【第一章完結】異世界最強の英雄は、ダンジョンが発生した現代日本でも無双する〜なんか前世の嫁(超絶美女)とか師匠(TS美少女)まで転生して来てるんですけど!?〜
Recent(れむれむ)
プロローグA 出会い
ーーー西暦202☓年7月 東京都 旧新宿駅ーーー
「こうして、新宿駅に発生した世界最初の
旧新宿駅を改装して建造された日本ダンジョン協会本部の講堂では、ダンジョン攻略者、所謂『冒険者』資格試験の為の座学が行われている。
三十人程の若い男女がまばらに座る中、正面の大型スクリーンに映し出された、ポップな絵柄の美少女アイコン”シンジュクちゃん“が、冒険者として最低限必要な知識を解説してくれている。
「ダンジョンに出現する敵対生物、通称”モンスター“は銃火器が効きません。効果があるのは刀剣類や弓などの非近代兵器、または魔素を用いた攻撃のみです。流行りの言葉で言うと魔法ですね!」
シンジュクちゃんは手をかざし、画面の中で火球を放つ。
「このような魔法も含めた、魔素を用いた様々なスキルは、ダンジョンでモンスターを斃し魔素を吸収する事で得られます。俗な言い方だとレベルアップですね!」
ピロリロリン、という音と共にダンジョンちゃんの頭の上に『Level 1』という表記が出る。
「実際はゲームのようにステータスは確認出来ませんが、取得した技能はダンジョン協会の発行するギルドカードで確認できるようになりますよ!」
ダンジョンちゃんは画面の中で、テレホンカード程の大きさのカードを翳す。
「それでは、次に冒険者としての義務や権利について━━━」
そして1時間ほどの講義の後、参加者たちはマークシート形式の試験を受け、講義室を退室した。
「お、あったあった」
「『冒険者』資格試験、筆記試験合格の方は、二次試験の体力測定が14時から開始となりまーす。更衣室にて動きやすい服装に着替えてから集合してくださーい」
協会の係員がメガホンでホールに集まっている受験者に次の試験の案内を行う。
「おっと、そろそろいかないと…っと!?」
「きゃん!」
慌てて振り向いたら紅蓮は、後ろで同じようにパネルを覗き込んでいた少女にぶつかってしまう。
「痛たぁ…」
「ごめん、大丈夫?」
尻もちをついてしまったストロベリーブロンドの少女に、紅蓮は謝りながら手を差し伸べる。
「ボクこそごめんね、ついつい近づきすぎちゃった」
紅蓮の手を借りて立ち上がった、”ボク”と言う男の子のような一人称の美少女は、宝石のように澄んだ蒼い瞳に苦笑を浮かべて謝罪する。
「よっと…ふぅん、結構逞しい腕してるんだ」
「あー…アルバイトで結構鍛えられたからね。顔に似合わないってよく言われるけど…」
童顔なのに身長は比較的高く、力仕事系のアルバイトで自然に鍛えられた引き締まった肉体をもつ紅蓮は、友人達からは『首から上と下のギャップがあり過ぎる』とよく言われていたし、本人もちょっと悩みのタネだったりする。
「そうかな、ボクは好きだよ? 頼り甲斐がありそうで」
「あはは、ありがと…っ!」
金髪碧眼のボクっ子美少女が、あざとい角度で上目遣いに微笑めば、健全な男の子ならば10人が12人鼻の下を伸ばすはずなのに、何故か紅蓮は背筋に粟立ちを感じて後退る。
「どうしたの…?」
「いや、うーん…なんというか…身の危険を感じて?」
「えぇ…こんな美少女のどこに怖がる要素があるのさ?」
男口調の美少女は可愛らしく頬を膨らませ、紅蓮より頭一つ小さな身体に不釣り合いな豊かな双丘を強調するように腕を組む。
紅蓮も困ったように首を傾げ、自身の中にある違和感を拙い語彙力でなんとか形にしようとする。
「うーん…なぜだか笑顔に途轍もない胡散臭さを感じて?」
「酷くない!?」
少女は紅蓮の発言に傷ついたように俯く。
「そりゃあ確かに、周りによく見られようと思って可愛い女の子を演じてるところはあるけど…胡散臭いなんて言われるのは久々だよぉ」
「ご、ごめんごめん…というか昔言われたことあるんだ…」
「っと…う、うんうん…そうだねぇ、ずっと昔に…ね」
紅蓮の指摘に、一瞬だけ少女の声が跳ねるが、取り繕うように微笑む。その笑顔は、先程紅蓮が警戒した計算され尽くした笑顔ではなく、憂いの籠もった寂しそうな笑顔だったが。
それは男なら誰でもドキリとさせてしまう大人びた表情なのだが、紅蓮は申し訳無さそうにしつつも心を動かされる様子は無かった。
「フフ、君なかなか興味深いねぇ…これも何かの縁だ。名前を聞かせてくれるかな? あ、ボクの名前は
「僕は鹿狩紅蓮…っと、敬語の方がいい?」
「君も『冒険者』資格試験を受けに来たのなら
「僕も20歳だけど…なんか言い方おっさん臭くない?」
「んな!?」
見た目は人形のように美しいのに、親しみやすく不思議と距離感の近い銀羽に、紅蓮も友人を相手にするような軽口で応じる。
頬を膨らませて反論する銀羽とそれをいなす紅蓮の様子は、まるで同郷の友人のように気安い雰囲気だった。
「あの、どいてくれないかしら? パネルが見えないのだけど?」
仲良く(?)言い争う二人に、凛とした声で注意が飛ぶ。
「おっと、ごめんよ。ちょっと盛り上がりすぎたみたいだ」
「ごめんな……さい?」
「どしたの、紅蓮君?」
紅蓮と銀羽は慌てて振り向き、声をかけてきた女性に頭を下げるが、さっさとパネルの前からどいた銀羽と異なり、紅蓮は自分達を注意した女性の顔を見て固まってしまう。
「…? 私の顔に何かついていますか?」
「い、いいいやいや…そんな訳じゃなくて、えーっとそのぉ…す、すごく綺麗だなって!」
「はあ…ありがとうございます?」
赤面してしどろもどろになる紅蓮に、胡乱な目を向けながらも、紅蓮達を注意した黒髪の女性は褒められた事にはお礼を言う。
「ふーん…」
そんな二人を、銀羽は興味深そうに観察する。
(確かに綺麗な子だねー。歳は今のボク達と同じくらい、身長はボクと紅蓮君の間くらいかな? 腰までの伸びる羨ましいくらいサラサラで光沢のある黒髪、瞳も黒…うわ睫毛なっが! 化粧は…ほとんどしてないのに嫉妬しそうになるくらい肌白いな! ちょっと目つきが鋭いけど、小顔で鼻筋の通った美人顔だね。手足も長いしモデルみたいなスタイルだけど胸も結構あるなー、まあボクほどじゃないけど。ボクほどじゃないけど!)
観察を終えた銀羽は、しどろもどろになっている紅蓮に助け舟を出す。
「ほら紅蓮君、さっさとどいてあげたまえ」
「え、あ…うん」
フラフラと道を開けた紅蓮は、黒髪の美女がパネルを確認して去るまで、呆けた表情で固まっていた。
銀羽はニヤニヤと笑って紅蓮をからかう。
「ふーん…紅蓮君はあんな子がタイプなんだねぇ?」
「ちょっ、あれはそんなわけじゃ…」
「いやどう見ても一目惚れした純情少年だったよ? まったく、隣にこんな美少女がいるのにあんな反応されるなんて…自信なくすなぁ」
「銀羽はほら、なんというか…可愛いんだけど手を出すと危険かなと」
「君のそのボクに対する警戒心はどこからくるの!?」
「……勘?」
「えぇ…」
自分に対する評価が妙に塩な紅蓮に銀羽は素で落ち込むが、すぐに気を取り直して紅蓮に注意する。
「そら、そろそろいかないと遅刻しちゃうよ?」
「僕を引き止めてたの君じゃない?」
「美人に一目惚れしてボーっとしてたのは君だろぉ!?」
結局2人は遅刻ギリギリになるまで仲良く言い争いを続けることとなる。
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