短編作品群

M1エイブラムス

カラオケ帰り

本当はこうやって指を動かすのにも気が進まない

しかし覚えている間に書かなければならない気がしている。


それは昨日友人とカラオケに行き帰宅しようと言う時だった

私は自転車に乗り家に向かって走行を始めたんだ。

その時は異常はなかった筈なんだ

耳には風を切る音や色んな人達の話し声、車のエンジン音が響いていた

しかしとある十字路に入ってからと言うものその音たちが聞こえなくなったんだ、さっきまで聞こえていたエンジン音も虫の囀りも

私は奇妙に思ったが特に気にする事なく進み続けた。


住宅街を抜けて車道がある方に行ったんだ、でもそこで明確な異変に気が付く、車が一つのもないのだ

ここ周辺で通行止めなんてしていない、いつもは目で追えない程の量が走っているし今日は休日だった

車が無いはずないんだ


私は何故こんな事をしたのか……

自転車を止め辺りを見渡すすると車どころか人すら居ない、辺りにある筈のラーメンチェーン店も明かりが無く元々営業していなかったように静かであった、


何とも言えない恐怖感に襲われ自転車を慌てて出して全速力で漕いだ


漕いで、漕いで、漕いだ

漕ぐのに必死だったのか気付いて居なかったがいつの間にか音が消えた十字路に戻って来てしまっていた


私はその状況が怖くて怖くてスマホを確認すると電池が無いのが電源ボタンを押しても反応はない


「クソ!クソ!」

私はその状況に頭を抱えて更に焦り出す、

不思議とさっきまであった様に感じた暑さも風も感じない

自分の声と鼓動の音しか聞こえない


焦りながらも道順通り漕ぎ住宅街を抜けようと彷徨っていると何処かから冷たい風が私の背筋に触れると同時に異様な迄の視線を後方から感じとる

その視線は少しづつこちらに近付いている様で私の背中はゾクゾクと冷たい恐怖に包まれていく。


本当にヤバイと感じ取りもうなりふり構うことなく漕ぎ始めた

漕いで漕いで漕いで

されど視線は離れるどころか一定の距離を保ちあれだけ光っていた太陽も沈み始め時間だけが過ぎて行く


この頃には既に泣きべそをかいていただろうか、

今まで体験したことの無いような事態に慣れるはずも無く不安と焦りでごちゃまぜになりながら漕いでいた


そしてとある地点を越えてから視線のスピードが上がり着々と追いつかれているような感じがする


そして遂にその視線が私の真横に来た頃耳にどこか冷たいけど暖かな吐息の様な物が掛かった

私は覚悟して目を閉じた


が次の瞬間目を開けるとそこは家の近くの川で自転車に跨がっていた

慌ててスマホを取り出し時刻を確認する


スマホには午後8時と映し出され車の通る音が耳に入ってくる

私はとてつもない疲労感と安心感に襲われながらも家へと戻りシャワーを浴びる為に洗面所へ向かった。


そしてふと鏡で自分を見てみた

手からチカラがいっきに抜け持っていたタオルが地に落ちる


耳には歯型が付いていたのだ

数秒その光景を見ていたが次第に思考を取り戻した



その後は特に異常は無く

強いて言えばまだその歯型が少し残っている位だろうか、

どちらにせよあの道を私が使うことはもう無いだろう

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