第23話 魔道具でじっけん

あれからというもの俺とフューは毎日一緒に遊ぶようになっていた。

俺が朝七時頃部屋のベッドでうずくまっていると、

「シディー、早く遊びに行こうよ。」

そう言ってドアを叩きながらフューが

起こしにくる。正直言って中性的なフューの声で毎朝起こされるのは悪くはないが、

何かいけないところまで一歩手前な気がするのでやめていただきたい。

「はいはーい開けますよー。」

「おはようシディ。」

俺がドアを開けるとフューは満面の笑みで

迎えてくれた。かわいいっ。

まずいな。俺はいつか目覚めてしまいそうだ。

いや、もう目覚めてるのか?

いつからこうなった?

「ねえ、シディ今日は何して遊ぶ?」

...まあいいか。




俺たちは最近遊びついでに、射的屋の景品の

使い道を考えていた。

ヨーヨーや、ゴムボール、スーパーボールなど

以前見た通りほとんどは使い道のないもの

だったが、ごく稀に掘り出し物があった。

なかでも俺が狙っていた魔術の本と

この前の翻訳機。

この二つはかなり実用性が高かった。

本に関しては、俺にはもう必要のないもので

あったが、フューに魔術を教える上で

役立ちそうだった。

魔力の流れを掴むコツなんかが綺麗にまとめて

あって、魔術の入門書といった感じだった。

もっとも、フューが魔術を覚えたいとは

限らないが。つぎに、翻訳機についてだが、

これは髪飾り形の魔道具だった。

耳の後ろあたりにつけて中央にある石に

魔力を込める。

すると「言語の指定をしてください。」

という声が、どこからともなく聞こえてくる。

ここで、俺はエルフ語を指定する。

「フュー喋ってみて。」

フューは親に教えられたのであろうエルフの

言語を喋る。俺は知らないはずの言語だ。

だが、はっきりと意味がわかる。

「どう?シディにも意味伝わってる?」

「伝わってる伝わってる。」

俺は髪から魔道具を取り外した。

この魔道具は使用者の魔力がなくならない限り使えて、魔力の消費もそんなに多くはない。

「いやーこれは掘り出し物だなー。」

俺は野原に転がって笑みを浮かべる。

「どんな感じなの?」

フューが転がる俺の顔を覗くようにして

聞いてきた。

そういえばフューは使ったことがなかったな。

俺が触れながら魔力を流せば

フューでも使えるか。

「よし、フューも使ってみるか。」

俺は立ち上がってフューに魔道具をつけた。

そういえば俺は人間語しか分からないぞ。

どうする。そうだ、あれを試してみよう。

俺は魔道具の言語の指定をした。

「"フュー俺がなんて言ってるかわかる?"」

俺が選んだのは日本語だ。

もしこれが認識できたらかなり面白いのだが、

「シディ...なんて言ってるの?」

そりゃそうだよな。元々設定されているはずもないのだから翻訳できるわけがない。

なにかと日本のものがあったからてっきり

日本語もあるのかもと思ったが当然なかった。

じゃあなんでたこ焼きはあるんだよ。

「シディ?」

「ごめんそういえば俺人間語しかわかんない

から試せなかったわ。」

そう言って俺はフューから

魔道具を取り外した。

フューは残念そうな顔をしていた。

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