第91話

「ミーシャ、もう少しパンケーキを焼いてくれ」


「パンケーキの中に芋麺を入れたら美味いかな?」


はいっ、それは広島風お好み焼きモドキです。


「さて、油を温めて……熱した油の中に芋麺をポーン!!」


マリイン=リッジさん、揚げ芋麺が初見の三人を驚かせたいんだな。



シャー  バリバリバリバリ



芋麺が揚がる。チリチリに膨らむ。少し冷えたらパリパリ食感が楽しいツマミの出来上がり。岩塩を振れば完成。お好みで魚醤や【リモー】の搾り汁をどうぞ。



「ガルシア翁だ!!」


やっぱり出るのか、その名前。


「え〜〜、ガルシア麺をガルシア翁に報告しなきゃ駄目なの!? 芋が白い粉になって麺になって最後はガルシア翁だよ。俺、説明したくない…」


「分かったから、分かったからな。ホーク、いいからエール飲め」


ジョー=エーツさん、それ、アカンやーつ!!



「これから【鉱滓スラグ包み】を焼きます」


フライパンに餃子を並べる。少し火が入ったら水を注いで蓋をする…んだっけ?


餃子の焼けるいい匂いが辺りに充満する。一口齧って冷たいエールで流し込めば、そこはもう天国!!



「はい、焼けました。凄〜く熱いので気を付けて下さい。口の中を火傷します」


「その時はエールで冷やせばいいんじゃないのか?」


「違いない」




皆、お気楽だ。餃子での火傷は辛いんだよ。エールじゃ治らないよ。治すのはヒールだよ。ここにはヒール持ちはいないでしょ?


「はふっ、はふっ……熱ッッ!! 美味っっ  熱ッッ!!」


「熱 熱 あっ……  エール!!」


「美味っ 熱っ 美味っ!!」


「エール、冷やしエールが切れた!!」


「パイク=ラック、もっと冷やしてくれー!!」


「美味い!! こんな料理、聞いてないぞ!! 冷やしエールの素晴らしさは真っ先に報告だ!!」



あっ、堕ちた。冷やしエール沼に堕ちた。パイク=ラックさんがニヤニヤしながら次の樽を冷していた。お主も悪じゃのぅ。



「次を焼きまーす」


フライパンに餃子を並べると、今度は最初から大麦粉を水で溶いたものを注ぐ。確か羽根付き餃子の焼き方がそんなだった記憶がある。


暫くすれば羽根付き餃子の完成だ。ドワーフにも羽根付き餃子はウケるのだろうか?



「今度の【鉱滓スラグ包み】は失敗か? 鋳造で湯口から漏らしたみたいになってるぞ」


「バリが多すぎじゃな」


「あ、これは羽根付きって言います」


「羽根なのかよ」


「【鉱滓スラグ包み】のバリ付き焼きじゃな」


羽根付き餃子が変な名前になってるー!!




「後、スープで煮る食べ方もあるんですが、小麦粉の皮でないので少し煮溶けるかもしれないです」


「試そうじゃないか」


猪骨スープを鍋に取り、沸騰してきたら餃子を入れる。餃子に火が通って浮いてきたら完成。


「これも熱いので気をつけて下さい。スープごと食べてもいいし、【鉱滓スラグ包み】を取り出して魚醤を付けて食べてもいいです」


「焼いた【鉱滓スラグ包み】を水冷方式じゃないんだな」


そこっ、何でも鍛冶にしない!!



「熱いっ、痛い!! 口の中がベロベロだ!!」


「だが止められん!!」


「こんな時こそ冷やしエールだ!! だが、痛い!!」


「ふおっふおっ…、皆甘いのぅ」


「パイク=ラックは火傷してねぇのか?」


「冷たくならない程度でゆっくり食べればノーダメージじゃよ」



流石、パイク=ラックさんというか、多分、慌てて食べたら生命の危険を伴う可能性に気付いたんだな。喉に詰まらせても、熱くて噎せても、パイク=ラックさんの心臓が止まっちゃうかも…だし。


「これはだ、もしかしたら…の話だが、熱々の【鉱滓スラグ包み】を腹一杯食べさせる拷問が生まれるかもしれないぞ」


「それは果たして拷問と呼べるのか?」


「美味いが熱い。そして数日間は口の中がベロベロになる拷問だ。拷問だからエールは抜きだな」



二人羽織で熱々【鉱滓スラグ包み】を食べさせる拷問か……。



「更に、熱々の【鉱滓スラグ包み】を喰わせている目の前で冷やしエールを飲んでやるんだろ?」



それは対ドワーフ限定のオプションというか煽りというか、有る意味で拷問というか……。




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