死んだはず

@fkt11

第1話 自供

 はい、間違いありません。ぼくが堀井くんを殺しました。


 堀井くんのことは高校時代からずっと疎ましく思っていました。しつこくて、陰険で、とにかく嫌なヤツだったんです。そしてなぜかぼくにばかり絡んでくるんです。だから他の同級生たちは、ぼくほどには堀井くんのことを悪く思っていなかったかもしれません。


 でもぼくにとっては最悪の人間でした。事故で死ねばいいのにとか、殺してやりたいと考えたことが何度もあります。いや、本当は心の中で何度も殺したことがあります。ナイフで刺したり、階段の踊り場から突き落としたり。


 もちろんそれは寝る前に行う布団の中での妄想です。本人の前では身がすくんでしまってびくびくするばかりでした。


 だからあのときも、殺意というよりは、もういいいかげんにしてくれっていう感じで、それが一気に高まってきて、最後にはわけがわかんなくなってしまったんです。


 えっと、ホラー映画とかでよくあるじゃないですか。やっとのことでやっつけたと思って一息ついたところへ、ありえない生命力でよみがえったモンスターが襲いかかってくるっていうパターン。あれ、心臓に悪いでしょう。それになんだか腹が立ちませんか? 絶対死んでるはずなのに、なんでまた復活してくるんだよって。


 だから死ねっていうのとはちょっと違ってて、とにかくもう消えてなくなれって感じで、頭の中がわーってなってしまって、そのとき自分が何をやったのかは正直よく覚えていないんです。


 ええ、周りの人の目なんて意識する余裕はありませんでした。気がついたらあんなことになってしまっていて。


 いえ、だからって殺意がなかったっていうつもりはありません。堀井くんが本当に死んだとわかったときは、とんでもないことをしてしまったとは思いましたが、それ以上に清々したって気持ちがありましたから。


 そうです、自分がやったことの重大さよりも、もう堀井くんの顔を二度と見なくてすむということがなによりうれしかったんです。だから先に殺意があって殺したというよりは、あとからそういう気持ちが湧いてきたというのが近いです。


 はい、おっしゃるとおりです。もっと早く――新宿駅に着いたときに自首していればと、今ではそう思います。でもあのときはとにかく怖くて、ここから逃げなきゃって。それに、まさかこんなことになるとは考えもしなかったので――


 えっ、どっちのことかって?

 刑事さんこそ、どっちの話をされてたんですか?

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