転生したら魔法の才能でモテまくりました

ツキシロ

第1話 新たな世界、驚きの才能

「ああ、また残業か…」


深夜のオフィス街を歩きながら、一人の男が溜息をついた。二十八歳、独身。平凡なサラリーマン生活を送る彼の日常は、仕事に追われる毎日だった。


「もし魔法が使えたら、仕事も一瞬で終わるのになぁ」


そんな他愛もない妄想をしながら横断歩道を渡ろうとした瞬間、突如として現れたトラックの轟音が彼の耳を貫いた。


「え?」


驚きに目を見開く間もなく、彼の意識は闇に沈んでいった。


***


「うっ……」


目を覚ますと、そこは見知らぬ部屋だった。石造りの壁、アンティークな家具、窓から差し込む柔らかな光。


「ここは……?」


混乱するカイトの脳裏に、不思議な記憶が蘇る。彼は交通事故で命を落とし、異世界に転生したのだ。しかも、十七歳の少年として。


「まさか、本当に異世界転生……?」


信じられない現実に戸惑いつつも、カイトは自分の状況を把握しようと努めた。彼がいるのは、ルミナス魔法学園の入学試験を受けるための宿舎だった。


「よし、せっかくの第二の人生。全力で楽しんでやろう」


カイトは決意を新たに、入学試験に向かった。


試験会場は、巨大な城のような建物の中にあった。中世ヨーロッパを思わせる荘厳な雰囲気に、カイトは圧倒されながらも、興奮を抑えきれなかった。


「では、魔法適性試験を始めます」


試験官の声に、カイトは緊張した面持ちで魔法杖を手に取った。


「集中して……」


カイトは目を閉じ、魔力を意識する。すると、驚くべきことが起こった。彼の周りに、まるで銀河のような光の渦が現れたのだ。

 

「こ、これは! 驚異的な魔法適性です!」


試験官たちの驚きの声に、カイトは目を開けた。自分の周りを取り巻く光の渦に、彼自身も驚愕した。


「ウィンドソア君、君の魔法適性は学園史上最高レベルです。即座に特別クラスへの編入を認めます」


カイトは呆然としながらも、喜びを噛み締めた。こうして、彼の魔法学園生活が幕を開けた。


***


特別クラスでの最初の授業。カイトは、周囲の生徒たちの好奇の目にさらされていた。


「今日は、基本的な風属性魔法を学びます」


教授の説明を聞きながら、カイトは前世の物理学の知識を思い出していた。


「風って結局は空気の流れだよな。なら、空気の密度と圧力の関係を……」


カイトは魔法杖を軽く振った。すると、教室の中に小さな竜巻が現れた。しかし、普通の竜巻とは違い、この竜巻は美しい螺旋を描きながら、ゆっくりと教室内を漂っていく。


「す、すごい! これは高度な風の制御術ですね。どうやって?」


教授の質問に、カイトは前世の知識を基に説明した。


「空気の密度と圧力の関係を考慮し、螺旋状の気流を作り出すことで、安定した竜巻を生成できます。さらに、竜巻の回転速度と上昇気流のバランスを調整することで、浮遊させることが可能になります」


教室中が驚きの声に包まれた。カイトの説明は、魔法世界でも斬新なアプローチだったのだ。


「素晴らしい! ウィンドソア君、君の発想は魔法の新たな可能性を開くかもしれません」


教授の称賛に、カイトは照れくさそうに頭を掻いた。


***


休憩時間、カイトは中庭のベンチで一息ついていた。


「あの、ウィンドソアさん?」


振り向くと、そこには赤い長髪の少女が立っていた。


「火属性魔法を専攻しているエレナ・ファイアブルームです。さっきの授業、すごかったわ!」


エレナの情熱的な口調に、カイトは少し圧倒されながらも、優しく微笑んだ。


「ありがとう、エレナさん。君の火属性魔法も素晴らしいって聞いたよ」


「えっ、私のこと知ってるの?」


「ああ、入学式の時の演示魔法が評判だったから」


エレナは嬉しそうに頬を染めた。


「ねえ、よかったら一緒に魔法の研究をしない? 私、あなたの斬新なアイデアにすごく興味があるの!」


カイトは喜んで同意した。こうして、二人の友情が芽生え始めた。


***


数週間後、カイトは魔法図書館で新たな魔法の研究に没頭していた。


「よし、これで理論は完成だ」


カイトが編み出したのは、風と火を組み合わせた新しい魔法だった。風の力で酸素を効率的に供給し、火力を増幅させる技術。これにより、少ない魔力で大きな威力を発揮できる。


「カイト、また新しい魔法を考えついたの?」


声をかけてきたのは、カイトの親友となったマックス・サンダーストームだった。


「ああ、風と火を組み合わせてね。エレナと一緒に実験してみようと思うんだ」


「いいなあ、エレナと二人きりか」


マックスがからかうように言うと、カイトは慌てて否定した。


「違うよ、純粋に魔法の研究だって!」


「はいはい。でもさ、エレナのことどう思ってるの?」


カイトは考え込んだ。確かに、エレナとは良い友人以上の親密さを感じている。しかし、前世での恋愛の失敗が頭をよぎる。


「まあ、いい友達だよ」


「そっか。でも、チャンスはあると思うぜ」


マックスの言葉に、カイトは複雑な表情を浮かべた。


***


実験当日、カイトとエレナは学園の特別実験室にやってきた。


「じゃあ、始めよう」


カイトが魔法陣を描き、エレナが火球を生成する。カイトは風の魔法で酸素を送り込み、火球を包み込む。


すると、火球は瞬く間に巨大化し、まるで太陽のような輝きを放った。


「すごい……、こんなに威力が増幅されるなんて!」


エレナの目が輝いた。しかし、次の瞬間、火球が不安定になり、爆発的に膨張し始めた。


「危ない!」


カイトは咄嗟にエレナを抱きかかえ、防御魔法を展開した。轟音とともに、実験室が明るい光に包まれる。


煙が晴れると、二人は無事だった。しかし、実験室は大惨事となっていた。


「ごめん、エレナ。計算が甘かったみたいだ」


「ううん、私も興奮しすぎて、火の制御を誤ったわ」


二人は顔を見合わせ、苦笑いを浮かべた。


「でも、すごい発見だったわね。これを改良すれば、革命的な魔法になるわ!」


エレナの目は、まるで炎のように燃えていた。カイトも、彼女の情熱に心を動かされるのを感じた。


「うん、一緒に頑張ろう」


二人は固く握手を交わした。この瞬間、カイトは感じていた。この世界で、自分の居場所を見つけられたことを。そして、大切な仲間ができたことを。

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