第2話 三人の貴族
屈強な男達による侵略は数時間で終わった。
小さな島には集落は一つしかなく、しかも現住人たちはろくな武器がなく集落の中心に生き残った若い男や女子供が集められていた。
突然の襲撃を受け大切な家族や仲間を理不尽に殺された彼らは怒りや悲しみを男達に向けるしかできなかった。
「うっは、このリンゴうめぇ!! 肉も酒も、国の安物なんかより良い物がそろってんなぁ!!」
現住人たちが汗水働いて蓄えた食料を貪りながら男達は駄弁っていた。
「あぁ、うめぇうぇめ!! っと、それにしても、ここはなんでの蟻の刻印だらけだ?」
「もしかして、こいつら蟻を祭ってるっとか?」
男達は木材で作られた家や道具に刻まれている蟻の刻印を見た。
「蟻を神って…こんな世界に神なんているわけねぇだろうが、いつの時代だよ」
「まぁ、今度はあいつが俺らのために蟻になるからいいかぁ」
男達はふざけながら丁重に作られた蟻の像を破壊すると住人の何人かが怒り狂い立ち上がる。
「うるせぇんだよ!! 何言ってんのかわかんねぇんだよ、奴隷どもが!!」
「人間様に蟻語なんて通じるわけねぇだろうが!!」
向かってきた者達を容赦なく殴り蹴り、動かなくなるまで暴力を振るった。
その後、大船から3人の貴族を乗せた小舟が小島にたどりつく。
「レッド様、ようこそ。お待ちしておりましたここはもう制圧はすみました」
「ブルー様もグリーン様もお待ちしておりました…」
赤、青、緑のそれぞれ豪華な服を着ている貴族の男は、腰を低くして話しかける手下たちを嫌な顔をして無視した。
この三人は探検隊の長達で貴族だった。
無能のくせにプライドだけは高く、問題を起こしても金と権力を使い誰も咎められる事もなく王や他の貴族たちの悩みの種だった。
王や貴族たちはどうにか知恵を絞り、三人を遠くへ追いやる方法を考えた。
それが、未開の地への探検隊だった。未開の地を探し国に貢献すれば英雄だ、国の誇りだと大いにもてはやし最初は拒否していた3馬鹿をどうにか国外に追いやることができた。
未開の地などそう簡単に見つかるはずがない。最悪、嵐に飲まれて船と一緒に沈むかして死んでくれれば都合が良かったのだが、運悪く自然豊かな未開の地を見つけてしまった。
三人の馬鹿はこれで国に戻れば俺たちは英雄だ、毎日贅沢に暮らせると大はしゃぎするが手下の男達全員は労いの言葉すらない三人の馬鹿に白い目を向けていた。
「…っ~~」
侵略者たちに向け現住人達は
「地の神よ、我らを救いたまえ」
侵略者達に向け怨嗟を込めてつぶやいていた。
殺された者達の恨み、悲しみの涙や暴力により流れた涙や血が地に流れて吸収されていき地の底にて黒い蟻たちが蠢いていた。
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