第29話 VIP対応
「ということで大学に着くのは、
三日後になります。」
馬車を使っている分、
馬で行くよりも遅くなるのか。
「そういえばあなたが
フュエルデルさんですか?」
フュエルデルというのは手紙の主だ。
フュエルデル・シナミナスそう手紙の最後に
書いてあった。
「いやいや!僕はただの雑用ですよ。」
「僕がフュエルデル様だなんて恐れ多い。」
男はそう言って手を前で左右に振った。
まあ確かに鎧を着ていてとても魔術大学の人間には見えない。雇われた傭兵かなにかかな。
それにしても貴族だらけの大学ともなると
傭兵にも様付けで呼ばれるぐらいの地位を
持ってるんだな。
そう考えるとまだ教師をやるとも限らない
俺に護衛までつけてくれるのも納得だな。
お金の余裕は心の余裕ってね。
あっさりと三日は過ぎ
ラグナ魔術大学についた。
「到着です。」
「ここがラグナ魔術大学です。」
「おぉー。」
入り口にはでかい門があり、門から入り口までかなり距離があるというのに校舎は
視界に収まらない程に大きい。
校舎の一番上には大きな時計があり、さながら
ロンドンのビッグ・ベンのようだった。
「いやーこりゃでかいなぁ...」
「そうでしょうとも。このラグナ魔術大学は
この国で一番大きな建物なんですよ。」
「はぇー。」
確かに、無駄に噴水なんかがあるし
こりゃ国で一番でかくても不思議はないな。
「じゃあ僕はここで。」
そう言って傭兵の男は去っていった。
そういえば名前を聞きそびれてしまった。
「シデア・レント様ですね。」
俺が声のする方を向くとそこには気品のある
老婆が立っていた。
「あ、はい。シデア・レントです。」
俺がそう名乗ると老婆は
胸に手を当て頭を下げた。
「紹介が遅れました、
私ラグナ魔術大学で人事を担当しております。
フュエルデル・シナミナスでございます。」
「以後お見知りおきを。」
動きの節々に知性を感じる。
思わず見惚れてしまった。
「あぁ!よろしくお願いします。」
俺は慌てるように頭を下げ返した。
「では、今日はもう遅いので見学は明日から
ということで、シデア様が当面の間お使いに
なられるお部屋の案内をさせていただきます。」
「は、はい。よろしくお願いします。」
手紙の時も思ったが、
どうもこの人の堅苦しい話し方は苦手だ。
俺は風呂、トイレ、付きの部屋に案内された。
フュエルデルさんは部屋の使い方を一通り
俺に教えるとゆっくりお休みください
とだけ言って部屋を出て行った。
すごいVIP対応だ。
こんなふかふかのベッド初めて見たよ。
そういえばみんなは元気にしてるかな。
家を出て3日目にしてさっそくホームシック
になっていた。
部屋のベッドはふかふかすぎて
あまり眠れなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます