「虚空の記憶」

第7話 友人に相談するリナ

リナとマイクの調査は続いていたが、システムの深層に潜む不正アクセスの痕跡を追うことは容易ではなかった。リナは自分の記憶が操作されているという事実に直面し、心の中で揺れ動く感情を抑えきれないままでいた。

その日の夕方、リナはオフィスを出て、親しい友人であり同僚でもあるエリカに相談することを決意した。エリカはリナと同じく記憶ストレージシステムの技術者であり、彼女の鋭い洞察力と冷静な判断力を頼りにしていた。

リナはエリカのデスクに向かい、静かに声をかけた。「エリカ、ちょっと時間ある？」

エリカはすぐにリナの表情から深刻な問題があることを察し、うなずいた。「もちろん、リナ。どうしたの？」

二人はオフィスの隅にある会議室に移動し、リナはエリカに自分の記憶に起きた異変とマイクとの調査の進展について詳細に説明した。エリカはリナの話を黙って聞き、時折メモを取る姿勢を見せた。

「それで、どう思う？」リナが話を終えると、エリカはしばらく考え込んだ後、口を開いた。

「リナ、これはただ事じゃないわね。誰かが意図的にあなたの記憶を操作している可能性が高い。でも、私たちだけで解決できる問題ではないかもしれない。」エリカの冷静な言葉に、リナは自分の状況の深刻さを再認識した。

「そうよね。でも、どうすればいいのか分からないの。マイクと一緒に調査を進めているけど、アクセス元を特定するのは簡単じゃない。」リナは不安を隠しきれずに答えた。

エリカはリナの肩に手を置き、力強く言った。「リナ、まずは冷静になって。私も協力するわ。一緒に解決策を見つけましょう。」その言葉に、リナは少しだけ安心感を覚えた。

「ありがとう、エリカ。君の助けが本当に必要だ。」リナは感謝の意を込めて言った。

「まずは、エラーログとセキュリティログをもう一度詳しく調べ直しましょう。マイクと私で、より深く掘り下げて解析するわ。それと、他の技術者にも協力を依頼する必要があるかもしれない。」エリカは具体的な計画を立て始めた。

「分かった。それと、私も自分の記憶データをもう一度確認してみる。何か見落としているかもしれないから。」リナは自分の役割を明確にし、行動を起こすことを決意した。

「リナ、君は強い。これを乗り越えられるわ。」エリカの励ましの言葉に、リナは再び希望を見出した。

その夜、リナは自宅に戻り、自分の記憶データを再確認する作業に取りかかった。コンピュータの前に座り、スクリーンに表示される無数のデータを慎重にチェックし始めた。

リナの心にはまだ迷いが残っていたが、友人たちの支えがある限り、真実を突き止めることができると信じていた。彼女の記憶に潜む謎を解き明かすための旅は、まだ始まったばかりだった。