第87話

「そうそう、庇護氏族名だけどね、あくまでも身元保証の為の名付けだからそこまで深刻にならなくてもいいんだよ。例えばミーシャがニイトラックバーグを名乗る様になった後に庇護養親もしくは庇護養親補佐のリンド=バーグと養子縁組も出来るし、その気があれば庇護養親のパイク=ラックと婚姻も可能だ。後、何かしら有名になったら自身で決めた氏族名に変更も出来るよ」


なんだか例えがアレなんだが、まぁ、どこの馬の骨か分からない奴から、パイク=ラックさんとリンド=バーグさん認定のドワーフっに昇格できるということな訳ですな。氏族名の変更もできるのなら、それを目標に頑張ろう。


そして、ニイトラックバーグ確定かよ………


「あの、ボクが庇護養親のお二人に呼びかける時に付けるべき呼称とかってあるんですか?」


「特に無いよ。好きに呼べばいいんじゃない?それこそ “ お養兄にいちゃん ” でも “ お養父とうさん ” でも」



おっ、おにいちゃん呼びと、おじいちゃん呼びが可能ですと!!



「ミーシャ、パイク=ラックをジジイ呼びしてもいいんだって。ホーク=エーツのお墨付きだよ」


マリイン=リッジさん、それはアカンやつです。




「ミーシャ、『スワロー』に来たら儂の家に遊びに来てよいぞ。【魔多々媚またたび】細工を編むから殆ど工房に籠りっ放しじゃがの」


「ありがとうございます。それは是非とも見学しに行きたいです」


「俺の鍛冶場にも来ていいからな。いい砥石が揃ってるぞ」


「本当ですか?」


ヤバい、職校も楽しみだけど、お二人の工房見学も楽しみ過ぎる。



「パイク=ラック、『スワロー』に行かないでくれ!!」


「パイク=ラック、すぐ戻って来い!!」


「誰がエールを……じゃなくて……」



やっぱそれだよね。


「お前ら、儂を何だと思っとるんじゃ。エールを冷やしたかったら自分達で魔法系統を生やすんじゃ!!」



冷却系統って、水魔法系統から氷系統を生やすのが普通なんだよね? まれに氷魔法を単独取得するケースもあるみたいだけど。気化熱を系統に乗せるとしたら……風魔法からの派生でいけたりしない? 冗談半分で伝えたら残るメンバーが研究しないかな?


「あの……ですね、 」


俺は土魔法『土器』で素焼きの陶板を作る。


「この陶板を『汎用魔法』の『注水』で濡らします。誰か風魔法を使えますか?」


「俺が使えるぞ」


「ではジョー=エーツさん、この濡れた陶板に風を当てて下さい」


「いいぜ」


「マリイン=リッジさん、その陶板を触ってみて下さい」


「いいけど。……えっ!? 何か冷たい!! ミーシャ、これは一体どういう事?」



気化熱…と即答はできないので何と説明するか………



「あの、鉱山を掘ったり、炎天下で畑仕事をしたり、鍛冶場の炉の前で作業をして汗だくになった後、風に当たって身体が冷えた経験ってないですか?」


「有るな」


「有るよ」


「それと同じです。濡れた物に風を当てたら熱が奪われるみたいなんです。この現象からどうにか冷却系統を生やせれば……」


「風魔法から生やせるかも、 か!!」


「水魔法は無くても『汎用魔法』の水系統から繋がるな」


「俺たちドワーフは鍛冶やら鉱山作業やらで風魔法持ちは多いし、最悪『汎用魔法』の『微風』や『換気』や『空調』から持っていけるな」



「ちょっと待って!! 研究はいいけど、その理論は学園に報告させて!! ねぇ、ミーシャって何者なの?」


「ミーシャはミーシャだよなぁ…」


「これがミーシャなんだよ」


「やらかしっなんだよ…」



何とか誤魔化せたけど、もしかして今回もヤバかったのか? 







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