『吹き渡れ、青』

西見伶

『吹き渡れ、青』

○青空に放つ飛行機煌めきの海を目指してただ風を待つ

○ワン・ツーで始まる僕ら輝けるタクト見つめて 吹き渡れ、青

○モノクロの風に紅葉の一枚が抗うを見る窓際の君

○水槽の外を知らないグッピーの瞳に映る夢は星色

○凍星に儚い夢を囁いてノイズキャンセル切ればさざなみ

○名も知らぬ星の間で名も知らぬ花を愛してきっと僕らは

○恥ずかしいくらいに青い君だから髪を揺らして風は色づく

○風に舞う桜拾えばからだごと染め上げられて駆け出す朝だ

○朝顔が夜の向こうに咲くのならかなしみの先信じて踠く

○星の砂小瓶の中の輝きをそっとばら撒く そして汐風

○ダ・カーポ季節が巡るその度に失ったもの見ない振りした

○あの日見た光芒だって現象に過ぎない 眠るリンドウの花

○星屑が夜に溶け出すさみしさだ クラリネットよ放て流星

○空っぽを誤魔化すように呑み込んだペトリコールの青色に酔う

○冷たくてだけど確かに愛だった雨降る夜の信号機とは

○遠く遠く散ってく僕らあの場所の勿忘草にそっと日は差す

○あの虹の暗示を想う運命は七つに割れてもう出会わない

○クレシェンド遥かな海へ。いつまでも僕らは青い夢を描いて

○水槽を仕舞う。水平線の果て酷く綺麗な夢を見ていた

○閃光。溺れるほどの雨の中叫んだ想い忘れゆく朝

○星の砂拾えば僕のてのひらに光るをやめた星空がある

○花は散り水は干上がり星は死ぬ 祈りを何に託して放つ

○確実に死へと近づくサイダーに透かして見れば全ては光

○八月の桜並木がやけに濃い影を落として終わる僕らだ

○フェルマータまた会う日まで。奏で合う祈りの風はいつまでも吹く

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『吹き渡れ、青』 西見伶 @reireinovellove

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