第31話 魔術の階級
あぁーなるほどねデアルの
言ってた意味がわかったよ。
生まれながらに甘やかされて
才能にも恵まれた奴らだ。
根本的に自分以外の人間を舐めている。
さて、これにフュエルデルさんは
どう対応してくれるのかな。
そう考えて、俺はフュエルデルさんの方を
振り向いたが彼女は素知らぬ顔をしていた。
なるほどねこの程度のことを乗り越えられないようでは我が校の教師は務まりません!
ってか。
あーあ、さっそく帰りたくなってきた。
俺、客人のはずなのになぁ。
こりゃ、教師になるのはなしかな。
そんなことを考えながら俺は教壇に立った。
俺が教壇に立つと教室は静かになった。
「こんにちは、シデア・レントです。」
「今回はフュエルデルさんのお招きを受けて、
見学に来させて頂きました
よろしくお願いします。」
まあ、今日は何しにきたわけでもない
こんなもんでいいだろ。さーて、帰るかな。
と俺が教室から出ようと右足を踏み出したとき
「せんせー!せんせーって何歳ですか?」
教室の真ん中の席にいる赤い髪を
横に二つで結んだ推定十七歳程の
リーダー的女生徒が話しかけてきた。
教室は一般的な大学と似た構造をしていて
机は段状になっているので
自然と見上げる形になる。
「まだ先生ではありませんが。
僕は七歳ですよ。」
俺は女生徒に笑顔で返した。
「へーお若いんですねじゃあよっぽど
才能があるんですね。」
「いえ、そんなことはないですよ。」
なるほどねマウント取りたいわけだ。
ひぇー怖いね。
こーんな無垢な七歳児にまで
マウントを取りたいとは一体貴族の教育
とはどうなっているのやら。
「じゃあ先生には何ができるんですか?」
「そうですね、雷、火、水、土、風、治癒の
魔術はそれぞれ習得済みですよ。」
どうだ!俺はちゃんと魔術を勉強してるんだ。
すごいだろう!
「何級までですか?」
俺が勝ち誇ったような顔をしていると
続けて聞いてきた。
何級...?なんのことだ?
「魔術に階級があるんですか?」
「プッ」
「アッハッハッ!!」
俺が質問をすると教室中は笑い声で包まれた。
なんだ?
俺はそんな見当違いなことを言ったのか?
「フュエルデル理事長。こんな何も知らない
子供を連れてきてどういうつもりですか?」
先ほどの女生徒が俺を嘲るように笑いながら、
フュエルデルさんにそう言った。
「...。」
だがフュエルデルさんは何も言わなかった。
なるほどな俺はどうやら
来る場所を間違えたらしい。
あまりの場違い感に俺は大恥をかいた。
そういうことだ。俺に何かを期待していた
フュエルデルさんには一緒に
恥をかかせてしまって悪いことをしたな。
俺は生徒たちに何も言い返さず
教室から出ようとした。
だが、教室から出ようとした俺の手を
フュエルデルさんが掴んだ。
「あなたはまだ何も彼らに見せていません。」
「見せるもなにも俺には何も...」
そうかフュエルデルさんは俺のあの魔術を見て
手紙をくれたんだ。
だったら、
俺は教壇に再び立って魔術の詠唱を始めた。
「なんだ?なんかぶつぶつ言ってるぞ?」
「初級魔術の詠唱でも始めたのか?」
「健気だね〜。」
教室からはそんな声が聞こえてきた。
俺は詠唱を終えると手を教室の
大きな天井に向けた。
天井までの距離は十メートルほどある
問題ないだろう。
俺はそんなことを考えながら
魔術が形をなせる限界まで魔力を込めた。
すると俺の手のひらからは教室の三分の一程のサイズの炎が立ち上がった。
もちろんすぐに炎は消した。
だが、俺の試したいことは試せた。
「...嘘だろ。」
「ありえねぇ初級のサイズじゃねぇ!」
「初級の三十倍はあるぞ!」
「あいつ上級以上が使えたのか!」
教室は驚きを隠せない
生徒たちの声で包まれていた。
やっぱりな。
俺は教室がざわつくなか息を大きく吸い
「これが、僕のできることです!」
大声で奴らのざわめきを止めた。
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