本当にあった不思議な話

シモルカー

第1話 寝たふりしてんじゃねえよ(前編)

 これは、私が中学生の時に体験した話です。


 当時、祖母(存命)に黒猫のぬいぐるみを作ってもらいました。

 その頃、アニメか漫画のキャラクターでぬいぐるみを持っている女の子がいて、その子が今でいう推しだった私は、その子の真似して、黒猫のぬいぐるみと一緒に過ごしました。

 外に持っていくことはありませんでしたが、寝る時やテレビを見る時は一緒でした。


 そんなある日のことです。

 深夜2時頃、突然脳が覚醒するように目が覚めたのです。

 そして目を軽く開くか、寝返りを打つかで迷った、その時……

 大きな違和感に気付きました。

 

 ちょうど横向きになって寝ていた私の背後には、いつも一緒にいる黒猫のぬいぐるみがあります。

 だけど、そこ……つまり背後から動物の気配がしたのです。

 例えるなら飼育小屋に入った時や、犬猫を抱いた時に感じる、わずかな獣の匂い。

 それが、背後からするのです。


 黒猫のぬいぐるみがある筈の場所からする、動物の匂いと何者かの気配。


 私は目を開かず、寝たふりをして、その気配を探りました。

 だけどその時、ちょうど後ろから声がしたのです。


『寝たふりしてんじゃねえよ』


 たしかに、はっきりと声が聞こえました。


 怖くなった私は、必死に寝たふりをしました。

 そして心の中で知っている言霊や真言を唱え続けました。


 心の中で唱え続けるうちに、私は本当に寝てしまい、気付いたら朝でした。

 起きた時、夜中に感じた動物の匂いや気配もなく、ただ横向きに寝る自分の背後に黒猫のぬいぐるみがあっただけでした。


 その時の私はまだ思考が幼かったですが、幼いなりに考えたのでしょう。


 もしこの黒猫のぬいぐるみをお祓いなどに持っていけば、メリーさんのように追いかけてくるかも知れない。

 もしこの黒猫のぬいぐるみを遠ざければ、私が起きていたことがバレてしまう。


 だから本当に気付かないふりをして、今まで通りに過ごしました。

 

 それに、心のどこかに、あれは夢だったのかも知れないと思っている自分もいました。

 しかしそれは私の願望であり、それから似たような現象が3回ほど起きました。

 



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