第153話
一本【
「アリサさんは好きな料理とか食べたい料理ってあります?」
「えー、お姉ちゃん呼びしようよ。そうだなぁ…、私はミーシャちゃんが作ってくれる料理なら何でもいいよ」
でたな、何でもいい攻撃!! 何でもいいと言ったくせに実は何でもよくないという地雷ワード(苦笑)
「ボク達が『スワロー』に来るまで…アリサおさ…姉ちゃんが何を買ってどんな食材が自宅に残っているのか分からないので、買い物はアリサお姉ちゃんに任せないと…」
冒険者稼業で料理が得意ではなさそうって感じだから…家にあるのは芋とか大麦くらいじゃないのかな? 一人だったら作るより食べに行ったほうが楽だし多分安上がりだ。
「実は……【茄子花芋】くらいしか家には無いのだ」
ですよねー。夫が単身赴任中で妻が冒険者稼業で家を空けがちなんだから、買い置きしてないよね。冷蔵庫も無いだろうし。
「荷物も多いし一旦アリサお姉ちゃんの家に戻りませんか? リンド=バーグさんの意見も聞きたいですし…」
「荷物? 大丈夫、私が持ってあげるよ。冒険者だからね、荷物持ちは得意得意!!」
いや、本命は荷物置きに戻りたい訳じゃないから!! リンド=バーグさんの意見も聞きたいけど、本音は料理当番を回避したいだけだから!! どう考えてもリンド=バーグさんの家でご飯作る係に任命される未来が見えるじゃないか…。いや、適当料理は作れなくはないんだよ。でも、毎日毎日は勘弁してほしい……。
「ボク、『スワロー』の市場も回ったこともないので、何が名産品だとか、何が旬だとか分からないんです。調味料も油も持ってないし……」
「そうだよね。油は買わないと【茄子花芋】も揚げられないや」
よしっ、調理回避出来そう。
「今日は無理でも後日アリサお姉ちゃんに美味しいご飯を作りに来ますね」
「やった!!」
うーん、この提案は正解だったのか間違いだったのか……。
服を抱えてリンド=バーグさんの家に戻ったら、今日の調理回避は正解だった事が判明。明日、ホーク=エーツさんが様々な料理を商業ギルドに報告するので、それさえ済めばここに来るまでに披露した前世由来の料理を作っても問題ないとのこと。今後は変わった料理を作ったら、任意で報告すればいいらしい。まぁ、報告しなくてもいいみたいだけど、カレーとかラーメンは再現できたら要報告だな。
「変わった料理は最初に俺かパイク=ラックか、もしくは職校の職員や講師相手に出してくれ。いきなり露天の屋台とかで披露するなよ。冒険者ギルドの厨房内でもいいが、間違っても客のいるテーブルには出すな」
リンド=バーグさんにそう警告されてしまった。大きな街でいきなり目立つと面倒臭いんだって。 それこそ「指導希望者が殺到するとか、調理師としてオファーが来るとか、起業の打診とか、新作料理を頼まれたりとかで、職校での座学や実技が滞ると本末転倒だろ?」 って本気で心配してくれてた。それだけ『関所の集落(仮)』でやらかしてたんだな、俺…。
荷物を学生寮に置きに行って、二次門限の夜十一時までに戻る申請をした。俺がまだ正式な生徒ではない事と、庇護養親(庇護保証人を含む)と会食という理由で申請は簡単に受理された。いい歳した成人ドワーフが利用する寮だとは言え、学生寮には特殊な素材や研究内容、もしくは納期のある作品を持ち込んでいる生徒もいるので、それを保護する意味もあっての門限だった。通常門限は夜十時。少々飲んで酔っぱらっていても十分戻ってこれる時間だな。夜通し飲むなら外泊許可を申請するだけです。
リンド=バーグさんとアリサお姉ちゃんと三人で夕飯の買い物をする。猪肉串と白いパンと大麦パン、【川サモン】と言う川魚、揚げ物用の油、岩塩と海水塩とソースと【
リンド=バーグさんがエール樽を抱え、遠回りになるのに 「明日の予定確認だな」 とパイク=ラックさんの家に寄ったのは、こっそりエールを樽ごと冷やしてもらう為だったよ。
リンド=バーグさんの家に入ると施錠にプラスして消音の魔道具を起動する。鍛冶師の家と工房では消音の魔道具の設置が義務付けられている。理由は当然、五月蝿いから。設置していない鍛冶師は朝六時から夕方六時までの作業しか許可されない。夜通し炉を動かしたり鍛金したかったら消音の魔道具を設置しろって事だ。消音の魔道具、密談するのにも便利だよね。
そして室内にある簡単な祭壇? な棚にエールを一杯お供えする。殆どの鍛冶師は “ 火の神様、
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