第131.5話 (閑話)

――― 今回はポニー達の視点の回です ―――


「おかえりー」

「初めまして」

「あら、来てたの」


ヒヒン ブルン と鳴き声をあげるポニー達。彼ら【運馬ウマ】同士は会話ができる。中には念話の出来る【運馬ウマ】もいるのだとか。


「聞いて聞いて!! ドワーフに【紫萌肥しアルファー・アルファー】を食べる個体がいたの!!」

「マジで!?」

「マジよ、マジ!!」

「マジかー」

「何か別の草も喰ってたぞ」

「ドワーフ、パネェな」


ちなみにこの会話、【運馬ウマ】以外には只の鳴き声にしか聞こえないので、馬車組合側には厩舎に【運馬ウマ】が十頭もいたら賑やかだな…としか思われていない。



「喰ってたのは発芽したてのヒョロっちい【紫萌肥しアルファー・アルファー】だったけどな。美味そうに喰ってた」

「【運馬ウマ】の好きな草を美味そうに…」

「ギャグじゃねぇって!!」

「やだ、あたし達の【紫萌肥しアルファー・アルファー】が足りなくなっちゃわない!?」

「そこまで食べてなかったから多分大丈夫よ」


「それとね、見たことのないブラシでブラッシングしてもらったよ」

「それな」

「なんだっけ、タワシって呼んでたかな」

「で、どうだった?」

「何とも言えない櫛削り感が。毛並みも整うけど程良くマッサージされるよ」

「いいなー」

「タワシ、まだ試作品なんだってよ」

「ドワーフ、早よ作れ!!」

「急に作ったらしくて文官泣いてたよ」

「急に発明とかドワーフらしいぞ」


「それよりワギュちゃんのたてがみ、めっちゃオシャレさん」

「スノウもヤジイもラパンもイケてる」 

「やだっラパン、イケメンしてるし」

「オレはいつだってイケてる」


「あれ? ワギュさぁ【運馬石ウマせき】外れたん?」

「違う違う」

「ワギュ、【紫萌肥しアルファー・アルファー】喰うドワーフに渡してたわ」

「キャー、告白!?」

「そのドワーフってイケメン? それともイケオジ?」

「メスだぞ」

「残念、メスなのか」

「ワギュちゃんの種族を越えた愛が始まるかと思ったのに」

「お友達になるのかー。理解の有るドワーフっていいかかも」

「ラパンも渡せば良かったんじゃ? お前あのドワーフ気に入ってたんじゃね?」

「まだ背中に乗せたこともないのに求婚できっかよ」

「だねー」

「ワギュとラパンとドワーフで三角関係!?」

「ヤバーい」


― ― ― ― ― ― ― ―


「あれ? ドワーフ沢山来たよ。馬車のお仕事かな?」

「支部長と知らない顔が四人か。二頭立てのお仕事くるかな?」

「遠出じゃなきゃいいなぁ」


「あ、ミーシャちゃんだ。あのツインテールのドワーフっが【紫馬肥萌しアルファー・アルファー】食べてたよー」

「あのがワギュのお相手?」

「ラパン負けんな」

「ミーシャちゃん、『スワロー』に行くって言ってた」

「そっかー。馬車だな」

「背中に乗せられなくもないか」

「ミーシャちゃん、『襷着るタスキル』使えないからそれはないかも」

「マジ?」

「ジジイドワーフもいるから馬車じゃね?」



馬車組合『ビレッジアップ』支部長が【紫萌肥しアルファー・アルファー】の種を乗せた大皿を持って【運馬ウマ】の前に現れる。支部長が草樹くさき魔法を使い発芽させると、隣にいたミーシャと呼ばれていたドワーフ娘が摘んで口にする。


「マジで喰ってるし」

「マジだったわ」

「ちょ、支部長も食べてるんだけど」

「喰ーわーせーろー!!」


その場にいるドワーフ全員が【紫萌肥しアルファー・アルファー】の発芽した物を食べるのを見た【運馬ウマ】達が頭を上下に振り始める。更に前脚で地面をトントンと叩きだす。ドワーフ側が【運馬ウマ】達を宥めるために餌を与えたのは言うまでもない。



― ― ― ― ― ― ― ―


「やべっ、タワシきたー!!」

「あれがタワシ?」

「変わった形のブラシだね」

「あれ、マジで気持ちいいぞ」

「ブラッシング、オッサンじゃなくて、ねーちゃんで………ヤバッ!! タワシ、ヤバッ!!」

「あら支部長ありがとう」

「これで試作品かよ」

「全馬車組合の備品希望」

「これ、【運牛ウシ】にもウケそうなんだけど」 

「いやいや、獣人ウケもするって」

「やべー、タワシ、マジでやべー」


話の流れのせいでドワーフが急遽タワシを【運馬ウマ】に披露する事になった訳だが、その独特の触感にあっという間にタワシの虜になってしまう【運馬ウマ】達であった。

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