからね。だから魔術兵は希少なのだ。
実力によっちゃ一人で一個師団並みの力量があるし、どの部隊でも引っ張りだこの存在だよ。
「それで、その少女とやらはいつ合流するのだ」
もう数日後には領地に出立予定なんですけどね~? なんで急に派遣が決まったんだろ?
「ハッ、既に廊下で待たせております。――ニーナ・シュバイン、入れ」
『失礼します』
部下の呼びかけに、気の強そうな声が帰ってきた。
ん? ニーナ・シュバイン? なんかどっかで聞いたような名前だなぁ。
そう思いつつ、開く扉に目をやると、
「っ……ニーナ・シュバイン一等魔術兵ッ、これより閣下の指揮下に加わります!」
入ってきたのは、俺を見て一瞬ビクついた、Lカップはあろうかという銀髪巨乳美少女だった。
「ほう、貴様がニーナか……」
うーーーーんッッッ凄まじい胸部装甲! それにめっちゃ可愛い顔もしている。前世なら余裕でトップアイドル狙えそうだ。
まぁ金色の瞳の瞳孔がぐるぐるでちょっと危うい感じだが、顔は本当に綺麗で……って、あああああああ!?
こいつの顔、軍法調書で見たことあるわ!
「……ニーナ・シュバイン。たしか貴様は、『ゲリラ浸透キャンプの撃滅に伴い、敵国難民を巻き込んだ罪』で裁判中だったな……?」
そう。得意の火炎術式でゲリラごと民間人を焼肉にした戦争犯罪者である。こわいよぅ。
そんな女がなんでこんなところに? あっ、もしかして冤罪だったとか!?
「ハッ! 罪状に間違いはありません! ですが全ては友軍を守るための行為だったと誇りに思ってすらいますッ!」
って冤罪ちゃうんかーい!? あと誇るなよ!!!
ひえええッ、戦犯美少女めちゃ怖いんですけど~……!
「このたび、王族様がたの介入により、超法規的措置で一時裁判を凍結。アルヴァトロス隊長閣下の下で励めということになりました!」
いやどうしてそうなったわけッ!?
王族は何を考えてますのッッッ!?
「……ちなみに、閣下には私の受け入れを拒む権利もございます。いかが、なさいますか……?」
えっ、マジで!? 断っていいの!?
それじゃあバイバイ――っていや待てよぉ?
このニーナちゃん、全然反省してないんだろ? 自分の虐殺行為を誇ってすらいるんだろ?
それを断るとなると、『お前も私を否定するのかッ! 死ねー!』って暴れ出す可能性はないか!?
あと貴族になったしょっぱなで、王族からの
こ、こーなったら仕方ない……。
「――受け入れよう。我が軍命に従う限り、貴様はこれより我が配下だ」
「っ!? ありがとうございますっっっ!」
はい、渋々俺は許可を出したのでした……。
だって怖いんだもん! 戦争犯罪者とか関わりたくねぇよ~~~!
「あぁっ、やはり閣下は帝国の星……! 世に謳われし『英雄アルヴァトロス』ならば、私の正義を信じてくれると思っておりましたっっっ!」
って信じてねーよ! お前頼むから軍紀守ってくれ~~~~~~!
◆ ◇ ◆
『納得いきません! 私が行動しなければ、我が軍にどれだけの被害が出たかわかっているのですか!?』
ニーナは絶望の淵にあった。
全てはヴァイス帝国の勝利のため、そして味方を守るために、卑劣なるゲリラを葬ったというのに。
なのに
何が条約違反だ。
誰が作ったか知らないルールを優先し、仲間たちが危険に合うのを見過ごせと? ふざけるな。
『私は何も間違っていない! 止めた犠牲と涙の数が、私の正義の証明だ!』
証言台でそう叫ぶも――有罪判決は、覆らなかった。
ああ、本当にふざけるな。
軍の仲間たちは私に“ありがとうッ、ありがとう!”と心からの感謝を送ってくれたのに、裁判席に座る連中はなんだ?
戦火の届かぬ平和な帝都で、なにゆえ英雄たる私を
ぶち殺すぞ文民が。
――そんな鬱屈とした思いを抱えながら、処罰内容が決まる日を待っていた時だった。
不意に王族が裁判に介入し、このような沙汰が下った。
“アルヴァトロス大尉の軍門に加われ。なお、拒絶された場合は死を選べ”と。
予想だにしない一声だった。
王族の狙いはわからない。だが、『英雄アルヴァトロス』の名だけは知っている。
曰く、最強。
曰く、無双。
元は徴集兵の身でありながら、絶望的な戦場の中で魔術の才に覚醒し、絶対的な戦果を以って帝国軍の道を切り拓いてきた
かくしてニーナは、そんな人物と引き合うことになり――、
『ほう、貴様がニーナか』
……栄えある噂は本当であったと、一目でわかった――!
獣の王、獅子の
そして軍套の下にあってなお強壮さのわかる肉体は、数多の戦場を駆けた証だ。
彼こそは、戦の王。軍神の遣わした現人神に違いないと、ニーナ・シュバインは一目で理解した。
ああ、だからこそ……。
こんな人に、私の正義が否定されてしまったらどうなるかと思うと、恐ろしくて堪らない。
「……ちなみに、閣下には私の受け入れを拒む権利もございます。いかが、なさいますか……?」
恐怖を胸に問いかけるニーナ。
かくして、無限に思えるような数秒後、『英雄アルヴァトロス』は言い放った。
貴様はこれより、我が配下だと――!
“あぁッ、閣下ァッ!”
受け入れられた! 受け入れられた! 受け入れられたッ!
天下の英雄が、軍神たる黄金の君が、我が正義を受け入れてくれたッ!
この瞬間の感動をニーナは永遠に忘れない。
否定されたあの日の誇りを、かの益荒男が拾い上げてくれたのだ!
「永遠についていきます閣下ッ、墓の下まで!」
「そうか……」
――こうして戦犯美少女ニーナは、目の前の男が『頼むからついてこないでくれ……!』と思っているとも知らず、忠誠度をマックスにするのだった。
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【人物紹介】
アルヴァトロスくん:金髪紫目の頑張って出世した転生者。強いけど内心ビビり。戦犯美少女が超こわい。
ニーナ・シュバルト:銀髪ぐるぐる金目の戦犯ちゃん1号。裁判員を皆殺しにしようと思ってた。敵国民は敵兵を生む畑と思ってるので殺したい。アルヴァトロスくんのことが好き。
部下さん:アルヴァトロス信者。かつて彼に命を救われ、文庫本三冊くらいの戦記を共に歩んだ。だから話すときはいつもガチガチ。アルヴァトロスくんのことが好き。ちなみに♀。
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