一撃で十万人殺せる魔導具を回収しに来たら、無能扱いでボコられたので、最終回手前に貴様の最強召喚獣を物理で消滅させてやる
6月流雨空
第0話 無能扱いされたので、あとで潰そうと思います
どうしてこうなった──
「ぎゃははははは! おい見ろよこいつ! 誰一人召喚獣が寄ってきてねぇぞ!」
実習の授業は中庭でやると聞いてジャージに着替え直したのが二十分前のこと。
授業の内容もあらかた聞き終わり、
大声で笑われてふと横を見れば、大柄な男が目の端に涙を浮かべて大笑いしていた。
「うわマジだ! だっせぇ!」
「ここまで才能無い奴初めて見たぜ!」
ぞろぞろと、大柄な男の仲間と思われる男子生徒たち四人に囲まれてしまった。
周りを見渡せば広域ネットワークに手を掲げる生徒たちの手には赤、青、黄色と、色も鮮やかな召喚獣の光が呼応するように寄ってきている。
ただの一つも、誰一人として、閏の呼び声に応えない召喚獣たち。
彼らが笑うのも無理はない。閏のその姿は《無能》に映っただろう。
「お前誰だぁ? 見ねぇ顔だな」
「時十閏です。よろしく」
にやにやと笑う志島は大振りの手つきで閏の肩を叩いた。少し、体がよろめく。
「誰がお前みたいな落ちこぼれとよろしくするかよ! よろしくされたかったら召喚獣の一匹くらい召喚して見せな!」
「ぎゃはははは! 無理じゃね!」
「久志くんきっつー! こいつ無能なんじゃねぇの?」
「ありえる! もしくは臭いとか!」
あながち臭いという表現は間違ってもいない。
「すみません、俺は才能が無いみたいなのでお手本を見せてもらえますか?」
歯を見せて笑った志島は盛り上がる右の上腕二頭筋を見せながら力強く手を掲げた。
「いいぜ、見せてやるよ! 召喚! ウォーターフォース!」
幾何学模様の魔方陣が空中に展開されたかと思うと、魔方陣の中から肉体が水で構成された巨大な馬が現れた。
溢れだした魔力の迸りが水しぶきとなって辺りに舞った。
ひんやりとした空気の中にウォーターフォースの研ぎ澄まされた殺気が混じり、攻性魔力に耐性の無い生徒たちの間には緊張感が広がる。
閏も、視線だけはウォーターフォースの魔力量を推し量るように鋭く眼光を細めて向けていた。
だが、それも一瞬の間だけだ。閏は両手を合わせて軽快な音を響かせる。
「おお、凄い。妖精の中でも上位クラスのやつですね」
実際、ウォーターホースはB級の魔族と言われている。C級悪魔よりも力が強いので、志島は召喚士として才能があるのだろう。
しかし、にやりと笑った志島はウォーターホースを閏に仕掛けてきた。
馬に体当たりされ、閏の体は紙屑のように軽く宙を舞って地面に落とされる。
草を自身の体で潰してしまい緑の匂いが体に染み付くように感じた。顔をゆがませた閏は観衆の生徒たちにも聞こえるように呻く。
「うぅ、痛い……」
さらに土まみれでボロボロに見える体を一トン近くある重たい馬の足で背中を踏まれた。
「ぐえっ」
「ぎゃははははは! 聞いたか! カエルみたいな鳴き声だぜ!」
こういう場面ではよく氏か育ちかと耳にするが、人間の持つ被虐性と弱者を蹴落とし優位に立つ、生存本能ともいうべき性質はどちらの要素にも含まれているのだろう。
生存本能について、品性を問うつもりはない。
しかし、時十閏の中で志島久志という男は、現時点において、
(仕事が片付いたら殺しておこう……)
そう思わせるのには十分、品性のかけらもない男だった。
☆☆☆
数ある作品の中から読んでいただきありがとうございます!
物語が進みましたら今回のエピソードの真相編も描かれていきますので、ぜひ最後までお楽しみいただけると嬉しいです!(^^)!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます