第12話 七大国の特徴と勢力図の把握

鉄槌王国の転覆から数ヶ月が経過した。

寛人たちは、新生エターナリア共和国の中枢として、国家再建に奔走していた。


春の陽気が漂う議事堂の一室で、寛人は大きな地図を広げていた。


「ふぅ...」


寛人は深いため息をつく。額には薄っすらと汗が浮かんでいる。


「どうしたの、むげんちゃん?」


ミーナが心配そうに寛人の肩に止まる。彼女の翅が、かすかに光を放っている。


「ああ、この大陸の勢力図を見てたんだ」


地図には、七つの大国が鮮やかな色で描かれていた。それぞれの国境線は複雑に入り組み、まるで生き物のように蠢いているかのようだ。


「へぇ、七つもあるんだ」

リリアが興味深そうに覗き込む。彼女の瞳に、地図が映り込んでいる。


「ええ、現在の情報をまとめましたわ」

エリザベートが一連の資料を手渡す。彼女の動作には軍人らしい的確さがある。


寛人は資料に目を通しながら、説明を始める。


1. 炎竜帝国:南部の火山地帯を支配する軍事大国

- 特徴:常に活動する火山を利用した独自の鍛冶技術

- 軍事力:大陸最強と称される竜騎士団

- 統治者:皇帝イグニス・ドラゴーン(通称:炎帝)


2. 水晶王国:北方の氷雪地帯に広がる魔法国家

- 特徴:氷の城塞都市、高度な水系魔法

- 経済:魔法結晶の主要産出国

- 統治者:氷雪の女王クリスタル


3. 翠風連邦:西部の大草原を治める騎馬民族の国

- 特徴:広大な平原、遊牧民の文化

- 軍事力:機動力に優れた騎馬軍団

- 統治形態:部族長による合議制


4. 岩塊公国:東部の山岳地帯を拠点とする鉱山国家

- 特徴:豊富な鉱物資源、堅固な要塞群

- 経済:鉱物資源の輸出

- 統治者:鋼鉄公ゴラム


5. 光輪神政国:中央部の平原に広がる宗教国家

- 特徴:巨大な神殿、高度な光の魔法

- 影響力:他国の政策にも影響を与える宗教勢力

- 統治者:大神官ルミナス


6. 闇影同盟:大陸周辺の島々を支配する海洋国家

- 特徴:発達した海運技術、情報網

- 経済:貿易と情報売買

- 統治形態:商人ギルドによる寡頭制


7. 新生エターナリア共和国:かつての鉄槌王国の領土

- 特徴:急速な改革、民主的な政治体制

- 軍事力:寛人を中心とした特殊部隊

- 統治形態:議会制民主主義(寛人たちが実質的な指導者)


「なるほど...」

寛人が腕を組む。彼の表情には、複雑な思いが浮かんでいる。


「各国の特徴が際立ってるわね」

リリアが感心したように言う。彼女の目は、地図上を活発に動き回っている。


「問題は、これらの国々と魔王軍との関係ですね」

エリザベートが真剣な表情で続ける。彼女の声には、かすかな緊張が混じっている。


「そうだな。鉄槌王国だけでなく、他の国々も魔王軍と繋がりがあるかもしれない」

寛人の表情が引き締まる。


「むげんちゃん、どうするの?」

ミーナが不安そうな目で寛人を見上げる。


寛人は一瞬考え込み、そして決意に満ちた表情で言った。


「俺たちで、この大陸を統一する」


「え!?」

リリアが驚きの声を上げる。彼女の金髪が、急な動きで揺れる。


「本気ですか?」

エリザベートも目を丸くする。普段の冷静さが、一瞬崩れた。


「ああ。魔王軍の脅威から世界を守るには、大陸を一つにまとめる必要がある」

寛人は静かに、しかし力強く言う。彼の瞳には、揺るぎない決意が宿っている。


「でも、それって...」

リリアが心配そうに言いかける。


「戦争ってこと?」

ミーナが小さな声で聞く。彼女の翅が、不安そうに震えている。


寛人は頷く。


「場合によってはな。でも、できる限り平和的に進めたい」


彼は仲間たちを見回す。


「力づくで従わせるんじゃない。俺たちの理想を、大陸中に広めるんだ」


エリザベートが微笑む。


「さすがですね。私も全力でサポートします」


リリアも決意の表情を浮かべる。


「そうね。私も協力するわ」


「ミーナも頑張る!」

ミーナが元気よく宣言する。


寛人は満足そうに頷いた。


「ありがとう、みんな」


彼は再び地図に目を向ける。

そこには、七つの国々が描かれている。それぞれの国に、様々な思惑と歴史がある。

寛人たちの前には、険しい道のりが待っているに違いない。


「さて、どこから始めようか...」


寛人の指が、地図上をゆっくりと動く。

そして、一つの国に止まった。


光輪神政国——


大陸の中心に位置し、強大な宗教勢力を持つこの国。

ここから、寛人たちの大陸統一への道が始まろうとしていた。

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