第45話
「養子縁組と庇護氏族の話は理解しました。それと、さっきから話に上がっている登録についても教えて貰えますか?」
「ここで言ってる登録というのは、あくまでもドワーフ内で通用する新技術の発案者や権利なんかをドワーフ主体の生産・商工ギルドで把握し記録する事を指すんだ。ヒト族のギルドで行われている特許登録と違って、特に特許使用料とかが入って来る訳ではないがな。ドワーフは製造だけでなく、発明やら発見やら改良・改造やらが好きだからな。
成る程、町の発明王のノートに記帳的な感じなのね。
「ジョー=エーツさん、凄い技術とかをヒト族のギルドに売り込みには行ったりはしないんですか?」
「そこは何かと面倒くさいんだよ。勿論、ヒト族の流儀に則って特許の申請登録を掛ければ通ることは通るんだが、ドワーフ的に秘匿しておきたい技術もあるからな。さっきも言った通り、ヒト族に因縁を付けられてもドワーフ側ではずっと前から登録されていると返せばいいし、記録自体は、ヒト族・ドワーフ族、エルフ族を中心とする亜人族・獣人族・竜人族・精霊族・魔人族で共通の『改竄出来ない書式』で記入してあるから、ヒト族側に記録を鑑定させれば八割方は諦めてくれるな」
交渉事の得意ではない職人が言うならまだしも、交渉事や荒事担当らしいジョー=エーツさんがそう言うんだから相当面倒くさいんだろう。
「今回の【鉱夫飴】に関しては生産・商工ギルドから報奨金が出る可能性があるぞ」
まじで!?それって凄くない?
「それはそうと、ミーシャ、冷やしエールに関わってくる話なんだがミーシャの意見を聞いてみたい」
「ファイン=ロックさん、ボクなんかでいいんですか?冷やしの件ならパイク=ラックさんの方が適任なのでは?」
「いや、秘匿魔法を使わないで冷やしエールを楽しむ方法を考えたくて、ミーシャの意見を聞いてみたいんだ。ミーシャならどういった方法を考える?」
「そうですね、樽ごと冷やす方法だとドワーフみたいにガンガン飲むならいいんでしょうが、ヒト族とかだと飲み切る前に温くなっちゃいそうなんですよね。それよりなら、ジョッキ単体で冷やした方が管理しやすいと思います。通常のジョッキと冷やせるジョッキとで違いが分かればお客と店とのトラブルも回避できそうですよね」
「ん?何でいきなりヒト族の酒場の話になったんだ?」
「あ、秘匿魔法を使わないという事だったので、ヒト族に気付かれない方法が必要なのかな?って思いました。酒場はまぁ、酒と言ったら酒場で使うのかな?って」
何だろう?テスト的な何かなんだろうか? それともプレゼン要求なの!?
「ファイン=ロックさん、ジョッキ型の冷却魔道具って存在してます?」
「いや、無い。ジョッキ程度の大きさの物を冷やす魔道具は
「氷魔法って使える術者は少ないんですよね」
「そうだな。氷魔法の『氷冷』以外で物を冷やすなら『冷却』だ。冷却は水魔法から派生もするが、得意とする術者は少ない方だな。大体、氷系の魔法が使える奴は現役で冒険者をやってるだろうから、酒場でエールは冷やさないだろ」
ですよねー。酒場でエール冷して魔力枯渇とか嬉しくないし、その方法で魔力量を増やすトレーニングとか絶対にしたくない。
「だったら、特注のジョッキに氷冷の魔法陣を刻むとかはどうです? 木製や土器製ならジョッキ自体の単価は下がりそうだけど、頑丈さを求めるならコストは上がるけど金属製にして…、あ、金属製なら氷冷の魔法陣だと唇が張り付きそう。だったら中空のジョッキにしたら冷却の魔法陣でもよさそうだし……」
「中空の金属製ジョッキか。中空の椀や炭掴みは作ったことがあるが、中空のジョッキを作るのは初めてだ。素材は亜鉛にするか、ヒト族に売り付けるならば見た目重視で真鍮がいいのか…」
金属製ジョッキに反応してガルフ=トングさんが乱入してきたー!!
「ヒト族に売りつけるならどっちの金属でもでいいんじゃないか?魔法陣を使うのは良い考えだが魔力のチャージやメンテナンスはどうする?俺達は魔法陣にはそこまで詳しくないぞ」
「ボク、魔法陣とかよく分からないので思い付きで話すんですけど、魔法陣って使用回数の上限って有るんですよね? もし上限があるなら十回冷やしたら発動しなくなる様にして、そうなったらまた魔法陣屋さんに描き直して貰う様にすれば魔法陣屋さんも儲かるんじゃないです?」
「いい案だ。どうせならチャージ切れのジョッキが使えなくなる様に、チャージが切れたら取っ手も消える様にするか……」
俺、
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