蟻が侵略者達を食らい尽くすまで

未来

1章 地の神が住まう小島

第1話 侵略された小島

 魔法は無いが神のいる世界にて。


 産業が発展した大陸の探検家達は自然豊かな小島を侵略していた。


「あっはは!! 見ろ、食べ物も女もいっぱいあるぞ!!」


 浜辺から離れた場所に大船が停まっており、小舟を漕いで小島まで漕いできた半裸の男達が叫んだ。


 男達は普段から貴族たちに顎で使われており日頃の鬱憤晴らしに斧や剣で小島に住む者を殺していく。


 平和に暮らしていた現住人達は悲鳴を上げて逃げるが、小さな島には逃げ場はなかった。


「おいおい、男は残しとけよ。ここは、これから俺らの国にもなんだから」


「はいはい、奴隷は多くいた方がいいんだろ? けどよぉ、貴族共ばかり美味しいところばかりずりぃだろ? だからさぁ…」


「あのバカ貴族どものおもりなんて貧乏くじ引かされたんだ、俺たちにも美味しいところがねぇとなぁ? 」


 大船で肉とワインを貪り侵略が済むまでのんきにしている3人の貴族を男達は嫌っていた。

 どうせ、この島を支配した後は貴族たちが命令を下し男達はまた蟻のように働かされる。


 だから、貴族たちが来る前に美味しいところは取っておけ。


 男達は言葉のわからない現住人をゆっくりとなぶり、抵抗する女子供を力づくで抱いた。

 ゆっくり、ゆっくりと時間をかけて性欲と食欲、憤怒を晴らしていく。


「リア、逃げろ!!」


「ユート!! いやぁ!! 助けてぇ!!」


 逃げる現住人の中で二人の若い男女が屈強な男達に捕まっていた。


「おぉ!? こっちの女はすげぇいい顔じゃねぇか、それにすげぇいい体で…」


 黒い髪に褐色の肌を持つリアは男達に手と体を抑えられて動けない。十代後半で腰や腹は細く、胸も大きい。さらに、半裸に近い衣装を着ており本国に持ち帰れば、踊り子をさせようが性的な処理をさせようが絶対に売れそうだった。


「くっ!! リアを離せぇ!!」


 一方で男達に羽交い絞めされている黒髪の少年は必死にリアに向け手を伸ばした。


 「あぁ!! うっせぇなぁ!! このガキ!! 何言ってんのかわかんねーよ!!

 この女は今日から俺のだ!!」


 「何言ってんだてめぇ? こんないい女、独り占めする気か!?」


 男達はリアを自分の物だと言い争い始める。ユートとリアは男達の言葉はわからないが、リアの体を見る男達の邪悪な目を見てユートはリアの危機を感じて抵抗する。


「リア!!」 


 大事な恋人を略奪者の好きにさせたくない。


 ユートは暴れて羽交い絞めにしている男達から逃れようとした。


 「あ~くそぉ、うるせぇなこいつ!!」


 「おい、一人ぐらい殺やっていいだろ?」


 ユートを羽交い絞めにしていた男がナイフを出し、ユートの背中に深くナイフを刺した。


「がはぁ!!」


 背中に痛みと熱が走りユートは倒れる。


「クソがあぁ!! 無駄な時間と体力を使わせやがって!!」


「おらぁ!! 蟻みたいに潰れてろ!!」


 倒れているユートに向け男らは力強く蹴り、硬い棒で殴る。


「いやぁぁ!! やめて!! ユート、逃げてぇ!!」


 手を伸ばしユートに近づきたくても男達に連れて行かれるリア。


 「リ、ア…ぐぁ!?」


 連れて行かれるリアに向け手を伸ばすが、力強く踏まれて伸ばした腕の骨を折られてしまった。


 背中から大量に血を流し、固い棒で頭を砕かれてユートは動かくなった。


「リ、あ…」


 男達は動けなくなったユートを放置し去っていくと、リアの叫び声が聞こえた。


 体中の痛みよりも恋人で結婚を約束した大事な人を守れなかった悔しさや怒りで涙が流れる。ユートから流れた血と涙は地面の小さな穴にしみ込んでいく。


「たす、けて…」


 ユートだけでなく突然平和を奪われ傷つき倒れた現住人達は「助けて」と声を上げ、地中に蠢いていた物が動きだす。


 薄れる意識の中、ユートの目の前にある小さな穴から小さく黒い蟻が出てきた。


(神よ、お願いです…リアを助けて…僕はどうなってもいいから、リアを…皆を…)


 心の中でつぶやいた後、ユートの息が止まった。


 地面の穴から次々と蟻が這い出て死したユートの口や鼻の中に入っていき鋭い牙で口内の肉や鼓膜を食い破り、血を啜っていく。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る