第2話
「はぁ、はぁ、はぁ…倒したぞ…」
それから6時間後。
黒竜バハムートを奇跡的に倒した俺は、その亡骸に身を預けて肩で息をしていた。
倒した。
奇跡的に倒せてしまった。
手が震える。
心臓の鼓動が治らない。
どうしてこんなことが出来てしまったのか自分でもわからない。
だが、バハムートの挙動は、ラストファンタジーに出てくるボスキャラのバハムートと全く同じだった。
なのでバハムートの攻撃に対して俺はほとんど反射的に体を動かすことができた。
一撃でも攻撃をもらったら終わりだと心に刻み、ひたすらその攻撃を避けながら初期装備“錆びた剣”でちまちまバハムートを削った。
そして今、6時間をかけてようやくボスのバハムートを討伐したのだった。
「ははは…なんだよこれ…なんなんだよ…」
夢だと思いたい。
どうしてこんなことになったのか。
俺はラスファンの世界に転生してしまったのか。
ネット小説でよくあるゲーム世界に転生ってやつなのか。
それにしたってなんでいきなり初期装備でラスボスの前に放り出されたんだ?
こういうのって普通始まりの村とか街とかそ
ういうところからのスタートだろ!?
もしネット小説みたいに俺を転生させた神がいたとしたらあまりに鬼畜すぎないだろうか。
「でも勝った…勝ったぞ…」
奇跡的に生き延びてしまった俺は、勝利の余韻に浸りながら色々考えを巡らせる。
「あ、そうだ…ステータスを見ておくか…」
この世界がラスファンの中だというのなら、ステータスだって存在していたっておかしくない。
俺はちょっと恥ずかしくなって躊躇っていたが、ええいままよと“あの言葉”を唱えた。
「ステータス開示!!」
= = = = = = = = =
名前:ヒビヤ・リンタロウ
種族:ヒューマン
レベル:1→120
攻撃:120→100050
体力:180→150080
敏捷:70→80300
防御:150→120000
= = = = = = = = =
これで出なかったらクソ恥ずかしいなと思ったけどちゃんと出た。
そしてしっかりレベルが上がりまくっていた。
そりゃそうだ。
初期装備、初期ステータス、アイテムなしでラスボスを攻略したのだから。
「レベルは一気に120か…とんでもないな…」
1だったレベルは一気に120まで上がり、3桁に到達。
攻撃や体力などの各種パラメータの数値も、バグみたいな伸び方をしていた。
どうして一匹のモンスターを倒しただけでステータスがここまで伸びるかというと、それはラスファンがよりギリギリの戦いをすることによって得られる経験値が増えるというシステムだからだ。
大抵のゲームが、同じモンスターから得られる経験値がどのような倒し方をしたとしても同一であるのに対して、ラスファンはギリギリの戦いをすればするほど得られる経験値が増える。
つまり初期装備、初期レベル、アイテム無しの本当に攻撃が擦れば即死の極限状態でボスを倒した俺は、そのラスファンのシステムの恩恵を最大限に受けられる状態だったということだ。
「これからどうすれば…」
とりあえず目の前の敵は倒した。
レベルも上がったし、よほどのことがない限り死なないステータスを手に入れた。
さて、これからどうしよう。
「とりま、ハンターギルドに行くか…」
困ったらハンターギルド。
ラスファンではそうと相場が決まっている。
ハンターギルドに行けばアイテムとか換金できるし、可愛い受付のお姉さんからアドバイスももらえるし、食堂ではハンター用の安くて美味い食事が提供されている。
この世界がラスファンの世界だというのなら、とりあえずハンターギルドに行けば生計が立てられるはずだ。
「行くか…」
重い腰を上げ、まずはバハムートの死体からドラゴンの牙を回収する。
ドラゴンの牙は最高級の武器素材なので、売れば金になるだろう。
「よし…」
ドラゴンの牙を回収した俺は、まだ疲労が残る体を引きずりながら、ボス部屋を出てハンターギルドへと向かうのだった。
「な、なんだあの化け物は…」
一部始終を見ていた目撃者がいたとも知らずに……
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