第104話
渡されたのは、クレソンっぽい草と、青山椒の実っぽいツブツブと、茶色い殻の穀物と、あと……… 醤油入れの魚………!?
えっ!? ええっ??? 赤いキャップの醤油の入った魚型のアレ!! お寿司のパックに付いてくるアレですよ!!!! しかも御大層に中身入りだ。謎の茶色い液体が入っている。見た目はモロにアレだ。
「こっ……、これって………???」
異世界転生した先で、いきなり前世で良く知っているものと同じ形状の物を目にしたら、人間パニックになるんだな。いや、俺はドワーフに転生してる訳だけど。
「ふふふ…面白い形でしょ? これはね、【粗相豆】っていうんだよ。別名【
んーーー!!!!???? ヤバい、中身が気になる。醤油入れに見せかけた危険物かもしれない。落ち着け、落ち着け、何のために『対物簡易鑑定』がある。他の物より先ず醤油入れから鑑定だ。
【粗相豆】:前世の醤油
はぁーーーっっっ!? マジで醤油なの!? 大豆を探そうとしていた俺って何!? ってか、マジ醤油っすか??? 『対物簡易鑑定』さん、嘘ついてないよね?
【粗相豆】:前世の醤油。 赤いキャップ状の萼の付いた実。豆の仲間。豆のサヤは熟すと硬く透明になり、中の豆は完熟期を越えると液体化する。液の色は焦げ茶色。液体は塩味が強く独特の臭気を放つ為、弾け飛んだ液体が衣服や毛皮に付着するとまるで粗相をした様に見えるのでその名が付けられる。 別名の【
「これね、野外散策中に服や髭につくと厄介なんだよねぇ。臭いし色は取れないし、付着しっ放しだと肌が爛れるし。染め物にも使えない。唯一、中身を抜いてから浄化したらポーション瓶の代わりになるくらいしか役立たないんだ。ミーシャって『汎用魔法』で浄化使えるんだから、もしかして使い道があるのかなー? って思ってね」
マリイン=リッジさん、容器的にも使うけど、俺が使いたいのは中身の方です。って言うか、(推定で)過去に来ていたであろう異世界転生者が発見してなかったの!?
あぁヤバい、味見したい……。
キャップ状の萼を外すと中の醤油を指先に一滴垂らす。ペロッと舐める。これは濃厚なたまり醤油!! 白醤油とか九州の甘い醤油とかでなく、正統派のたまり醤油!! ヤバい、醤油だよ……、癒される………。もう一滴いっとくか。 あっ、手指消毒忘れた…。
「ちよっ…、ちょっとまって!! ミーシャ、いきなりそれ舐めるのぉ!? 確かに毒は無いけどいきなり舐めちゃダメだから!!」
マリイン=リッジさんが大慌てしてるよ。そりゃそうだよね。粗相の液体なんだから無毒でもいきなり舐めたら慌てるわ。
「ミーシャ、大丈夫!? なんだか笑ってるけど……」
いかん、また顔に出てたか。めっちゃ変顔してるな。
「マリイン=リッジさん、ありがとうございます。これ、とっても美味しい調味料です」
ニッコリと笑って返したけど、まぁ多分、理解しても信じてももらえないんだろうなぁ……。
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