第77話

「こいつが件のミーシャだ」


ジョー=エーツさんが俺のことを審査官達に紹介する。


「初めまして、ボク、ミーシャと言います。僻地から出て来て今はこの集落にお世話になっています」


そう言うとペコリと頭を下げる。ドワーフが三人と、箱の付いた棒を肩に担いだ黒猫の獣人が一人いた。


「初めまして。俺はホーク=エーツだ。そこにいるジョーの弟で、ドワーフのギルドや商会、学園等に関わる案件、つまり新製品や新発明や発案等の審査・登録に関わる業務担当員をしている」


多分、ジョー=エーツさんに似てるんだと思う。顔かどのくらい似てるのかは髭のせいでよく分からないけど瞳の色とか髪の色とかは同じだ。


「全く兄貴は人使いが荒い……」


ホーク=エーツさんがブツクサ言ってる。


「俺はレオナルド=ダービー。鍛冶師のダービー氏族の出だ」


「僕はダン=カーン。カーン氏族は鉱山採掘と陶芸が専門だよ」


お互い頭を下げ、始めましての挨拶を繰り返す。



「で、そちらの猫の人は配達か? その配達ボックスを持ってるってことは【黒猫印の配走便メッセンジャー】の人だろ?」


獣人さんがBOX持ってます。偶然でなければどう考えても異世界転生した元日本人の考案した仕業でしょ?それより、なんでこの猫獣人さんは縦書きの日本語が書いてあるTシャツ着てるの!?



『 異世界転生したっていいじゃない

  猫獣人だもの

            ミケヲ 』



これ……どう見ても、居酒屋の手洗い場とか、お婆ちゃん家の電話台の前とかに貼ってあったりするポエムのノリなんだけど……。



「失礼しました。ワタクシ、【黒猫印の配走便メッセンジャー】のモーリッシュと申します。こちらの集落に “ 名誉猫人 ” 様がいらっしゃるとのことで…」


業者名もTシャツも気になるけど、“ 名誉猫人 ” って何??? 俺、情報過多に付いて行けないんだけど!!



「おーい、パイク=ラック、客人だ!!【黒猫印の配走便メッセンジャー】が来てるぞ!!」



眠そうに目をこすりながらパイク=ラックさんが家から出てくる。酒量はともかくここのところ魔力消費量が半端ないからなぁ…。



「ん? 黒猫印の猫の人が儂になんの用じゃ?」


「 “ 名誉猫人 ” のパイク=ラック様で間違いないでしょうか?」


「いかにも」


「こちらをお受け取り下さい」


猫獣人さんがパイク=ラックさんに書簡を渡す。


「ふーーっっ、お仕事完了にゃ」


いきなり口調変わった!? やっぱり猫獣人の語尾は「にゃ」なの!?


「どうしたミーシャ? 顔色が悪いぞ」


「あ…、ジョー=エーツさん、ボクは大丈夫です。ちょっと情報が多すぎて……。モーリッシュさんの所属とか、着てるTシャツとか、口調とか……、パイク=ラックさんが “ 名誉猫人 ” だとか………」


「オレの着ている制服はだにゃ、偉大なる猫の王の “ 三毛皇みけおう ” 様が作られたのにゃ。三毛皇みけおう様は異世界からいらしたのにゃ。その時の気持ちをシャツに異世界語で記したものなのにゃ。三毛皇みけおう様は我々猫人に色々教えてくれたのにゃ。配走便メッセンジャーの仕事も考案してくれたのにゃ。黒猫人がこの制服を着てこの配走BOXを持ってると、配走便メッセンジャーの仕事中だと分かってもらえるのにゃ」


あーー……、雄の三毛猫なんだ。それで三毛雄→ミケヲなんだな。クロネコ飛脚といい、縦書き日本語ポエム制服とか、どう考えても、おっさん転生者かじじい転生者の仕業じゃないか。


「凄い方なんですね」


「そして口調はだにゃ、三毛皇みけおう様が「仕事の時はキチンとした言葉にするものです」と言われたのにゃ。今はお仕事オフタイムにゃ」


あれかー、メディアに出演中は「ぎょぎょぎょ〜〜っ、で御座ぎょざいます」な口調の人の逆かー。




――――――――――――

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