第10話 目覚める意思
ここは、どこだ?
手や足の感覚がない、自分が立っているのか倒れているのかもわからない。
自分が誰だったかもわからない。
真っ暗で何もない世界で何かが自分の中に入り込んでくる。
「地の神よ、我らを救いたまえ」
どこかで聞き覚えのある声が誰かに助けを求めていた。
武器を持った男達に虐げられる人々の姿が目に映る。
島中にいる蟻の視界を通し、武器を持った男達が女子供へ乱暴しているのを見て怒りが芽生えると、蟻達が男達を食らい始めた。
侵略者達の肉体を食らい、奴らの意識や記憶が自分の中に入り込む。
二人の貴族の男は、どうやって仲間を出し手柄を立てるか邪な思考しかなかった。
手下の男達は、馬鹿貴族のお守りをさせられた鬱憤を島の人間で晴らしていた下劣で醜い奴らだった。
奴らの言葉や文字、国の情報を手にして知恵が生まれた。
奴らを根絶やしにしなければ仲間がまた来てしまう。
船の中には囚われた女達がおり、すぐに男共を食らいたかったが殺虫粉を受けて船に乗り込んでいた蟻が死んでいく。
このままでは女達を助けることができない。
男達を食らい賢くなった蟻達は、殺虫粉で死んだ同胞を食らう。
同胞の死骸を食い、蟻達の中で殺虫粉に対して免疫がついていく。
船が国につき蟻達は国中に散らばった。
女達がどこに連れていかれたのか、敵の数はどのくらいなのか?
蟻達は国中に巣穴を作り人間や動物、他の虫を捕食しながら卵を産み繁殖していく。
羽蟻に成長した蟻は城に入り情報を集め始めた。
醜い王妃が甘いケーキを貪り島から奪った鉱石で作られた指輪を見て不気味に笑う。
王と貴族達が欲と利益のために島を襲う計画を立てていた。
蟻達はこの国の者全てを滅ぼそうと考えるも虐げられ亡くなった奴隷達の血肉を食らい彼らの記憶や思いが蟻達に入り込む。
こんな地獄は嫌だ。
助けて、この苦しみから解放して。
誰か、あの王や貴族達を倒して。
誰でもいい、神様どうか…
虐げられている者達の思いを受け止めた蟻達は考えた。
倒すべき敵は虐げられている者ではなく愚かな支配者たちだ。
船が出発する前日の夜、檻の中で女達が男の奴隷に襲われているのを見て蟻達は動きだした。
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