第11話ー【干支の謎】探索:陽葵


 四方を四人それぞれで探索することになり、皆で適当に振り分けた結果西側の本棚を担当することになった陽葵は、棚の本を荒らすように探索していた。


「なかなかこれといったの見つからないわねぇ。何故か他の本は黒いのに、一つだけ赤い本があるけど……まぁ、十中八九罠。しかも著者名ニャル様って書いてあるし尚更よねぇ……」


 陽葵が探索している本棚には赤い本が一つあるだけで、それ以外の本は黒く、これといったものは無かった。

 

 ただの恋愛小説『いつも二人で』

『恋愛大全!好きな人を振り向かせるには!?』

『プロも必見!?ゲームを上達する為の3の方法』

『クトゥルフ神話ーナイアルラトホテップー』

 その他諸々。

 

 そうだ、これといったものが無かったのだ。

 たった一つの本を除いて……。


「でもなぁ…………」


 謎のメタ過ぎる考えが邪魔をして、頭では分かっているのに赤い本へと手が伸びない。

 そのことで悩んでいると、陽葵の肩に他の人の手が触れる。


「ひゃいっ!?」


「めっちゃ驚くじゃん……(もぉ可愛いなぁ……)」


「もぉー!!考え事してる時に急に触られたらそりゃ驚くよ!(びっくりさせないでよ、バカ……)」


 付き合いたてのカップル並のイチャイチャを披露する二人だったが、当の本人達にそのつもりは微塵もなく、至っていつも通りに話を進める。


「そういえば、蒼は何しにこっちに来たわけ?」


「何しにって何だよ、何しにって……そりゃ、陽葵が悩んでたから力になりたかったんじゃないか……」


(嘘…っ!とぅき……)

 

 陽葵は蒼の真っ直ぐな好意に対して嬉しくなり、無意識的に顔の表情筋が緩んだ。

 しかし、それはもう明ら様にニヤつくものだから、幼なじみの蒼が気づかない訳がなかった。


「急にニヤついてどうした?」


「べ、別に何でもねーよ……気の所為じゃない?」


「そ、そっかぁ……?まぁ、何でも無いなら別に良いけどさ。それより、何に悩んでたんだ?」


 悩み事を聴いてくれる蒼に何故かトキメキつつ、例の赤い本の話を切り出した。


「それがさぁ……この本棚、見れば分かると思うけど黒い本しか無いんだよね」


「そう言われてみればそうだな……」


「でもさ、コレだけ赤い本で、しかも著者名ニャル様なのよ……。何かさ、怪しすぎて……頭では分かってるんだけど、何故か手が伸びないというか、なんというか……」


 陽葵は赤い本に指差し、蒼に赤い本の存在を示し終えた後に説明した。

 しかし蒼は説明を聞き終えた後「なるほど?」と疑問を返答すると、赤い本を手に取りペラペラと捲った。


「躊躇いも無く取るのかよ!?」


「しぃ…………」


「……………………………………っ!?」


 陽葵のツッコミに対して蒼は、右手で赤い本を読みながら左手の人差し指を陽葵の唇に当て、静かにしてのサインを送ったのだ。

 蒼の唐突なイケメンムーブに陽葵の意識は持っていかれかけたが、後一歩の所で踏みとどまり、よりこの体験が陽葵の脳に刻み込まれることとなった。

 陽葵が急に上がった身体の熱を体外に出していると、蒼は読み終わったのか赤い本を閉じる。


「これ、まんま『猫と鼠』だったわ」


「『猫と鼠』ってアレだよね?いつもは宿敵の猫と鼠が、時に争い、時に助け合いながら生活するヤツ」


「うん、まんまそれ。この本結構薄いなぁ……って思ってたら『猫と鼠』の絵本だった」


「『猫と鼠』がヒントになるのかな?」


「うん、これで間違い無いと思う。二人も待ってるし、これ持って行こう」


「そうだね。二人ともー!お待たせ!」


「「ニヤニヤ」」


―――


○今ある情報


・紙とペン一本

▶︎紙は謎解きの問題

▶︎4人分無いのは不自然

▶︎ペンはカレンダーに印を付ける用?


・カレンダー

▶︎謎解き用アイテム

▶︎どこにあるか分からない


・銅像

▶︎謎解き用アイテム

▶︎順番を元に戻すと良さそう

(矢印の向き的に左から右▶︎▶︎▶︎に、っぽい)

▶︎恐らく奥の方にある銅像

「馬」「虎」「龍」「犬」「猫」「牛」「鳥」「兎」「蛇」「猿」「鼬」「鼠」「羊」「猪」

▶︎動物の種類に既視感がある


・神

▶︎ニャル様とは関係なさそう

▶︎動物の順位毎に恩恵を与える存在?

▶︎謎解きに必要な情報かは分からない


・猫と鼠

▶︎赤い本

▶︎ページ数は少なく、中身は絵本

▶︎ 猫と鼠はいつも敵対し喧嘩している。しかし、時には手を取り合って仲良くすることもあるらしい。

▶︎何故『猫と鼠』がヒントになると蒼は思うのか?


【謎解き】

昔昔のこと、競走をした【14匹の動物】がいる。

その中の1匹は、【愚かな動物】。

その中の1匹は、【優しき動物】。

その中の1匹は、【狡き動物】。

勘違いした優しき動物は【神】の温情により報われた。

しかし、騙された愚かな動物には神の手は差し出されなかった。

愚かな動物は狡き動物を許さない。

怒った愚かな者は狡き者の銅像の順番を1番最後にした。

順番を弄った後、満足し愚かな者は帰った。

次の日【真っ直ぐな動物】が本当の順位に直そうとしたため、自分の動物を1番最初に置いた。

次の日順番が変わった自分の銅像を、狡き者は見つけた。

本当は1位なはずの自分が1番最後にいて、そうでない動物が1位にいることに怒り、全体的に変更させた。

次の日全体的に順番の違う銅像を優しき者が見つけた。

優しき者は何も言わずに元の順番に戻した。

それを見て遊び心の沸いた【ニャル様】が順番をバラバラにした。

順番がバラバラになってる銅像を見て全員喧嘩した。

特に愚かな動物と狡き動物の喧嘩は酷かった。

月の出る夜、狡き動物が怒り狂った愚かな動物に傷つけられた。

日の出る朝、優しき動物が狡き動物の怪我を見つけた。

優しき動物は悲しんだ。

皆に狡き動物が怪我したことを伝えると、愚かな動物にすぐ白羽の矢が飛んでいった。

愚かな動物はすぐに後悔し、認めた。

もうこんな争いは起きてはいけない。

だから仲直りした、皆全員で。

この日は皆で手を取って楽しく笑った。

1年に1回は絶対楽しくしよう、皆で誓った。

しかし仲直りしていつも楽しく過ごしていると、その日のことを忘れてしまったのだ。

思い出した者は【カレンダー】に、私達の物語の起源となったその日に印をつけて欲しい。

そして、【銅像の位置】が違う時は直してやって欲しい。

さすれば新たな道が貴方の前に現れるだろう。

1つ忠告するのならば、まずは【月日の主】を探すが吉。

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