第14話 燃える船

 「だ、ダメだ!! もう、こんな国にはいたくない!!」


 蟻と蟻人間が暴れて貴族や国民達は国を捨てて逃げていく。


 国の出入り口である門は開かれており、次々と国民や奴隷が逃げていく。


 蟻達の狙いは弱者を虐げる者に限定しており、権力者や兵士の脳を操り悪しき者を狙って攻撃していた。


「この、蟻どもが!! 人間様をなめるなよぉ!!」


 飛び交う蟻達に向け殺虫粉をかける民もいたが、蟻達が殺虫粉を克服している事に気づいてなかった。


「ぎぁぁ!! 蟻が、頭に!! いでぇ…ぇ…」


 抵抗するも者の脳を蟻に支配されて蟻人間が増えていく。


 蟻達から逃げるために家や倉庫などに立てこもる者もおり、港にいた兵士達は船の中に逃げ込んでいた。


「うぁぁ!! は、早く閉めろぉ!!」


「くそぉ!! 落ち着け!! っと!!」


 船番をしていた兵士達は船内の部屋に閉じこもった。


 蟻達が人を食らい、白目を向いて武器を持った仲間達が襲いかかり国は地獄と化していた。


「はぁ、はぁ…そ、そうだぁ!! このまま船を動かして港から離れよう!! 」


「馬鹿!! 甲板はもう蟻と白目向いた奴らがうじゃうじゃいるんだぞ!? どうやって帆を広げて碇を上げるんだよ?」


 出航準備している間に殺されてしまう。


 今はどこかに閉じこもり様子を見るしかない。


 「なぁ? そういえばこの部屋ってなんだ? 食糧庫か?」


 「え? あ、ここは…」


 蟻や仲間達に追われて急いでいため、何の部屋か分からず入ってしまった。


 「お、おい!! この部屋ってまさか!!」


 部屋の中には大量の木箱があり、カンテラで木箱の中を見ると火薬を入れていた麻布が入ってあった。


 カンテラを持っていた兵士は慌てて木箱から離れるが、突如体中に痛みを感じて声を上げた。


「いたぁ!? な、なんだ…?」


 カンテラを持っていた手の甲にも痛みが走り、目を細めて確認すると小さく黒い物が皮膚を食い破っていた。


「う、うぁぁぁ!! あ、蟻がぁ!! 蟻がぁ!!」


 食い破られた手の甲を見て手を兵士は慌ててカンテラを持つ手を振り回した。


「や、やめろ!! 火を落としたら爆発するぞぉ!? って、うぁぁぁ!!」


 カンテラを振り回し部屋中が照らされて兵士達が悲鳴を上げた。


 床中に黒蟻達がおり、兵士達のブーツをよじ登り顔や耳にかみついていた。


「うぁぁぁ、蟻が、蟻が!! うぁぁぁあ!!」


 黒蟻達の体には火薬がまぶしてあった。


 カンテラを持っていた兵士が蟻達の攻撃に倒れてしまい、火薬まみれの床にカンテラが落ちた。


 ドォォン!!


 部屋にあった大量の火薬が引火して大爆発が起きた。


 保管室には炭になった兵士の死体が転がり、船は燃え盛る焚火と化した。


 しかも、港には小島侵略のために多数の船も並んで停泊していたため爆発の炎が隣の船に燃え移る。そして、全ての船には奴隷達を酷使して運ばせた火薬が保管されており連鎖的に爆発が起きた。


「あ、あぁぁぁ…」


 港には船を使い逃げようとしていた国民達がおり全員顔が絶望に染まっていた。


「そんな、これじゃ…俺たちどこに逃げればいいんだよ…」


 脱出路である船を失ったことで絶望に泣き叫ぶ者もいた。


「あんまりだぁ!! 神様!! こんな、こんな現実があってたまるかよぉ!!」


 自分達は何をしたと言うんだ? 


 嫌だ、蟻に食われて死にたくない。


 これまで他国を支配して手に入れた豊かさに堕落し奴隷達の命を弄び貪り続けた者達。


 今度は自分達が命を貪られる番になり絶望の断末魔をあげるのであった。


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