ギゼルア潜入編

第51話 文明の差

「おら!ここに大人しく入っとけ。」

俺たちはあの男の指示通り捕まったフリを

して、研究所まで辿り着いた。

今は研究所にいた牢屋番の男によって牢屋に

投げ入れられ大人しく拘束されている。

この牢屋にも魔術を封じる細工がしてある

らしく、詠唱をしても意味はなかった。

牢屋には俺たちのほかに四歳くらいの子から

三十歳くらいの大人までが十五人ほどいた。

この人たち全員が研究の対象でおそらく

命を奪われる。そんなことは絶対にさせない。

「このあとどうするのよ。」

俺がそんなことを考えているとシエラフィルが

周囲に聞こえないくらいの声で

話しかけてきた。

牢屋に来たらとりあえず待てと言われている。

「しばらくは指示通り待つしかないな。」

「アイツまた私たちを

騙したんじゃないでしょうね。」

「それはないと思う。アイツの得も薄い。」

俺たちがそんなことを言いながら

待ちあぐねていると

「やぁ!モルモット諸君。」

そんな声がどこからともなく聞こえてきた。

俺が辺りを見回すと壁にプロジェクターの

ように二十代前半くらいの白い癖毛の

白衣を着た男が映しだされていた。

「君たちは突然攫われて右も左も分からない

 だろうが〜」

男はここがどこでどういう経緯で連れて

こられたかそして自分がどういう立場なのかを

話し始めた。

こいつが魔術師で研究をしてやがるのか。

それにしてもプロジェクターか、この国に来た時も思ったがこの国は俺の知っている国の

どちらと比べても圧倒的に発展してる。

外には自動車や電車のようなものまで

走っていた。ここまで文明差があると

おそらく戦争になったら魔術が使える程度じゃ勝ちようのない戦力差だ。

「で、君たちには今から実験台になって

もらいます。」

映し出された男がそう言うと牢屋の中に

ガスが流れ込む。

「きゃぁ!!なに!」

「うっっ。」

噴霧口に近い人間から倒れていき少しずつ

牢屋に充満していく。

充満し切ると牢屋にいる全員が倒れる。

しばらくすると牢屋の扉が開きガスマスクを

した男が二人入ってくる。

「あぁー今日もなかなか多いなぁ。」

「まあこの仕事なかなか給料いいから

悪かねぇがな。」

そう言いながら倒れている人を

回収しようとする。

「ん?こいつなにか持ってるぞ。」

「な!こいつ起きて...」

「「"雷岩"」」

男に雷を帯びた岩が飛んで行き男は

意識を失う。

「おいどうした?」

もう一人の男がさっきの大声に反応する。

「ガスでよく見えないんだから

気をつけろよ。」

「そうね、気をつけないとね。」

そう言って赤髪の少女が後ろからもう一人の

男の首を思い切り絞める。

「なっ、なんでお..まえ..起きて..」

「「"雷岩"」」

「ぐぅぁっ!」

もう一人の男も一人目と同じように魔術の

岩で頭を打たれ気を失う。

「ひとまず作戦第一段階クリアだな。」

魔術を射出した腕をおろして

シデアがそう言う。

「えぇ、悪くない動きだったわ。」

男の首を放したシエラフィルがそう返す。

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