第49話

「これがボクの保有スキルです」


そう言うと【二視・簡易】のスキルオーブを手渡す。


「じゃあ俺から見るぞ。順番に回すから皆慌てるな」


ジョー=エーツさんがスキルオーブ発動させる。えっ、皆に回せるの!? 【二視】って二回のみ使用可ってことじゃなかったの!? いや、いいけど……。



「なるほどな」


苦笑いしながらスキルオーブを次に手渡す。「俺だ」「儂じゃ」と騒々しいおっさんドワーフ達は閲覧する度「マジかー!?」「これは!?」と大興奮。取り敢えず情報の共有が終わったところでパイク=ラックさんが声をあげた。


「ジョー=エーツ、ミーシャがお前の隠し子と言っても誰も驚かんのぅ」


「俺の隠し子より、ファイン=ロックの年の離れた妹だろ?」


「ミーシャは『料理研究レミレシピ』持ちだったんだな。それなら芋麺や【鉱夫飴】を考案したのも納得だ」


うんうんと頷くおっさんドワーフ達。勝手に納得してるところすみません、そのスキルは飴を作ってから生えました。


「てっきり『発案』スキルを持っているかと思ったのじゃが」


「農業や植物関連のスキルも持って無かったな」


「それがミーシャの不思議ったるところだな」


「全員、賭けが外れたと言うことでチャラでいいか?」



どうやら俺の保有スキルの内容当てで賭けていたらしい。まぁ、賭けの配当は酒か、冷やしエールなんだろうけどね。



「うーむ、この感じだと、スキルを活かして直に働きたいのなら採掘・建設系か、しょう鍛冶師に弟子入りして研磨系の技術を磨きながら他のスキルを生やしてゆく…といったところか」


「いや、この保有スキルでをやってのけたんだ。職校か学園で学んだら末恐ろ…いや頼もしい限りだろ」


ジョー=エーツさん、今、末恐ろしいって言おうとしたよね。



「なに、100歳くらいまで修業に勉学に励んで貰って、独り立ちや冒険者デビューはそれからでも遅くないだろ?」


「たしかに40、50の洟垂れ小僧が冒険者とか、危なっかしくて見ておれん」


ドワーフ界隈だと冒険者デビューは60歳くらいからが一般的なんだとか。ドワーフの寿命はヒト族の約三倍なので慌てて戦闘・探索に生命を掛けなくてもよかったりする。ちなみにエルフの寿命はヒト族の約五倍だ。


別にドワーフやエルフの幼少期が長い訳ではないのだが、魔力体力の乏しい十代・二十代に冒険者稼業をスタートさせる必要もなく、安全マージンを取る訳ではないが、長い寿命を活かして有効スキルや魔法を十分に取得してから探索や冒険に進むのが常だ。


まぁ、ドワーフの場合、髭が生えてくるのが目安になってるけどね。



「俺らだけで盛り上がってても駄目だろう。肝心のミーシャの意見を聞いてやらないと」



まぁ俺の中では進路は決めてある。職校で生産スキルを増やしてからの学園で魔道具か錬金術を学ぼうと思っているんだ。そして作った装備品や装飾品や魔道具に、自分で磨いた宝石や魔石を嵌め込みたいんだ。


「ボク、職業訓練校に行ってみたいです。それと、スキルの伸び次第では学園でも学んでみたいかな…。やっぱりドワーフだったら皆さんみたいな凄い職人さんになるのに憧れますから」



あっヤバい、俺の今の発言で、この集落で唯一職人さんでないジョー=エーツさんに何となく寂しそうな表情をさせてしまった!!



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(誤)役五倍 →(正)約五倍

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