僕の光


「ねぇ、あなたは幸せ?」


誰かが言った。

僕の人生は真っ暗で、希望なんてない。

幸せなわけが、ない。

いいよなぁ。この世の人間は。

誰かに愛されていて、誰かに求められていて。

僕みたいな失敗作とは違う。

よく、他人ひとは笑う。

心の底から、最高の笑みで。

羨ましい。

愛されたかった、誰でもいいから。

ひとつの愛情さえ、あれば良かった。

でも、僕は孤独で、1人で。

味方、ましては友達なんていない。

あぁ、孤独だなぁ。

死んだって多分報われない。

それなら、死んでも意味は無い。

だから、今日も僕は生きてる。

水がなくなりそうな花瓶に少しずつ、そうっと水を注ぐように。

優しく、丁寧に。

僕は死んだように毎日を過ごしていた。


――気づいたんだ。

と、出会ってから。

君は、息を忘れるほど美しかった。

微笑みは、まるで女神のようで、思わず視線が惹き付けられるような艶やかさがあった。

でも、それは所詮に過ぎなくて。

本当の君は普通の1人の少女だった。

あどけない、可愛い笑顔が僕は好きだった。

君はみんなに人気で。

僕なんかが近づいていい存在でないことはとっくに分かっていた。

僕と話したら、君までもが不幸になる。

何度も、離れようとした。消えようとした。

――でも、君が、僕の存在を認めてくれた。

だから、僕はこの世に留まることが出来た。

君の笑顔を見続けることが出来た。

だから、気づいたんだ。

僕はここにいて、いいんだって。


認めてくれて、ありがとう。

崖のふちから落ちそうだった僕を必死に受け止めてくれてありがとう。

笑ってくれて、ありがとう。

だから、青く晴れた空が広がる今日、僕は君に言う。


「好きでした。」

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