嘘つき運命ごっこ

榊あおい

プロローグ

「ふゆちゃん、おおきくなったら、けっこんしようね」

 幼少期にありがちな、異性の幼なじみとの結婚の約束。

 私の答えは、最初から決まっていた。

「だめだよ。みずきくんとは、つながってないんだもん」

 バッサリと斬られたときの、“彼”の顔は、今でも覚えている。

 ――私は小さな頃から、他の人には見えていないらしいものが見えている。

 霊感なんてものじゃない。見えるのは、糸。

 右手の小指に結ばれた、赤い糸。

 繋がれた同士の人が近くにいれば、その人達の間には、運命のなんとかっていうやつで繋がっているのが、見えてしまう。

 幼なじみの瑞貴(みずき)と、私の小指の間には、それがなかった。

 誰に言っても、信じてもらえない。この、特異体質。

 幼稚園の友達は、揃って私を変な子扱いしたし、大人は子どもの戯言(ざれごと)だと最初から相手にしてくれなかった。

「ママ、ふゆの指にも赤い糸あるのかな?だれにつながってるの?」

「こら、芙結、そんなこともう人前で言っちゃダメよ。ママ変な目で見られちゃうんだから」

 “糸”の話をするたびに、ママが悲しそうな顔で怒るから、これを口に出すことは悪いことなのだと、子供心ながらに悟った。

 赤い糸は、運命の相手と繋がっているんじゃないのかもしれない。だって……、ママとパパの間は、繋がっていなかった。

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