第57話 アイスクリーム屋さんの作戦会議
早速手に入れた情報を店舗の方に持ち帰る。
「そんな……地下で強制労働……」
狐獣人の二人は特にショックを受けた様だった。
「本当なら助けに行かないと!……でも、フィリー、私には優しかったのに……本当にそんな酷いことしてるの?」
伊織は一時期親しくしていた学友の犯行に悲しそうな顔をする。
「フォクシーは何か知らないの?」
コニーが最近まで狐獣人のコミュニティーにいた筈だし、自らも北狐の血が濃く出ているのだ。
何か情報が無いだろうか。
「うーん……あ、そう言えば、お母さんから手紙来てるから読んでみます」
『空間収納』から簡素に封をされた手紙を出した。
「ちょっと!いつ届いたの?直ぐに中確認しなさい!」
コニーがフォクシーを叱りつける。
フォクシーは白い耳をぺたんとして、大きなフサフサの尻尾をむぎゅっと抱えて上目遣いで姉を見る。
拗ねてるらしい。
「届いたのはおとといくらい。だって……後で読もうと思って忘れてたんだもん」
フォクシーは尻尾を更にぎゅーっと抱きしめて、自分の顔を半分隠した。
どうやらしっかり者の姉に、のんびりウッカリな妹らしいな。
「まあまあ、良いから中身読んでみてよ。
個人的な内容だけなら俺らには教えなくても良いからな」
「はい!読んでみます!」
フォクシーが読み始める。ふむふむと言いながら、目を丸くし、手紙に顔を近づける。
手紙を顔から離して、口を開けてびっくり顔。
……いや、早く読み終えてくれ。なんだその百面相は。
「ちょっと貸して!」
コニーが手紙を奪って目を通す。そして、
「そんな……」
口に手を当てて眉を顰めた。
「何が書いてあったんだ?」
時夫は好奇心が表面に出るのを抑えつつ聞いてみる。
「北狐族の集落に凄いお金持ちの貴族の人が来て、教育を受けさせてやるって言って子供を何人も連れて行ったって。
フォクシーも学校通わせて貰えるかも知れないから、その人の家を訪ねてみろって……」
「で、その家っていうのが……」
「ゴールダマインですね」
時夫の言葉をルミィが引き継いだ。
「その通りです」
コニーの赤茶色の瞳が怒りに燃えている。
「あの、待ってください!
フィリーが、ちゃんと学校にも通わせている可能性はないでしょうか?」
伊織が学友を庇う。
お馬鹿王子の取り巻きとして、伊織を庇ってくれていた経緯があるから、証拠も無しに悪人呼ばわりは出来ないのだろう。
それが伊織自身の為になる行為だったかは微妙だし、善意からの行動だったかは置いといて、素直でまっすぐな性格の伊織は、世話になった人を悪く思いたく無いんだろう。
マジ良い子だ。
とは言え、働かせているという所は否定しないらしい。
まあ、氷系魔法無しにはアイスクリーム屋なんて難しいからな。
そして、時夫としては、伊織も『トッキーのアイスクリームファクトリー』の一員として、情を排してキッチリかっちりライバルを潰す覚悟を決めて欲しい。
「証拠集めが必要だな。
そして、売り上げアップの必要も……」
「その件なんですけど……」
コニーが困った様に眉尻を下げる。
「実は……商人たちがうちの店の材料の仕入れを断ってきてるんです!乳製品が手に入りません!」
「何だって!?」
時夫は相手の本気に驚く。
そこまでしてこのアイスクリーム屋さんを潰そうとするとは!?
「じゃあ……新たな商品開発も必要だな……。
でも、あんまり商品の方向性変えたく無いんだよなぁ。
一体何が良いか……」
うーん……と悩む時夫だっだが、
「はい!発言よろしいでしょうか!」
伊織が元気よく手を上げた。
「はい、伊織ちゃんどうぞ!」
時夫もノリに付き合って発言を許した。
「最近益々暑いじゃ無いですか?私、もう少しサッパリした物食べたいなぁって丁度思ってたんです。
……つまり、かき氷売るってどうですか?」
「採用!」
かき氷始めました!をやります!
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