神とゲームと青春を!

初心なグミ

第零章:日常

第1話ー日常


綾華あやかいつきは横から!俺と陽葵ひまりで前後に挟む!!漁夫ってキルを大漁ゲットだ、行くぞ!!」


「「「あいよ!!」」」


 深淵よりゲームの世界を覗く暇神ひまじんが一人いた。

 その暇神はフカフカなベッドに身体を預け、ニヤリと哂う。

 まるで、新しいをオモチャを与えられた子どもの様に。


◆◆◆

 

 ピンポーンッ!いつもと同じ時間に鳴るチャイム音で、俺は目を覚ます。

 毛布の温もりに抗いながら布団を出るとクローゼットに閉まってある制服をパパっと着て、予め準備した荷物を片手に駆け足で下に降りた。

 

「母さん父さん、おはよう」


 下には、朝ご飯を作り終えてるお母さんと、シャツに着替えて食事をしているお父さんがいる。

 両親に俺が挨拶をするとお母さんが近寄って来て、いつも昼の弁当と朝ご飯のトーストをくれるのだ。


「はいコレお弁当とトースト。トースト持っててあげるから、早くお弁当をカバンに入れちゃいなさい」

 

「うん、ありがとう」


 カバンに弁当を入れるとお母さんからトーストを受け取り、こちらをチラチラと見ていたお父さんがいつものセリフを口にした。


あお、楽しんでこいよ!」

 

「うん、楽しんでくる!行ってきまーす!!」

 

「陽葵ちゃんを困らせるんじゃないわよー!」

 

「はーい!」


 蒼は手を振りながらお母さんに返事をするとそのまま踏みつけるように靴を履き、勢いよく玄関のドアを開けては待ってくれている大親友に、謝罪と挨拶をする。


「陽葵、遅くなってごめん!おはよー!」

 

「おはよう、蒼。まったく……高校生になっても寝坊するんだからなぁ……あと、急ぐのは良いけどさ、ちゃんと靴履いた方が良いよ?それ」


 陽葵は高校生になっても寝坊する蒼に呆れながら、人差し指を蒼の靴の方に指して指摘をした。

 蒼はその指摘を受けて下を見ると、確かに靴がスリッパの様に踏みつけられてあったので、蒼は直し始める。


「あぁ……待たせると悪いと思って急いで来たから、靴踏んでたわ……ちょっと待った……」


 蒼は足を後ろの方に上げると、トーストを持ってない右手で潰れてる踵の部分を片方ずつ直した。

 靴を直し終えるとトントンとつま先を叩き、にこりと微笑む。


「よし、行こうぜ」


「うん」


 様々な色や形の家が並ぶ街並み、塀の上に丸まって欠伸をする子猫、小学生の楽しそうな笑い声、海のように澄んだ青い空、朝の涼しい風に揺らされた木々のざわめき、キツくも緩くも無い丁度いい具合の坂道。

 これらの普遍的な景色を横目に、取り留めのない会話をしながら登校するのが蒼と陽葵にとっての日常だ。


「んーんんえばさ、陽葵」


「ふふっ。トーストを食べながら喋るなー!」


 トーストを食べながら喋ったため何を言ってるのか分からない蒼に、陽葵はくすりと笑ってツッコミを入れた。

 いつもは身長も高くて言葉遣いも男の子っぽさがちょっとある陽葵だけど、太陽に照らされてる長い黒の髪は艶やかで、蒼に微笑む姿は見惚れる程に可愛くて愛おしい……そんな陽葵に、蒼は心を奪われていた。


「うん?どーしたん?」


「別に、何でもねーよ……そんなことより、今日発売される新作ゲームあるじゃん?謎解きの奴」


「あー、あるね。今日の放課後、綾華たちと買いに行くゲームでしょ?」


「そう、それ。VR初の推理ゲー。難易度も色々あるらしいし楽しみだよな」


「ホントに楽しみだよねぇ!でもさ、蒼……一番謎を解くのは、あたし、だからね?」


「ほーん、言うじゃん……その挑戦、受けて立ってやろうじゃないの」


 二人で今日やるゲームについて盛り上がっていると、あっという間に学校に着いていた。

 蒼が寝坊をしたと言ってもそれは待ち合わせの約束の時間であって、待ち合わせの時間自体が早いため二人が学校に着く頃は、登校している生徒をチラホラとしか見かけない。

 そんな時間から朝練に精を出してる野球部やサッカー部を後目に、蒼たちは昇降口に入り外靴から上靴へと履き替える。


「陽葵、もう二人はいると思う?」


「綾華たち結構早いからねぇ……蒼が待ち合わせの時間に寝坊したからいるんじゃね?」


 陽葵のストレート正論パンチに蒼は反論できず、唐突に食らったダメージに狼狽えながらも素直に謝る。


「うぐっ…!すみましぇん……」


「良いって良いって!蒼はあたしが居なきゃ駄目なんだからさっ!あーはっはっはっ!!」


 陽葵が居なきゃ起きれない。

 陽葵が居なきゃ楽しくない。

 陽葵が居ない生活が思い浮かばない。

 

「確かに……」


「……っ!?冗談のつもりだったのに……バカッ」


 素直な俺の感想に顔を赤らめて「……バカッ」と恥ずかしがりながら呟く陽葵は、蒼が、なんて言うか……俺のこと好きなんじゃね?もしかして相思相愛なんじゃね?!って誤解させるレベルの破壊力があった。

 

「……行こっか」


「……うん」


 少し気まずい空気になりながらも、ゆったりとした歩幅で教室へと往く。

 二人が教室に着くと、ガラガラ……と扉を開けて敷居を跨ぎ、クラスメイトに挨拶をする。


「「おはよーっ!」」


 教室の中には既に五人おり、近くに来て挨拶してくれる人、座ったままこっちを見て挨拶を返してくれる人、本を読みながら手だけ振ってくれる人、反応はそれぞれだ。


「蒼、陽葵。おはよう」


「二人とも、おはよう。元気そうね」


「そりゃ元気よ!そーゆー樹と綾華も元気そーだな。昨日あんだけ徹夜したのに」


「ホントだよ!蒼が「十連勝するまでやめれねー!」とか言って、僕たちを付き合わせたんじゃないか!!僕途中で何回も寝落ちしそうになったよ!!」


 二人の近くに来て蒼と陽葵に挨拶をしたのが男と女の計二人……樹と綾華だ。

 四人は昨日の夜……というか今日の朝近くまでゲームをしており、それに付き合わされた樹は小さな頬っぺを膨らませてムッとした。

 そんな樹に蒼は、ひまわりの種を頬張るハムスターみたいだなと思いつつ、いくらハムスターみたいでも付き合わせたのは蒼で、他の三人は付き合ってくれた側なのだ。

 それならば付き合わせた側は、付き合ってくれた人に感謝の気持ちを示すのが筋というもの。


「ごめんて……でもお前らのおかげで、最高ランクでの十連勝っていう爪痕を残せたよ。サンキューな!」


「むぅ……その言い方ズルい」


(むぅ……って……樹可愛えぇー……メガネの奥に隠されてる、クリクリお目目も可愛えぇー……)


「あたしは別に気にしてないよ、通 常 運 転 !エナドリもグビグビしたからねっ!!」


「陽葵……寝る前にカフェインを取るのは、脳に悪影響を及ぼすって何度も言ってるじゃない……」


「綾華は心配性だなぁ……蒼だってキメてるんだから大丈夫だよ!それに、あたしの場合は早めに飲んでるから!」


「そうだそうだ!綾華は心配性だ!!」


「私はね?蒼は脳が壊れようがどーだって良いけど、陽葵にはそうなって欲しくないから言ってるのよ?」


「綾華……とぅき」


「どー……なっても、良い……?グハッ!!」


 本気になって心配してくれてる綾華にときめき、抱きつきながら微笑んでいる陽葵。

 どーなっても良いと大親友に毒を吐かれ、床に崩れ込みながら落ち込んでいる蒼。

 その落差の凄い悲しい構図に思うところがあるのか、樹は何も言わず蒼の肩に手をポンッと載せ、蒼に対する同情を示してくれた。

 そんな樹にボロボロだったハートを救われた蒼は樹の手を握り、うっとりとした表情で告白する。


「樹……とぅき」


「うわキモ!?」


 蒼は自分の砕かれたガラスの様にボロボロなハートを癒してくれた本人にドン引きされながら罵倒され、修復しかけていたガラスのように繊細なハートはその時、粉々に砕けて死んだ……


◆◆◆

 

―BADEND―


作者「まだ終わらせない……」

BADEND「なにっ!?」

作者「純愛過激派ハピエン厨を舐めるなよ!!」

BADEND「うわあああああああああ!!!!」

作者「………………なんだこれ?」

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