第80話

棺桶って……、三毛皇みけおうさん、だいぶお年を召しているのだろうか? それよりパイク=ラックさん、木工だけでなく籠細工も出来るんだな。



「で、ミーシャのしていた作業じゃが、あの焼印は何じゃ?」


パイク=ラックさんの質問は土器製の刻印についてだった。よかった、日本語バレてない!


「あ、あれは【鉱夫飴】の一件が決まった後に、元祖の印というかボクが関わってます刻印を考えまして、玉を持った黄金虫スカラベのマークを作ってみました」


「よいんじゃないかの。職人が作品に銘を打つのは当然じゃからな。暫くすれば【鉱夫飴】も世界に広まるじゃろうて。また題材がよいではないか。注目されないイモが丸い飴になって絶賛される、まさに【鉱夫飴】そのものじゃ」



はは……、何か上手くオチが付いてるし(苦笑) 本当は前世の黄金虫の童謡が由来です。元日本人の転生者なら黄金虫と水飴の元ネタ分かるよね? …ってだけです。



「でも何でまた急に三毛皇みけおう閣下にプレゼントを渡そうと思ったんじゃ?」


「あ、それは……、珍しい甘味の先行投資というか。猫の人側が謎の品だと怪しんだとしても、対物鑑定を掛ければ正体は判明しますし」


ちょっと強引かな。


「儂が一筆入れるにしても強引過ぎるぞ」


ですよねー。


「でも、水飴と【鉱夫飴】、パイク=ラックさんを評価して下さった三毛皇みけおう様に食べてもらいたかったんです」


後付けした理由はともかく、どんな人かは知らないけど、同じ異世界転生者で元日本人(推定)に甘いお菓子を食べてもらいたい気持ちは本当なのだ。会ってみたい気もするけど、会わないほうがいいのかもしれない。




「持たせたの。これを三毛皇みけおう閣下に渡してもらえぬか?」


そう言ってパイク=ラックさんがモーリッシュさんに書簡と水飴の木箱を預ける。


「了解致しました。で、この箱は一体?」


「それはだな、そこにいるミーシャが三毛皇みけおう閣下に食べていただきたい品を詰め合わせたものじゃよ。中身の安全性は儂が保証する。まぁ、不安なら到着してから中身に対物鑑定を掛けてもらえばよいじゃろうて」


「承りました」


「後、『スワロー』にある儂の家にこの手紙を配達して欲しいのじゃが」


「承りました」


「配達代金と、後モーリッシュ殿には手間をかける故、御駄賃を渡そうな」


パイク=ラックさんはそう言うと、モーリッシュさんに代金とフェザースティック状のネコジャラシを渡す。


「にゃにゃっっ!! これは、“ 名誉猫人 ” 様謹製の【魔多々媚またたび】スティック!!」



あ、モーリッシュさんが駄目猫になってるし。



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