第10話 パーティー

 私は殿下の婚約者ではくなかったけれど、周りの扱いにはあまり変化はない。

 これまで通り、侍女やメイドがつき、化粧料もこれまで通り支給されている。

 なんだか申し訳ないが、お父様に聞くと、全て陛下の決定なのだから素直に受け入れるようにと言われた。

 そんなある日、陛下主催のパーティーが催されることになった。

 貴族たちのホームパーティーならいざ知らず、普段この時期に国王が主催するパーティーは行われない。例年までは確かそうだったはず。


「陛下が突然、パーティーなんてどういう風の吹き回しか」

「それも普段よりもずっと贅をかけよとのご命令らしい」


 廷臣たちも何事かと不安がっている。何か大切なことを発表する、そのためのパーティーなのではないか。

 陛下の姿を見かけると、私は胸が締め付けられるような気分になり、そんな自分に戸惑わずにはいられなかった。

 最近色々とおかしい。

 本を読んでいても勉強をしていてもお茶を飲んでいても、ふとした拍子に陛下のことを考えたり、王都散策のことを思い出しては、不思議な高揚感のようなものを感じたり、心臓がドキドキしてしまう。

 そうなると必ず、陛下に一目会いたくなった。

 もちろん執務室に花を飾るのは今もやっているのだからそういう時に話せばいいんだけど、会いたいと散々思ったくせに、いざ本人を前にするとどうしていいか分からなくなって、何も言えなかったり。


(でもこのタイミングでパーティーが開かれるのはちょうどいいわ)


 王都散策の時に陛下が仕立ててくださった、青と銀色を混ぜた涼やかな生地に、真珠をあぶしたドレスを着る絶好の機会。


(陛下が褒めてくださるといいんだけど)


 というわけで、侍女たちと一緒にパーティーが開かれる鏡の間へ向かう。

 気持ちが逸ったせいか、開始時刻よりもだいぶ早めに来てしまった。

 会場に入ると、周囲の視線が集まる。

 どう思われているのだろう。

 侍女やメイドたちは婚約破棄にも動じた様子はないけれど、噂好きの貴族たちが後期の視線を絶えず注いでくる。


(……気にしたら駄目よ。むしろ正々堂々とした姿を見せればいい。なにもやましいことをしたから婚約破棄をしたわけではないんだからっ)


 背筋を伸ばし、胸を張って堂々と歩く。

 と、私の肩に手が触れる。


「陛下!?」

「……じゃなくて、ごめんね」

「マルギッタ!?」


 鮮やかな新緑色のドレス姿の親友だ。その顔には底意地の悪い笑顔を浮かべる。

 私は侍女やメイドを下がらせ、二人きりになる。


「そのドレス、初めて見るわね。素敵じゃない」

「陛下が仕立てて下さったの」

「なるほど。それで一刻も早く陛下に見せたい気持ちが大きくなりすぎちゃって、逸っちゃったのね」

「も、もう。意地悪な言い方をしないでよ」

「よく似合うわ。あなたにぴったり」

「……本当?」


 マルギッタがニヤッと笑う。


「な、なに」

「これまでは陛下のプロポーズで散々悩んでいたくせに、今はもう悩んでないみたいだなって。何があったの?」


 さすがは親友、鋭い。

 でも自分でもよく分からない感情なのをうまく説明できる自信がないため、笑って誤魔化すしかなかった。

 マルギッタはそれほど深く聞いてはこなかった。


「なんだかんだ陛下とはうまくやれてるみたいで安心したわ。王太子殿下との縁も切れたし、最高じゃない?」

「いくら二人きりだからって殿下の悪口は……」

「いいでしょ、ここだけの話。それとも殿下に告げ口する?」

「し、しないわよ。そんなこと」

「じゃあ、いいじゃない。あなたたちのことを間近で見てきた人間の一人としては安心してるの。殿下、ずーっとあなたのことを邪険にしてたでしょ。私、正直、一発ぶん殴ってやろうって思ってたんだから」

「そ、そうだったの」


 たしかにマルギッタは殿下のことをあまり好きじゃないのは伝わってきていたけど。


「そりゃそうでしょ。ミレイユは一生懸命、親交を結ぼうとしたり、喜んでもらおうとプレゼント渡したりしてるのに、当の殿下は『いらない』『つまらない』『余計なことをするな』でしょ。頭の中でどれだけ血ダルマにしてやったか分からないんだから」

「そうだったんだ……。心配かけちゃってたんだね」

「だから、今日は思いっきり陛下とイチャイチャしたら? 私が許す!」

「し、しないったらっ」

「ふふ……って、あの女、よく来られるわね」


 マルギッタがうなるような声を出す。

 彼女の目線を追いかけた先にいる人物に小さく息を呑んだ。

 パメラ・オルネキ嬢。

 垢と黒に胸元のざっくり開いたセクシーなドレスだ。


「殿下ぁ」

「パメラ」


 甘ったるい声で駆け寄る先は、殿下。

 周りの咎めるような視線などものともせず、二人は親しげに話している。


「あれがパメラ嬢ですか。よく顔を出せたものだわ」

「……滅多なことを言うな。彼女が次の王太子妃になるかもしれないんだぞ」


 そばにいたカップルの囁き声が聞こえる。

 たしかに私と正式な婚約破棄が成立した以上、殿下の次の伴侶を速やかに決める必要がある。誰の目にも、パメラ嬢が次のお相手だということは明らかだ。


(殿下たら、パメラ嬢と話してばかり)


 陛下主催である以上、殿下も無関係ではない。

 以前なら私が来客たちに挨拶をしていたが、今はそれもない。

 殿下とパメラ嬢は周囲のことなどお構いなしに完全に二人だけの世界に浸っている。

 側近が諫めようとしているが、邪険に振り払われるのが遠目にも分かる。

 殿下はご自分のおかれた立場というのを自覚されているのだろうか。


(とはいえ、今はもう無関係の私が余計な口を挟むのも間違っているし)


「見るのはやめなさい。目の毒だから」


 マルギッタは私の手を引く。


「陛下がいらっしゃるまで風に当たっていたほうがいいわ。飲み物と軽食を持っていくから。ね?」

「ありがとう」


 親友の言葉に甘えさせてもらうことにして、私はバルコニーに出た。

 良く晴れた晩で、砂金をまいたような無数の星々が薄墨を引いたような夜空で瞬いている。


(陛下、早くいらっしゃらないかしら……って、また陛下のことばかり)


 その時、バルコニーの戸が開く音で振り返る。


「これは元、婚約者様」

「……パメラ嬢」

「こんばんは。素敵なドレスですわね」


 まるで値踏みするような視線を向けられる。


「ありがとうございます。パメラ様も」


 私は言葉少なに答えた。


「あなたにご挨拶を申し上げたいと考えていたのですけれど、殿下がなかなか離してくださらなくって」

「そうですか」


 私は話す気はありませんと素っ気なく応じたつもりだったけれど、パメラ嬢は知ってか知らずか、お構いなしに肩を並べてくる。


「まだ何か? 挨拶は受けましたから、早く殿下の元へ戻られたほうがいいのでは? 殿下が寂しがりますよ」


 私は心の中でさっさといなくなって欲しいと祈る。

 誰かにこんな気持ちを抱いたのは初めてだ。

 いけないと思いながらも、パメラ嬢のどこか甘えたような舌っ足らずな話し方や媚びるような眼差しも何もかもが、不快だった。


「そんな怖い顔でにらまないでください!」


 パメラ嬢が大きな声を上げた。


「な、何を……」

「いや、やめて!」


 突然わめき散らし始めたパメラ嬢はいきなり私の右手を掴むと、そこについていたリングに頬を押しつけて来た。


「やめてください!」


 手を引いたと同時に、彼女の頬が薄く切れる。

 パメラ嬢が、「いやあ!」とその場に崩れ落ちた。


(な、何? 何なの……?)


 私は手を引っ込め、距離を取る。

 パメラの叫び声に気付いた殿下がバルコニーに飛び込んでくる。


「パメラ、どうしたんだ! あ、血が……」

「あ、あ、あ……」


 顔を青ざめたパメラが、震える手で私を指さす。

 殿下が私に気づき、目をつり上げた。


「ミレイユ、お前!」

「私はただご挨拶をしただけなのに突然、パメラ様が『泥棒猫』と金切り声をあげられて、襲いかかってこられたんです……!」


 この子は一体何を言っているの?


「違います。私はそんなことはしていません。殿下、信じて下さい……っ」

「衛兵! この者を捕らえよ!」


 呼びつけられた衛兵は命令に戸惑い、ためらう。

 その姿に殿下は声を荒げた。


「何をしている! 私の言うことが聞けないのかっ!」


 衛兵が申し訳なさそうな顔をして、私を左右から挟むようにして自由を奪う。


「まさか嫉妬に狂いパメラに手を出すとは。心に悪魔でも巣くったか!」

「私は本当に何もしていません! すべてパメラ様の自作自演で……」


 殿下と婚約破棄したことへの未練など何もない。

 しかし殿下は信じてはくれない。

 そこへ騒ぎを聞きつけたマルギッタが駆けつけてくれる。


「殿下、何かの間違いです。ミレイユが手を出すなんてありえません。この子は人に手をあげるような子ではありません。殿下だって分かっておられるでしょう!」


 パメラ嬢は殿下の胸に顔を埋め、「怖いんです、怖いんです……」と譫言のように呟く。

 殿下はそんなパメラ嬢を優しく抱きしめる。


「早く地下牢へ連れて行け!」

「殿下!」


 私はバルコニーから引きずり出される。


「――すぐに手を離せ」


 その重厚感ある声に、場の雰囲気が変わった。


「聞こえなかったか、手を離せ」


 衛兵は、すぐに私から離れた。


「へ、陛下……」


 私は必死に平静を取り繕おうするが、どうしても声が震えてしまう。

 こんな姿を見られてしまうなんて、恥ずかしい。


「父上、止めないでください。ミレイユが、パメラに襲いかかったのです! 許すわけにはいきませんっ!」

「証拠はあるのか」

「ありますっ。ご覧下さい。パメラの頬が傷ついています。そしてミレイユの右手の指輪に血がついております。これが何よりの証拠ですっ」


 パメラは潤んだ眼差しを陛下に向ける。


「へ、陛下……私が悪いのです……。私が婚約破棄で傷心でいらっしゃるミレイユ様へ不用意に声をかけてしまって……」

「お前は悪くない。お前はミレイユとの仲を修復しようとしたのだろう」


 殿下が猫なで声を出す。


「――詳しく話を。何があったんだ」


 陛下は硬い表情のまま聞く。

 証拠があるから、陛下も疑えないのだろうか。


(嫌。陛下に嫌われたくない!)


 しかし傷跡という証拠がある以上、陛下もまた殿下と同じようにパメラの嘘を信じてしまうかもしれない。

 陛下の目をまともに見られず、私を身を縮こまらせることしかできない。


「はい、バルコニーにいらっしゃるミレイユ様に声をかけさせていただきました。そうしたらいきなり平手で叩かれて……それからは執拗に……ううう……」


 パメラはこれ以上はまともに話せないと言うかのように、口を噤んだ。


「叩かれたと言ったな。その傷はその時にできたものか」

「左様でございます」

「なぜ、右手についた指輪で右頬に傷ができている?」

「そ、それは……揉み合いになった時に……」

「揉み合いになったにもかかわらず、その傷だけが出来たのか。他に細かな傷があってもおかしくないというのに」


 パメラ嬢の目が分かりやすく泳ぐ。


「わ、分かりません。私も突然のことでよく覚えていないのです」


 陛下は私の右手を優しく握る。


「なぜ、手の平ではなく、手の甲に、お前の化粧がついている? 揉み合いになったと言うのなら、ミレイユの両手に、お前のその無様な厚化粧がついていてもおかしくないというのに。化粧で汚れているのは右手の甲だけだ」


 陛下が刺すような視線を向けると、パメラの手を乱暴に掴む。


「へ、陛下……っ」


 みるみるパメラの顔から血の気が失せていく。

 殿下もまた言葉を失っている。


「どうした。そのよく回る口で、俺を納得させてみろ」

「……あ、あ、あ」


 パメラ嬢は口をパクパクとさせるが、声はでない。

 陛下はパメラを突き放すと、ハンカチでよく手を拭う。


「衛兵、この女を牢へ」

「陛下! これは何かの間違いで……」

「お前も牢へ入りたいのか」


 冷め切った眼差しと声に、殿下はびくっと震えた。まるで捕食者を前にした小動物のように、殿下が震える。


「いやいやいやあ! 殿下ぁ! 殿下ぁぁっ!」


 パメラが騒ぎ立てるも、殿下は気まずげに目を背けるだけだった。


「陛下、ありがとうござ……きゃっ」


 陛下は無言で私を抱き上げると、鏡の間を出ていき、傍にあった休憩室へ入っていく。

 私を寝椅子へ横たわらせると、陛下はその場に跪き、私を抱き寄せた。


「遅くなってすまない」

「へ、陛下……」


 涙なんて見せるべきではないはずなのに、ぽろぽろとこぼれてしまう。

 陛下のとても広い背中に腕を回し、恥ずかしいと思いながら、優しく包み込むように抱きしめてくれる陛下の厚い胸の中で私はくぐもった声を漏らしながら嗚咽した。

 どれくらいそうしていただろう。

 涙もとまる。しかし今の私はひどい顔だろう。

 陛下にだけはひどい顔を見られたくなくて私は、そのまま強く強く陛下を抱きしめる。


「……落ち着いたか?」

「は、はい」


 鼻をぐぢぐぢさせ、呟く。


「せっかくの陛下主催のパーティーにもかかわらず、このようなことになり、申し訳ございません」

「お前に落ち度などなにもないのに、謝るな」

「……はい。あの陛下は会場へお戻りください。皆様、陛下のお戻りを待っていらっしゃるはずですので」

「必要ない」

「いけません」

「お前のために開いたパーティーだ。お前がいないのに戻っても、意味がないだろう」


 予想外すぎる言葉に、耳を疑ってしまう。


「わ、私のため……?」

「せっかくドレスを作ったのに、着ないのはもったいないだろう。かと言って、他の貴族どものパーティーで、そのドレスが初めてのお披露目になるのも悔しいしな」


 く、悔しい……?


「そのために、このパーティーを開かれたのですかっ」

「そうだが?」


(そんな初孫のお披露目ではないんですから!)


 予想外すぎる言葉に、私は不覚にもくすっと笑ってしまう。


「おかしいか?」

「は、はい、おかしいですわ。そんなパーティーの理由、聞いたことがございませんもの……ふふ、あははは……」

「あぁ、俺は今、世界一の果報者だぞ」


 陛下はうっとりとした声をこぼす。


「何故です?」

「お前の温もりをこうして間近で感じ続けられているだけでなく、その可憐な笑い声を一人占めできるんだからな」


 陛下の言葉に、頬が熱を持ち、鼓動が痛いくらい高鳴った。


「陛下ってば」

「冗談だと思うか?」

「……違うのですか?」

「ああ」


 今、とても陛下の顔を見たいと思った。どんな顔で、今の言葉を仰っているのだろう。


「お前の顔がみたい」

「い、いけません。ひどい顔ですから。化粧も落ちて……」

「見たい」


 陛下は構わず、私の顔を見ようとする。恥ずかしくて顔を伏せようとするが、顎をやんわり上げさせられた。


「やはり美しいな。世辞じゃない。それにドレスは想像以上に、似合っている」


 間近に見る人懐こい陛下の笑顔をずっと見ていたいと思えた。


「良かった。ようやく目が合った」

「え……?」

「つい最近、避けられてるようだからな。俺と目を合わせてもくれなかっただろう。たまたまだったのかもしれないが、寂しかった」

「さ、避けるなんてそんな」

「嫌われていないと分かればそれでいい」

「陛下を嫌うなんて、ありえません……」

「それを聞いて安心した。その一言を聞けただけで、パーティーを開いた甲斐があるというものだ」


 陛下は立ち上がった。


「部屋に戻るか?」

「……はい。陛下は褒めてくださいましたけど、大勢の皆さんの前で、この顔を見せるのはためらいますし、ご不快に思われる方もいらっしゃると思いますので」


 泣いてしまったせいで目だってきっと腫れぼったくなってしまったに違いない。


「もう二度と、あの女がお前に近づかないようにするから安心しろ。待っていろ。人を呼んでくる」


 陛下が部屋を出てしばらくすると、扉がそっと開けられた。


「ミレイユ」

「マルギッタ……?」

「陛下がミレイユのことを頼んだって仰られたから」

「そっか」


 親友の姿に、陛下と一緒にいるのとはまた違った安心感が胸に広がる。


「良かった。顔色もいいし、大丈夫そう。ふふ、陛下のお陰ねっ」


 燃えるように頬が熱くなる。

 その反応に誰より驚いていたのは、当のマルギッタ。


「え? え? え?」

「な、なに、人の顔を覗きこんで……」


 私は顔の火照りを看られるのが恥ずかしくて、顔を背けた。

 マルギッタは輝くような笑顔を見せた。


「もしかして、ミレイユ、あなた、陛下のことが好きなのね!」

「え……ち、違う! 違うわ! そんな不敬なこと!」

「不敬なはずがないでしょ。そもそも陛下が最初に愛の告白をされたわけなんだから!」「わ、分からないの。これまで人を好きになったことなんてなかったから」

「んー。まあ、そうかぁ。じゃあチェックするわね。ハイか、イイエで答えて。陛下のことをいつでも考えてしまう」

「は、はい」

「陛下に会いたくてしょうがなくなる」

「……はぃ」

「いざ陛下と会ったら恥ずかしくて目を合わせられない。話したいはずなのに、いざ本人を前にしたらうまく話せない」

「…………はぃ」

「完璧に恋しちゃってるじゃないっ!」

 本当にこれが恋なの?

「……これが恋……苦しいのね……」

 恋というのは、物語の世界のようにただ甘く、幸せなだけではないみたい。

「待って。ということは、これってミレイユにとっての初恋じゃない!?」

「はつ、こい?」

「だって、物心がついた時にはもう殿下の許嫁だったんだし、恋をするなんてこと考えもしなかったでしょ?」


 言われてみれば、たしかにそうかもしれない。

 憧れがあったけれど、自分には殿下がいるのだから、他の男性のことは考えることもなかった。

 初恋が国王陛下。なんて贅沢なんだろう。

 でもきっと国王陛下にとって私はたくさんの好きになった人のうちの一人にすぎない。

 だからと言って陛下の誠実さが曇るはずもないのに、胸の奥がモヤモヤしてしまう。


「それでいつ、陛下のプロポーズは受け入れるの?」

「そんな簡単なことじゃないわ。あんな完璧な陛下の隣に立つなんて私には無理だものっ」


 私はふるふると首を横に振った。


「それが数日前までは未来の王妃だった子の言葉? 殿下の許嫁だったのよ」

「それは……私も殿下も色々と足りないところがあって未熟だったから、一緒に成長しあえればって思えてたから。でも殿下と陛下では全く違うの。マルギッタだって分かるでしょ?」

「分からないよ。足りないところがあれば今からでも学んで、陛下と並べるような人間になればいいだけじゃない?」


 答えを先延ばしにすればするほど、誠実な陛下の純真な心を弄ぶことになりかねない。


(わ、私は……)

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