「虚空の記憶」

第6話 リナの記憶探索の方法

リナは深夜のオフィスに一人残り、コンピュータの画面に向かっていた。記憶ストレージシステムのログイン画面に、慣れた手つきでパスワードを入力する。画面が変わり、無数のデータが並ぶインターフェースが表示された。

「まずは、自分の記憶データを確認しよう。」リナは自分自身に言い聞かせるように呟いた。彼女はキーボードを叩き、自分のIDを入力する。瞬時に、自分の過去の記憶が時系列順に表示された。幼少期から最近の出来事まで、すべての記憶がデジタル化され、完璧に保存されている。

「おかしいな…」リナは眉をひそめた。メモを残したはずの日付の記憶が、正常に保存されているように見える。しかし、彼女はその記憶が確かに欠けていると感じていた。

「この違和感は、どこから来るんだろう。」リナはさらに深く調査を進めることを決意した。

まず、リナはシステムのエラーログを確認することにした。過去に記憶の欠損や異常が報告された際のログを洗い出し、それが自分の記憶に関係しているかを調べる。エラーログには、記憶データの破損や不正アクセスの痕跡が記録されているはずだ。

「ここに何か手がかりがあるかもしれない…」リナは、システムの深層にアクセスし、過去数か月のエラーログを抽出した。その中で、いくつかの異常なアクセスが見つかった。これらのアクセスは、通常のメンテナンスでは説明できない不審なものであり、彼女の記憶に関係するかもしれない。

「これは…誰かが故意に記憶を操作しているのか？」リナの心臓が高鳴った。彼女はさらに調査を進めるため、セキュリティログを解析し始めた。不正アクセスのタイムスタンプやアクセス元を追跡することで、記憶データに対する不審な操作の痕跡を突き止めるつもりだ。

リナは、システムのセキュリティ担当者である同僚のマイクに協力を求めることにした。マイクは優れたハッカーであり、システムの裏側に精通している。彼の助けを借りることで、不正アクセスの発信源を突き止めることができるかもしれない。

「マイク、少し話があるんだけど…」リナは翌朝、マイクのデスクに向かって声をかけた。マイクは彼女の真剣な表情を見て、すぐに状況を察した。

「何か問題が起きたのか？」マイクはリナの話を真剣に聞き始めた。

リナは、自分の記憶に起きた異変と、システムのエラーログから発見した不審なアクセスについて説明した。マイクは腕を組みながら考え込んだ後、頷いた。

「なるほど、これは確かにおかしい。ログをもう一度詳しく調べてみよう。」マイクはコンピュータに向かい、リナが見つけたログを解析し始めた。

数時間後、マイクは驚愕の表情でリナに報告した。「リナ、これはただのエラーじゃない。誰かが意図的に記憶データを操作している。それも、かなり高度な技術を使って。」

リナは息を呑んだ。「じゃあ、私の記憶は…」

「そうだ、おそらく誰かが君の記憶を改ざんしている。」マイクの言葉に、リナの不安が現実のものとなった。

「どうすればいい？」リナはマイクに問いかけた。

「まずは、誰がこれをやっているのかを突き止める必要がある。そのためには、さらに深くシステムを調査し、アクセス元を特定する必要がある。」マイクは力強く答えた。

リナは決意を新たにし、マイクと共に調査を続けることを誓った。しかし、心の奥底にはまだ迷いが残っていた。自分の記憶が操作されているという事実は、彼女の職務に対する忠誠心を揺るがすものであり、その先に待ち受ける真実が何であるのか、リナにはまだ見当がつかなかった。

「私たちで真実を突き止めるわ。」リナは心に誓った。これから始まる長い戦いに備え、彼女は全力で挑む準備を整えたが、その一方で、心の中には未だに消えない迷いがあった。その迷いを抱えたまま、リナは次の調査へと進むことを決意した。