第94話

スキル『料理研究レミレシピ』は地母神の一柱・レミが……、という事だけど、この世界の宗教は多神教だ。しかも、明確に『◯◯神』と信仰しているのはヒト族が中心。ドワーフを始めとする亜人はユル〜い信仰だ。それこそ前世日本の八百万の神を信仰しています状態。竈の神様とか、水神様とか、お天道様とかとかとか…。トイレの神様は居ない模様。トイレには神様が居ない代わりにスライムが居る。神様信仰というか精霊信仰というか。でも、この世界には『水精ウンディーネ』とか『樹精ドライアド』とかも居るので精霊信仰では表現的になんとなく微妙な感じになる。かと言って前世のキリスト教の聖人なんかとも違うので、恋人達の守護聖人とかという表現もやっぱり微妙な感じだ。


まぁ、前世が元日本人なら気にせずスッと馴染める感じなのはいいけどもね。推し神様が◯◯で…とかではないけれど、鍛冶師だったら火の神様が人気だったり、鉱夫だったら鉱山ヤマの神様が人気だったりしてる。あ、お酒の神様もいたなぁ…。 酒を飲む事イコール神事、つまり信仰行為に相当する模様。なので、新作のカクテルを作って飲む事はお酒の神様を信仰し、お供えをしている事になってしまう、…と。


俺、お酒の神様に対して物凄〜く信心深いドワーフってことになってしまってるのでは!?


なので、パイク=ラックさん以外が冷やしエールの為に冷却スキルを何としても会得しようとしているのも、きっと信仰心の現れ………なのか?



俺はこの宗教観は楽でいいけど、前世で一神教を信仰していた人が転生してきた場合、それはそれで大変なのかもしれない。



何でいきなり宗教話か…って、どんな神様が協力してくれたのか分からないけど、何とか転生先でも生きていけそうです。ありかとうございます。って思ったから。皆に言ったら「そりゃー、酒の神様のお陰だろ?」って言われるんだろうけど。ついでにお酒の神様以外で皆の推し神様も聞いてみたい。




「ん? ミーシャ、ぼーっとしてるが、どうした?」


「あっ、ボク、皆さんに出会って色々助けてもらって、そればかりか職校の入校手続とか、庇護氏族名まで付けてもらえて……って、どんな神様たちのお陰なのかな? って思っちゃって」


「それはやっぱり酒の神様だな」


「あれだけ新らしい酒の飲み方を奉納したんだからな」


「後は料理の神様か…」


「創造の神も祝福してくれてそうだな」


ちなみに、創造の神様は創造神ではなくて、物作りの神様。創造神に相当するのは『存在の始まり』。『始祖存在』とも表現される。混沌の世界に生まれた一つの魂が、人でも動物でもない三つの存在 〜 男の姿、女の姿、子供の姿 〜 に分かれたのだという。


あ、ヒト族にはこのストーリーは通じないので注意が必要です。



「そうそう、ミーシャの庇護氏族名のニイトラックバーグだが、敢えて切らずに続け読みにした理由を伝え忘れてた。俺達ドワーフならラック氏族もバーグ氏族も知っているから、ラック氏族とバーグ氏族に認められたのだと直に理解できる訳だが、ドワーフに聡くないヒト族がニイトラックバーグという姓を目にしたら、トラックバーグ姓の分家と勘違いするんじゃないかな…? と言う案が出たんだよ。ちなみにトラックバーグ氏族は存在しない。ミーシャは色々と面白いものを生み出し過ぎるから、いずれヒト族にもその存在が知られるだろうし。ヒト族に目をつけられる前に新進気鋭の職人で売り出しちまえ」


リンド=バーグさん、まさかニイトにそんな思惑を込めていただと!?


「まぁ、鉱石研磨師か、スライムの死核研磨師か、魔石滓研磨師のどれかになるつもりなんだろ? 俺としては総合研磨師でもいいと思うがなぁ。その時は俺が雇うぞ」


「リンド=バーグさんのところでですか?」


おお鍛冶師は武器防具ならとにかく何でも作るから、そこに装着する宝石の研磨を頼むんだよ。腕を上げたら、それこそ魔石も研磨できる様になるかもしれないぞ」



一人親方もいいけれど、仕事のコラボも面白そうだな。

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