第151話
それからは大きなトラブルもなく俺達は無事に『スワロー』に到着した。とは言え俺の馬車酔いのせいで予定より一日遅れだったけれどね。食料は多めに用意していたし、蕗を採って食べたりもしたので飢えることはなかった。
いや、トラブルは有ったな。ラパンが謎の葉っぱで酔っ払った。
ラパンが食べた葉はパイク=ラックさんの見立てでは【シカクワズ】と呼ばれていて、普通の草食動物が食べると酔っ払っうどころか死亡することもある毒草だった。鹿も喰わない葉だから【シカクワズ】なのか。『対物簡易鑑定』したら、
【シカクワズ】:前世の
あ、前世で
ラパンに念話で聞いてみたら、 ( 「へーきへーき、これ食べたらフワ〜っときて気持ちよくなるから時々食べてた」 ) と返された。
( 「ラパンは平気でも、普通のお馬さんが食べたら死んじゃう葉っぱだよ」 )
( 「ドワーフも酒飲むだろ?」 )
( 「ドワーフも飲み過ぎたら死ぬからね。ラパンは【シカクワズ】なんかで死んじゃダメ!!」 )
( 「……、分かった」 )
( 「ラパン、ボクとの約束だよ」 )
と、遣り取りしたので多分食べるのは止めてくれると思う。約束した後、久々に甘噛み攻撃されたけど。
『スワロー』に着いた後は素性鑑定を掛けられ、それから商業ギルドに行って仮登録を済ませ職校の入校手続きを済ませた。それから馬車ギルドに馬車と【
パイク=ラックさんとリンド=バーグさんは自宅に戻り、ホーク=エーツさんは商業ギルドの職員寮に泊まることになっていた。で、俺は……仕方ないので職校の学生寮に泊まらせてもらうことになった。もしかしたら学生寮で暮らすことになるかもしれないし。
………だったんだけど、リンド=バーグさんが迎えに来た。部屋中に『汎用魔法』
「埃っぽかったらスマン。ずっと留守していたからな…」
通されたのは二軒長屋の住居スペース側。もう片方は工房だった。炉のある工房と住居スペースを分けるのが鍛冶師の生活スタイルなんだって。危険防止の為と、家族の生活を守る為なんだとか。そして家があるのは鍛冶区。まぁ騒音対策と火災対策なんだろうけど。前世の城下町なんかでは鍛冶町という町名もあった訳だから、どこの世界でもそんなものなんだろうな。ちなみにパイク=ラックさんの家は木地区。鍛冶区とは反対側の木工関係の職人が多く住むエリア。実は木工職人以外も住んでいるらしいけどね。マリイン=リッジさんの実家もこの地区に有るって話だ。
聞けばリンド=バーグさんは一年と少々、あの『関所の集落(仮)』に単身赴任していたとのこと。奥さんのアリサ=ランドさんは冒険者稼業で家を空けがちなので若いうちに赴任当番を済ませてしまおうという事だったという。
「初めまして、アリサ=ランドです」
「初めまして。ミーシャ=ニイトラックバーグです。リンド=バーグさんにはお世話になってます」
「この
噂って、リンド=バーグさん、アリサさんに俺のどんな情報流したんですか!?
「面白くて頭が良くて物知りで、すっごく料理が上手でトンデモ娘だって聞いたよ」
「ははは…」
「ミーシャ、安心しろ。アリサも相当トンデモだ」
「やだなぁリンド、褒めても何も出ないぞ」
それから暫くの間、夫婦漫才とまではいかない遣り取りを聞かされたよ。
「それでミーシャを呼んできたのはだ、ミーシャは普段着とか作業着とか持ってないだろ?俺だと何を選べばよいのかイマイチ分からないから、アリサに丸投…じゃなくて見繕ってもらえば安心だろうと言う事だ」
「私も流行りの服とかには疎いんだけどね」
「職校は基本は何時でも入校可だが、来月から後期日程に切り替わるから慌てて講義を聞かなくても大丈夫だろう」
「よーし、お洋服買ったら『スワロー』の街を案内してあげないとね」
「俺はアリサの装備の確認だ。壊してないだろうな?」
「今回は壊してません!!」
「ドヤ顔しなくてもいいんだからな。普通は採取メインで装備は壊さないぞ」
「壊したんですか?」
「そこにオリハルコンが有るから……」
ヤバイ、この二人面白い。
「アリサ、晩飯はどうする? 外に行っていいしアリサの手料理でも構わないぞ」
「うーん、面倒くさいからミーシャちゃんに作ってもらおう。噂のアレが食べてみたい」
どれだ!? アレってどの料理だ???
「あの…噂のアレとは一体……」
「アレだよ、アレ。アレのこと忘れちゃったのか? 【
アレかーーー!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます