第11話 蟻人間
軍が小島へ侵略する前日の夜、蟻達の報復が始まった。
夜中で寝ている者の耳の穴に入り、内臓や器官を食われて悲鳴を上げる者が増えていく。
国中で蟻が人々を襲い騒ぎに気付いた兵士や騎士たちが貴族や権力者を守るために殺虫粉を振りまくが蟻達に効果がなく焦っていた。
「くそぉ!! 全然効かねぇぞ、この粉!!」
「まさか偽物を買わされたのか!? くそぉ!! グリーンのクズがぁ!!」
グリーンが殺虫粉を偽物と混ぜて売却していた事は既に国中に知られていた。
王や貴族達はグリーンを処罰しようとしたが既に国外へ逃げてしまった。
どれが本物の殺虫粉なのか見分けがつかず、兵士や騎士はひたすら粉を撒く。
だが、蟻達は既に殺虫粉に免疫を持つほど成長しており彼らの行動は無意味だった。
「こ、この役立たずどもがぁ!! たかが、蟻に何をして…ぐぎぃぃ!?」
兵や騎士らに怒りをぶつけていた貴族の男が頭を抱えて倒れる。
(あ、頭の中にな、なにかが、ぁあ…)
脳内に侵入した羽蟻が貴族の男の脳の神経を踏み荒らし、記憶や感情をつかさどる部分に噛みつと貴族の男の意識が途絶えた。
「●●様!! 大丈夫ですか!? 」
倒れた貴族の男を騎士が介抱する。だが、貴族の男は白目を開き立ち上がった。
「●●様、どこが具合でも…」
悪いんですか? そう聞こうとした瞬間、騎士の顔が殴られる。
「ぐげぇ!!」
「ははっ、あっははは!! 死ね、死ね!! 我らの領域を犯した愚か者どもよぉ!!」
騎士を殴り倒した貴族の男は白目を向いて叫び、殴り倒した騎士から剣を奪い兵に襲いかかる。
「お、おやめください!! ●●様!!」
「●●様がご乱心されたぁ!! 誰か止めてくれぇ!!」
有力貴族の突然の乱心で騎士や兵士達が悲鳴を上げた。
権力者を殺せば自分が処刑される。
自分が罰せられるのが嫌で羽交い絞めにして抑えるが、蟻の脳内操作により興奮作用の脳内物質が分泌されて肉体が強化されていた。
「はっはは!! しねぇ、しねぇ!! 我が領域を犯した愚か共がぁ」
肉体操作による強化で筋肉や骨が悲鳴を上げるが、蟻に支配された者は意識も痛覚もなく、ひたすら兵士を殺していく。
蟻人間による暴動が国中で起き、乱心した者を抑えるのと蟻の対応で兵士や騎士たちは限界に達していた。
人間へ復讐すべく成長してきた蟻達は新たな力を得ていた。
人間の体を食らう内に人体構造を学び、どこを破壊すれば動けなくなるか、どこに入りこめば人間を操ることができるのか習得していた。
脳内に侵入し人間を支配し攻撃することで、敵を混乱させて戦力を疲弊させる。
人間の知恵と知識を得た殺人蟻達は効率的な戦争の方法を編み出していた。
操った人間を使い、次々と人間を殺していく。
反撃で体中を剣や槍で腹を刺されようが、脳内の蟻さえ無事ならば手足を切り落とされても戦える。
まるでゾンビのような蟻人間はさらに増殖していき国中に戦火が広がっていく。
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