「 」の春時雨
皐月
プロローグ
先輩が小説家になったらしい。
私がそれを知ったのは、先輩が小説家になってからすでに一年が経ったころだ。
そういえば来月、小説家として初のサイン会を開くらしい。久しぶりに会うことは少し怖い。私の顔も名前も覚えていなかったら…と思うと躊躇してしまう。でも、そんな可能性を考えるより、会いたい気持ちの方が強い。
私に気づいたら先輩はどんな顔をするのだろうか。
そんなことを考えながら高校生活を思い出そうとする。でも、鮮明には思い出せない。
ただ、あの日の記憶は昨日のことのように思い出せる。
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