第44話ー決着


 実質的に蒼と樹のタイマンとなったこのゲームを……綾華は冷や汗を掻きながらドキドキし、陽葵は目を輝かせながら今後の展開に心を踊らせ、ニャル様はどちらが勝つのかゲームの勝敗を考えている。

 

「ドキドキするわね……」


「胸熱だよねっ!」


「さて……この勝負どうなる……」

 

 観戦者のことを目にもとめない蒼は上に重ねられている♥️の三を横にスライドさせ、伏せられている二枚目のカードを捲る。


「スペードの二か……」 


 蒼がポツリと出たカードの名前を呟いた。

 蒼のオープンカードは♥️の三と♠️の二、合計五。

 それを確認した蒼は瞬時に合計を出して、次のカードを引く為にデッキへも手を伸ばし、一枚追加する。


「クラブの四」


 樹がポツリと出たカードの名前を呟いた。

 蒼のオープンカードは♥️の三と♠️の二、そして♣️の四で合計九。


「「「「……ごくり」」」」


 もし次が十のカードであれば、合計が十九となり蒼の勝ちが決まるのだ。

 その事実に蒼以外の四人はゴクリと唾を飲み込みながら見ているが、蒼自身は何の躊躇いも無いのか颯爽と一枚追加する。


「ダイヤの六」


 綾華がポツリと出たカードの名前を呟いた。

 蒼のオープンカードは♥️の三と♠️の二、そして♣️の四と♦️の六で合計十五。

  

「「「「…………くっ」」」」


 勝負が決まらないことに蒼以外の四人は、思わず苦い表情を浮かべた。

 

 蒼が勝つために必要なカードは四、五、六の三枚の内どれか一つ。  

 しかし、それを引くこと自体が厳しいのだ。 

 そもそも十三種類の中から六以下の小さなカードが出る確率は約四十六%。

 

 ハイになっている蒼は知る由もないが、今のカウントはプラスの一。

 小さなカードの方が出ているということになる。

 実際今、四、五、六のどれか一つが出る確率は約二十七%と、三分の一の確率もないのだ。 

 これは極度の興奮でハイになっていない蒼なら、カウンティングの末にある程度知り得たことでもある。

 

 だが蒼は知らない。

 

 頭脳プレイを捨てた蒼は、ギャンブルの神が思わず吐息を荒らげながら興奮してしまう程に、後先を一切考えない……ただ、目の前のゲームをひたすらに楽しむ運任せ ギャンブルをするのだ。

 

 ならば、蒼は躊躇するだろうか?

 

 ──否である。

 

 何故なら今の蒼は、目をグルグルに回しながら涎を垂らして目先の勝負の為にカードを引く……そんな、ギャンブラーの成れの果てみたいになっているからだ。


(そう言えば蒼、さっきから何も喋って無い気が……身体をぷるぷるさせてどうしたんだろ?大丈夫かな?……まぁ、蒼なら大丈夫でしょ!) 


「うえへへへへ……つ、次のカードはぁ…………クラブの三かぁ……うぃひひひひ……」


「「「「いや誰だよ!!」」」」


 先程までは何も言葉を発していなかったからか、ワクワクしている陽葵が(大丈夫かな?)と不思議がる程度に終わっていたのだ。

 しかし、別人共とれる様な言葉を発する蒼に他の四人出ツッコミを入れると、陽葵は壊れたテレビを直すが如くやり方で蒼を目覚めさせる。


「戻って、こい!」

 

「いでっ!はっ!!俺は誰?ここは何処?」


「お前は蒼で、ここは秘密基地。そして今、ブラックジャックをやってるわよ……」


「……………………あっ!思い出した!!もう大丈夫」


 間抜け面を晒しながら記憶喪失でお馴染みのセリフを言う蒼に、呆れた顔の綾華がちゃんと説明をしてあげると、宇宙の心理を理解したかの様な顔をした蒼は四人に大丈夫だと告げた。


「まるで宇宙の心理を理解したかの様な顔をしていたけど……大丈夫なら良かったよ。早くカードを引きな?引かないとゲームに負けるよ」


「あぁ分かったよニャル様。最後の一枚、引くぜ!」


 ニャル様は蒼の表情にツッコミを入れつつ、カードを引くことを促した。

 蒼のオープンカードは♥️の三と♠️の二、♣️の四と♦️の六、そして♣️の三で合計十八。

 つまり、ここで蒼がカードを引くと本当の意味でニャル様の負けが確定するのだ。

 それを分かりながらも後腐れなく言うニャル様に蒼は微笑みつつ最後の一枚を引き、このゲームに決着を着ける。


「「「「「………………マジか」」」」」


 表向きに置かれたカードは………………


「「「「「ハートの二…………」」」」」


 蒼のオープンカードは♥️の三と♠️の二、♣️の四と♦️の六に♣️の三……そして、♥️の二で合計二十。

 つまり、この長いようで短いゲームを制した勝者は蒼ということになる。


「よっしゃああああああああああ!!!!」

  

―――


蒼の勝ち筋は♥️の2と、♠️の3しか無かった模様。

その確率なんと!9%……


♣️2❌  ♣️3❌  ♣️4 ❌ ♣️5 ❌ ♣️6

♣️7 ♣️8❌  ♣️9

♣️10❌ ♣️J ♣️Q ♣️K  ♣️A❌ 

 

♦️2❌ ♦️3❌ ♦️4 ♦️5 ♦️6❌

♦️7❌ ♦️8 ❌ ♦️9 ❌

♦️10 ♦️J ♦️Q❌ ♦️K  ♦️A❌ 

 

♥️2❌  ♥️3❌ ♥️4❌ ♥️5 ♥️6 ❌

♥️7❌ ♥️8 ♥️9

♥️10❌  ♥️J ♥️Q❌ ♥️K ❌ ♥️A❌ 


♠️2❌ ♠️3 ♠️4 ♠️5  ♠️6❌

♠️7❌ ♠️8❌ ♠️9 ❌

♠️10 ♠️J❌ ♠️Q ♠️K  ♠️A❌  

 

※すみません。ガタツキが出てしまいました……


 

【ブラックジャック】

※wiki等サイトからの引用、参照あり


〇ブラックジャックとは?

ブラックジャック:別名21トゥエンティ ワンは、ディーラー(ゲームの進行役)との駆け引きを楽しむ対戦型ゲームであり、シンプルながらも奥が深いゲーム性が人気なカードゲーム。


〇基本ルール

プレイヤーはディーラーよりもカードの合計が21点に近ければ勝利で、賭け金チップ毎に勝利した分の配当を得ることができる。

ただしプレイヤーの「カードの合計が21点」を超えると、その時点で負けて賭けたチップを全部失う。


〇カードの数え方

2……9までの数字はそのまま点数となり、10と絵札の(J:ジャック、Q:クイーン、K:キング)は10点で、A:エースは1点か11点の好きな方を選べる。


〇特別な役

最初に配られた2枚のカードがAと絵札……合計21点が完成していた場合を『ブラックジャック』といい、その時点でプレイヤーの勝ちで、配当は3 to 2の1.5倍。

但し、ディーラー側もブラックジャックだった場合は引き分けとなる。


〇簡単なゲームの流れ

①ゲームスタート。

②チップを賭ける。

③賭け終了。

④ディーラーがカードを2枚ずつ配る(ディーラーのは1枚目を表に、2枚目を裏向きに)。

⑤ディーラーがプレイヤーに対して順番に、カードを追加ヒットするか聞く。

何枚でもヒットできるが、21を超えると失格バストする。

要らなければ手を横に振って、要らないことを示すスタンド

⑥ プレイヤー全員が選択を終えた後、最後にディーラーがカードをめくり、17点以上になるまでカードを引き続けて勝負となる。但し、ディーラーが21点以上になった場合はディーラーの負けとなり、バストせずに残っているプレイヤー全員の勝利。

⑦ ディーラーよりも21点に近いプレイヤーは勝ち、賭け金と同額の配当を得ることができる(つまりは2倍になって返ってくる)。逆にディーラーよりも21点に遠いプレイヤーは負けとなり、賭け金は没収されます。同点の場合は引き分けプッシュとなり、賭け金が返ってくる。


【特殊ルール】


〇ダブリングダウン(ダブル)

▶︎ チップを元々の賭け金オリジナルベットと同額まで上乗せ(最大に2倍に)して賭けることが出来る。ただしカードは1枚しか引けない。


〇スプリッティングペアー(スプリット)

▶︎ 最初の二枚のカードが同数なら、オリジナルベットと同額の賭け金を追加することで、二手に分けて勝負することが出来まる。ただしAのスプリットのときは、追加カードは一枚のみ。スプリットをした後にもスプリットをすることができ、そのことをスプリットアフタースプリットと言う。


〇インシュアランス

▶︎ディーラーの見せ札アップカードがAの時、ディーラーのブラックジャック(初手21)に対して、オリジナルべットの最大半分まで保険をかけることが出来る。ディーラーがブラックジャックだった場合は、オリジナルべットを失って保険金の2倍の配当を得る……つまり-1+0.5×2=0のプラスマイナス0になる。また、ディーラーがブラックジャック以外だった場合は保険金を失い、オリジナルべットで続行出来る。


〇イーブンマネー

▶︎プレイヤーがブラックジャックで、ディーラーのアップカードがAだった場合、プレイヤーはディーラーの二枚目のカードを確認せずに1倍の配当を得る。ちなみに、互いがブラックジャックだった場合は配当がなく、相手がブラックジャックじゃなかった場合は配当が1.5倍になる。

 

〇サレンダー

▶︎降参すること。始めの2枚のカードが配られた時点で、賭け金の半額を放棄し、残りの半額だけを返してもらい勝負を降りることができます。


 

【カウンティング】

 

〇ランニングカウンティング(蒼がやってるやつ)

23456の低い数を➕1

789の中間を➕0

A10JQKの高い数を➖1

として出た数字を数え、累積させるカウント方法。

➖が多い程低い数が出やすくなっている為、十七になるまで引かなければならないディーラーが、21を超えないように小刻みに数字を引きしやすいので有利。


※蒼は忘れないように、重ねたチップの数でカウントを記録していた。


〇トゥルーカウンティング(今回は使わない)

カジノでよく使われるカウント方法。

基本カジノではランニングカウンティングの対策として、複数のデッキ(トランプカードのジョーカーを抜いた52枚のセットを1デッキという)を使う。

そのため、使われているカードのデッキ数をランニングカウントで割った本当のカウントをトゥルーカウントと言うのだ。

式)ランニングカウント➗デッキ数(残っているトランプカード➗52)=トゥルーカウント


※ただ、これらのカウントをしていることがバレると、カジノを出禁にされます。その位に強いです。そして、最近では機械でシャッフルするカジノもあるため、トゥルーカウントが出来ないところもあります。


○豆知識

スプリットにおいて一番有名なのが八と八のスプリット。

合計十六というのはナチュラルブラックジャック(絵札とA以外で合計二十一にすること)に出来る確率があまりに低く、その上、ディーラーが必ず引かなくてはならない十七未満である為、かなり負けやすいと言えます。

その状態を崩しつつ新たな勝ち星に繋げられるので、戦略的にスプリットはかなり大事です!!


○ベーシックストラテジー

本文中にもありますが、それを見れば負けにくくなりますよー!っていうものです。プレイヤー全員(蒼、樹、ニャル様)がこれの通りに賭けています。

H:ヒット、S:スタンド 、DD(orD):ダブルダウン

SR:サレンダー、SP(orP):スプリット


 

 

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