嘘つき運命ごっこ
榊あおい
プロローグ
「ふゆちゃん、おおきくなったら、けっこんしようね」
幼少期にありがちな、異性の幼なじみとの結婚の約束。
私の答えは、最初から決まっていた。
「だめだよ。みずきくんとは、つながってないんだもん」
バッサリと斬られたときの、“彼”の顔は、今でも覚えている。
――私は小さな頃から、他の人には見えていないらしいものが見えている。
霊感なんてものじゃない。見えるのは、糸。
右手の小指に結ばれた、赤い糸。
繋がれた同士の人が近くにいれば、その人達の間には、運命のなんとかっていうやつで繋がっているのが、見えてしまう。
幼なじみの瑞貴(みずき)と、私の小指の間には、それがなかった。
誰に言っても、信じてもらえない。この、特異体質。
幼稚園の友達は、揃って私を変な子扱いしたし、大人は子どもの戯言(ざれごと)だと最初から相手にしてくれなかった。
「ママ、ふゆの指にも赤い糸あるのかな?だれにつながってるの?」
「こら、芙結、そんなこともう人前で言っちゃダメよ。ママ変な目で見られちゃうんだから」
“糸”の話をするたびに、ママが悲しそうな顔で怒るから、これを口に出すことは悪いことなのだと、子供心ながらに悟った。
赤い糸は、運命の相手と繋がっているんじゃないのかもしれない。だって……、ママとパパの間は、繋がっていなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます