第52話
「おっ、バサルトタートルか」
「パイク=ラックさんと【渓流鰮】を獲りに行った時に拾ったんです。初めて触った素材だったので試行錯誤しながら磨いていたら割れちゃいました」
「磨いたって、まさかそのまま研磨したのか?」
あ、そのまま研磨しちゃ駄目な素材だったのか。
「『対物簡易鑑定』でバサルトタートルの甲羅なのは分かったんですけど、ボクは使い方は知らないので『研磨の心得』の表示を頼りに思うまま磨いてみました。そうしたら割れました」
「まぁ、普通に研磨したらそうなるな。バサルトタートルの甲羅は魔物素材加工用の特殊なポーションに漬けてから軽く暖めて歪みを取り、それからごくわずかの魔力を流しながらゆっくりと研磨しないと割れるんだよ。そこは『研磨の心得』だけでは情報不足だから仕方ない。逆に前処理をしないでここまで研磨できるのは中々のものだ。それにこれは古くなっている子供の甲羅だから通常使う素材より脆い」
あ、磨けない品質だったのか。それよりリンド=バーグさんに褒められたのが嬉しい。
「まぁ、これは俺に預からせてくれ」
リンド=バーグさんに甲羅を預けた後は、本日最大の緊張タイム到来。深呼吸をして気持ちを整えて、研磨した魔石を取り出す。
「これ、小さな魔石滓を拾ったので興味半分に研磨したものです。ボク、面白そうな素材を手に入れたら研磨しちゃう癖があって…」
「ミーシャ、普通は魔石滓は磨かんぞ」
「使い終わった魔石滓は回収業者に渡すと錬金術ギルドに売られていって、そこで特殊ガラスに加工されるものだからな。そこにあるポーション瓶とかになる訳だ。数が貯まれば小遣い稼ぎになる物を普通は磨かないものだ」
えっ、魔石滓ってそんな風にリサイクルされてたの!?
「魔石滓はゴツゴツしてなかったか? 磨くとこんな風になるんだな」
「あ、でもボクの持ってる砥石が中砥までなのでこんな感じなだけです。仕上砥で丁寧に磨いたらもっと綺麗になると思います」
さり気なく仕上げをしてみたいアピールをしておこうかな。
「ミーシャ、あの【渓流鰮】の時に拾った魔石滓は二つじゃったハズじゃが」
パイク=ラックさん、何で知ってるの!!
「そ…、それなんですが…………」
コトッ。魔力を流してしまった研磨済み魔力滓を取り出す。もう、どうにでもなれ!!(苦笑)
「んーーーーーー!?」
「はぁーーーーっっ!?」
「これは何じゃーーーーー!!!! ゲホッ ゲホッ!!」
あー、やっぱり。パイク=ラックさんなんか絶叫しすぎて噎せちゃってるし。そして皆の目が怖い。
「これ、研磨の終わった魔力滓を光に翳して見ようとした時に、何をどう間違ったのか軽く魔力が流れてしまって、そうしたらその魔力が魔石滓にチャージされたみたいでこうなりました」
どうしてこうなったか、俺の方が知りたいし!! この中で誰か知ってるなら説明してーーー!!
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