僕は悪魔

@Eeeta

最後の会話


「その動機はなんだ。」

 僕にそう聞くのは、閻魔、いわゆる、来世の審判だ。想像より若い見た目で、語尾に威圧的なものを感じるが、そう怖くはない。僕が若いから、少し躊躇いがあるのかもしれない。僕は、今、天国か地獄のどちらに行くかの裁判をしている。人が人生の中で犯した罪がたくさん読み上げられていく。

「時間を守らなかった。」「差別した。」「••••。」

 罪の重さは大小様々なものだが、中には、意味の分からないものもあった。あまりにも多くて最後の方は、聞いていなかった。それが終わると、それについて1つ1つ動機が聞かれていく。

「なぜ、時間を守らなかった。」

「寝過ごしたり、電車が止まったり、予定を忘れていたり……。」

「なぜ、差別をした。」

「ストレスが溜まって、感情が抑えれなくなっていたのかもしれません。」

 正直、あまり覚えてないことには曖昧な答えを返すしかなかった。

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「なぜ、吊るした。」

 僕は、その言葉を聞いて、急に生きていた頃の記憶が蘇った。それは、勉強ができ、運動もできる、いつもチヤホヤされる人間。そいつの顔は、学校や通学路やら、夏休みでさえも毎日見た。僕の1番なりたかった人間だった。それを目指して、僕は、努力した。人に褒められるように、チヤホヤされるように。毎日、自分の中でのプレッシャーに打ち勝とうとした。それでも、限界が来た。

「なぜ、泣いている。」

 その言葉で我に返った。僕は、頑張りすぎていたのかもしれない。泣き出すのも無理はない。僕は、よく頑張った。

「思い出しました。僕が自殺した理由は、僕では、僕になれなかったからです。」

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