第9話 魔術の応用
しかしどうしたものか、彼女と別れてまた
中枢の栄えているところまで来たはいいが、
さっきの酒代でほとんど金は残ってないのに、時間はまだまだ約束の六時ではない。
そうだ!今日は元々魔術の運用方法について
考えたかったのだ。
ちょうどいい時間はいっぱいある。
適当な林でも見つけて実験をすること
にしよう。
じゃあまず今回試したいこととして。
1. 詠唱の省略は可能かどうか
2.魔力量について
3.威力及び速度を変えることは可能かどうか
4.魔術の同時使用は可能かどうか
今のところ気になったのはこの四点だな。
まず詠唱の省略だが、この世界の魔術は
今知ってる限りでは少なくとも三節以上で
形成されている。
そのため非常に時間がかかるのだ。
これが省略できれば実用性が上がるのだが、
シフィリアがしていないのを見るにそう簡単なものでもないのだろう。
現に試しに適当に端折ってみたが
成功した試しがない。
俺の予想では魔術はプログラミングに近しいところがあり例えば水魔術の詠唱なら、
恵みの精よ 渇きを潤すため 従い導け
の三節だが、〜〜の精と従い導けの節は
どの魔術でも同じなのでおそらく、
〜〜の精が関数の指定と開始を表していて
従い導けの部分がプログラムの終わりを
表しているのではないか
と考えているのだ。だとすると変換さえ
うまくいけば、高水準言語のように簡単化して
詠唱を五字くらいで済ませることも
可能なのではないかと思うのだが、
変換の方法が思いつかず行き詰まっている。
なので今回はこれは後回しにしよう。
次に、魔力量だが体感として増えているのが
わかる。
初めて魔術を使った時にはギリギリ一発分を
捻り出したというような感覚があったが、
おそらく度重なる練習により効率が良くなったのもあるのだろうが今はまるで底を感じる
気配がない。
使えば使うほど増えるものなのかもしれない。
なので魔力量に関しては
今後も経過観察が必要だな。
次に、魔術の威力や速度に関してだが。
正直言って威力自体はそこまで高くない。
順番にすると
土>雷>水>>火>風
といった具合だ。
というのも土、水のように質量のあるものは
当然打ち出せば破壊力はあるのだが、
雷のような例外を除いて質量のない火、風
なんかは当たっても大した威力には
ならないのだ。
第一、火に関しては漫画やアニメなんかじゃ
強い扱いだが、実際火は少し触れたくらいじゃ
燃え移らないし
大して熱くもない。現状火魔術は雷魔術でも
着火はできるためいらない子なのだ。
それに比べて雷魔術は射出速度も速いし、
動物を痺れさせて動きを数秒止められる。
動物の動きを数秒止められるというのは、
詠唱がネックになってくる
魔術戦においてかなり強いだろう。
まあといった具合に少し話は逸れたが魔術の
威力及び速度の強化がしたいのだ。
まずは試しに、魔力を必要以上に
流してみよう。
電気回路で考えたら、定格より大きな電流を
流せば壊れてしまうが...
「「怒りの精よ 貫くために 従い導け」」
バリッバリバリッ
ん?
木々に向けた右手が今までにないほどに
雷を纏っている。
バリバリバリバリッ
ズゴォォオンッ
という銃声にも似たような音と同時に
右手から雷魔術が射出され、
目の前の大木をバリバリと焦がした。
大木はねじ切れる形で萎れるように折れた。
威力の高い雷魔術とはいえ、明らかに
威力が高すぎる。
本来の雷魔術はせいぜい太い幹に焦げ目を
つけたり野うさぎを焼く程度だった。
体感二~三倍ほど余分に魔力を加えただけで、
この威力だ。これは実験成功だ。
その後、ほかの魔術でも試してみたが同様に
威力の上昇が見られた。
次に、速度についてだが、
魔術によって形成されたもの、
つまり火の玉や雷、土の塊なんかが出現した後に、再度魔力を加えることで射出速度が
上がることが分かった。
だが射出速度にも限界があるようで、
ある程度の速度を超えると射出速度に
変化が見られなかった。
速度を比較すると目測でははあるが
雷>風>水>土>火
といった具合だった。
うーん、このままだと
結局火魔術がいらない子だまあ仕方ないのか?
まあ火魔術の運用方法についてはおいおい
考えるとして、次に進むとしよう。
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