第101話

  ――――――― 今回はジョー=エーツの視点です ―――――――


ミーシャの移動の引率に、ここの集落のメンバーが二名付いていく事になった。俺としてはガルフ=トングかリンド=バーグのどちらかと、ホークの計二名が付いていくのでは?と思っていたのだが、まさかパイク=ラックも付いていく事になるとはな。まぁパイク=ラックは三毛皇みけおう様から家具製作の依頼を請けたので『スワロー』の自宅工房に戻らねばならない訳ではあるが。どうせ同じ方向なら付いて行くと諸手を上げて引率に立候補していた。リンド=バーグは庇護養親の件もあるが、それより魔石問題で説明をする必要があるらしい。ガルフ=トングもやたら新製品の開発をしていたからそのうち説明に呼ばれるだろう。暫くは試作と改良の繰り返しか?


引継ぎもあるのでレオナルド=ダービーとダン=カーンには集落周辺の説明をする為に出てきてもらった訳だ。ある程度、ミーシャの話もしておかないといけないし。マリイン=リッジが付いてきてくれたのは良かった。ミーシャ指定の、よく分からない植物採取を丸投げできる。任せておけばそれ以外の面白そうな植物も適当に採取してくれるに違いない。


「ジョー=エーツ、川には行かなくていいの?【渓流鰮】の方ね」


「今回はいい。パイク=ラックが抜けるからな。魚醤は無理に作らなくても取り寄せればいいだろう」


そう、猫の人から教わった魚醤作りはパイク=ラックの担当だった。他の街でも作られているのでコストは掛かるが買って運んだ方が早いし楽だ。


「了解〜。でも、ヒレ酒が飲めなくなるよ。魚醤作らないなら丸焼きからの骨酒が飲めるよ」


「あ……、それはパイク=ラックには言うなよ、絶対に言うなよ!!」


「ジョー=エーツ、ヒレ酒の素は大事だぞ」


「後日、連れて行く」



そうだ、「魚醤が無ければヒレ酒にすればいいじゃない」と満場一致で言ってくる案件だった。



「あ、【鬱金クルクマそう】見っけ。こっちは【生薑ジンジャそう】。ミーシャが欲しいのは根っ子なんだよね? 【椿象カメムシそう】は要ると思う?」


「任せる。草でも茸でも食えるやつなら持って帰れば喜ぶだろう」


「え〜〜、それをやったらジジ…じゃなくてパイク=ラックも喜んじゃうんじゃない? あのドワーフ、草オタクだし」


「ふふ…っ、 あっ!! これも!!」


いかん、マリイン=リッジが野生のドワーフ状態だ。まぁ俺は知らんぞ。



「で、ジョー=エーツ、あのミーシャという娘は一体何者なんだ?」


「それは俺が知りたい」


「おいおい…」


「ミーシャは一月ほど前にこの集落の前に座っていたんだ。犯罪者ではなかったし、保護者もいない様だったから一時保護する形をとった訳だが」


「それに振り回された…と」


「まぁ、一言で言ったら “ 不思議ちゃん ” だからな。僻地育ちで、物知りの老ドワーフに育てられたと言っていたが、それにしても知識量と発想力が尋常ではない。あれでまだ髭が生え揃ったばかりだぞ」


「それで保護する訳か。庇護養親が二人付くのは珍しいとは思ったが、二人でも少ないくらいだな」


「まぁ、職校にぶち込んでおいて、そこで色々やらせておいた方が安全だからな。『スワロー』は職人街だからミーシャ向きでもあるし」


そうは言ったものの、俺としてはミーシャには是非とも『エイドパス鉱山』にも行ってもらいたいのだが。あそこは採掘好きには天国だ。


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